研究課題/領域番号 |
21K06001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
北村 浩 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (80312403)
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研究分担者 |
岡村 匡史 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 実験動物管理室長 (00333790)
江口 暁子 三重大学, 医学系研究科, 特任准教授(研究担当) (00598980)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | NASH / NAFL / USP2 / 糖尿尿 / 酸化ストレス / 骨格筋 / 筋委縮 / メタボリックシンドローム / ユビキチン / USP / NAFLD / 筋萎縮 / 臓器間クロストーク |
研究開始時の研究の概要 |
新たな生活習慣病として社会的な問題となっているNFLD/NASHに対する各臓器でのUSPの役割を遺伝子改変マウスを用いて明らかにする。特にこれまで研究代表者が2型糖尿病など生活習慣病の制御分子としての役割を示してきたUSP2を中心に調べる。即ち、全身および細胞選択的Usp2遺伝子欠損マウスを駆使して、1)全身および2)骨格筋や肝臓でのUSP2のNASH病態における役割を明らかにすると共に、3)視床下部、骨格筋、肝臓などの臓器間のクロストークにおける各臓器のUSP2の役割を明らかにする。またNAFLD/NASHに関わる新たな候補USPを発現解析を基に探索し、これらの改変マウスを作製する。
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研究実績の概要 |
1)前年の検討では、Usp2ノックアウト(KO)マウスにコリン欠乏低メチオニン高脂肪餌(CDAHFD)を1カ月与えると野生型マウスとの間で、握力や空腹時血糖値に有意差が認めらたが、本年、検体数を増やし再検討したところ、有意差は認められなくなった。後肢の4つの骨格筋や肝臓の湿重量にも差がみられなかった。肝臓の糖や脂質の代謝酵素の遺伝子発現を調べたがいずれも有意な差はみられなかった。短期間のCDAHFDによる肝障害にはUSP2はあまり大きな影響を与えないと考えられた。 2) 一方、CDAHFD10週間の給餌では、検体数を増やすと、1割強の握力の低下(P=0.01)がみられた。しかし後肢4つの骨格筋重量には有意な差はなかった。 3) CDAHFD給餌10週間目では肝臓の重量はUsp2KOマウスと野生型マウスで差はなかった。肝硬変様の肉眼所見を示す検体は野生型マウスの方が頻度が高かった。肝臓のRNAseq解析を行ったところ、ステロイド代謝酵素や炎症関連遺伝子のいくつかがUSP2の発現の影響を受けることが明らかになった。 4)CDAHFD給餌により骨格筋で誘導されるミトコンドリア保護タンパク質XとUSP2のダブルノックアウト(dKO)マウスを作成し、CDAHFDを10週間給餌したところ、NASHや肝硬変の頻度が高まることはなかった。XがUSP2欠損を代償しているとは言い難い結果となった。 5)NASHと関連が示される糖尿病におけるUSP2の役割を骨格筋を調べるために、骨格筋選択的USP2KOマウスに糖尿病を起こしたところ、酸化ストレスの蓄積が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. USP2欠損によりNASH個体の骨格筋で代償的に誘導されるXとUSP2の2遺伝子を欠損するマウスを作出し、USP2のNASHにおける役割を明らかにするという、当初の計画より掘り下げた試みに挑戦したが、USP2の役割がより明確化することはできなかった。 2.肝臓から骨格筋に至る機能制御にUSP2が果たす役割については、若干の握力低下を観察したのみで当初予定した進捗が得られたとは言い難い。 3.一方で、肝臓についてはRNAseqや網羅的なqRT-PCR解析により、USP2の欠損がステロイド代謝や肝臓の炎症にUSP2が関わることを明らかにできた。肝臓におけるUSP2の役割は専らがん化との関係について報告されているが、初期の機能制御に関わることが示せたのは意義深い。 4.NASH/NAFLに密接にかかわる糖尿病の時にも筋委縮や筋機能異常がみられるが、USP2の欠損が糖尿病時の骨格筋における酸化ストレスの蓄積を促すことを明らかにした。骨格筋の機能異常は肝障害を悪化させることから、肝障害の制御に骨格筋のUSP2が関わる可能性を示せたので発展性のある知見が得られたといえる。 5.昨年までの研究で視床下部腹内核のニューロンのUSP2が交感神経を介し、肝臓でのグリコーゲン分解を促し、血糖調節することを明らかにするという糖尿病におけるUSP2の役割は明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
1) CDAHFDを10週間与えたマウスで見られた肝臓におけるステロイド代謝酵素や炎症関連分子の発現変動をmRNAおよびタンパク質レベルで検証する。また発現制御に関わる転写因子をin silicoで予測する。 2) 2型糖尿病モデルにおける骨格筋のUSP2の役割をさらに検証する。即ち、酸化ストレス蓄積の原因として考えられる活性酸素産生系および除去系に対するUSP2の役割を培養筋細胞及び、Usp2KOマウスの骨格筋で検証する。また骨格筋選択的Usp2KOマウスのインスリン感受性への影響や、肝臓での糖・脂質代謝についても調べる。これによ骨格筋から肝臓に至るエネルギー代謝制御の側面から、NASH/NAFLに対するUSP2の役割を調べる。
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