研究課題/領域番号 |
21K05991
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
阿部 幸一郎 東海大学, 医学部, 准教授 (90294123)
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研究分担者 |
吉川 正信 東海大学, 医学部, 准教授 (90276791)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO) / 骨痛モデル / 骨破壊 / Srcファミリーキナーゼ / Fgr / 慢性疼痛 / ダサチニブ / 慢性再発性多発性骨髄炎 / 疾患モデル |
研究開始時の研究の概要 |
慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)は、自己炎症によって発症する、無菌性・非腫瘍性の骨・骨髄炎であり、骨痛や骨破壊の病変によって診断される。しかし、CRMO患者は「痛み」を主症状として訴えるが、骨痛や骨破壊のメカニズムはわかっていない。本研究では種々の疼痛評価を行って、CRMOモデルのAli18マウスの骨痛を解析し、新たな治療薬探索ツールとして確立することを目指す。また、組織学的手法で疼痛に関与する感覚神経マーカーの発現を解析して形態的指標を得る。最終的に既存のCRMOの治療薬や新たな分子標的薬候補の投与実験により、この系での鎮痛効果を検証する。
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研究実績の概要 |
自己炎症性骨疾患のひとつである慢性再発性多発性骨髄炎(CRMOと略す)は、自然免疫系が関与する炎症によって骨髄炎を発症し、骨痛や骨破壊の病変によって診断される。CRMOの発症原因については未知な点が多く、また主な症状である骨痛や骨破壊のメカニズムについてもほとんどわかっていない。我々は自己炎症性骨疾患モデルであるAli18変異マウスの原因遺伝子とCRMO患者のバリアントに共通して、SrcファミリーのFgr遺伝子の突然変異を見出した。Ali18マウスでは、Fgrの機能亢進型のミスセンス変異が原因となって、炎症による四肢抹消の破壊、骨髄炎、長骨の骨密度低下などの自己炎症疾患様の表現型が認められた。しかしCRMOの主症状である骨痛については、よくわかっていない。Ali18マウスを用いて種々の疼痛試験をパイロット的に行ったところ、機械性非侵害性刺激に対して過敏となる異痛症(アロディニア)であることが示された。そこで本研究において解析するマウスの数を増やし、また、Ali18マウスの四肢抹消の自己炎症を減弱させることがわかっているキナーゼ阻害剤であるダサチニブを投与した群と比較して疼痛試験を行った。その結果、Ali18マウスでは有意に刺激に対して過反応を起こしていることがわかった。それに比較してダサチニブ投与群では自己炎症が減弱し、野生型と同程度の反応であった。現在、陰性対照となる野生型マウスの疼痛試験のサンプル数が十分でないので、交配を行って準備している。また、Fgrレポーターマウスは継代して順調に数が増えてきたので、現在、組織切片を開始して免疫組織染色のセッティングを行っている。さらに、先端モデル動物支援プラットフォームに応募して採択されたので、Ali18と同じ変異を持つラット系統をゲノム編集によって作製しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
十分なAli18マウスの数を確保して疼痛試験を行うことができた。また、ダサチニブにより炎症が弱くなるとアロディニアも治癒することがわかったので進捗があった。しかし、野生型マウスの繁殖が悪く、次世代で交配ペアを増やすことになったため、若干の遅れがある。また、同じく繁殖の理由からFgrレポーターマウスを用いた免疫組織染色が遅れているが、十分なマウスの数を確保することができたので、組織切片の作製を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、Fgr遺伝子座のゲノム変異ラットの作製を、東大医科研の真下教授へ委託している。2,3ヶ月後に候補となるラットを移送する計画であり、それらを用いて疼痛試験を行う予定である。候補となる系統が、アロディニアを示せば、ラットでは変異によるモデルとして初めてである。このモデルを用いて、マウスでは難しい骨痛の原因となる感覚神経経路の解析が可能となると予想される。自己炎症性骨疾患に限らず、がんの骨転移による骨痛の神経回路のモデルとなる可能性も考えられ、治療への応用が期待される。
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