研究課題/領域番号 |
21K06014
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
野間 健太郎 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (90787318)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 老化 / C. elegans / 神経機能 / 行動 / 寿命 / 転写制御 / 神経 |
研究開始時の研究の概要 |
脳機能の老化は極めて普遍的かつ根源的な生命現象であるのみならず、高齢化へと突き進む現代において解決すべき喫緊の課題である。この課題に取り組むために、申請者は「どのような遺伝的プログラムが神経細胞の機能老化を制御するのか」を研究する。この目的のために本申請研究では、寿命が短く、多個体の扱いが容易で、かつ遺伝学的ツールが豊富な線虫C. elegansを用いる。そして、線虫の化学走性行動をモデルとして、老化がどのように特異的な転写産物の制御を行い、神経機能、さらには行動に影響を及ぼすのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
これまでに我々は、線虫の匂い(ジアセチル)に対する走性(化学走性)を指標として、老化による神経機能減弱の分子メカニズムを研究してきた。2021年度は、老化しても化学走性能を高く保つ変異体として単離されたknj39変異体の原因遺伝子のマッピングと特徴づけを進めた。 交配を用いたSNPマッピングによりknj39変異体が存在する染色体とその領域を絞り込んだ。さらに全ゲノムシークエンスを行うことによって、候補領域に2つの候補遺伝子を見出した。現在、これらの候補遺伝子の欠失変異体を入手し、それらがknj39変異体と同様の表現型(老化個体の化学走性能を高く保つ)を示すか否かを調べている。欠失変異体で表現型を再現できない場合、機能獲得型の変異であることが予想されるので、候補遺伝子の変異をCRISPRノックインによって作出して表現型解析を行う。 knj39変異体の特徴づけとして、ジアセチルに対する化学走性以外の行動を調べた。その結果、knj39変異体は老化個体のジアセチル以外の匂い物質に対する化学走性や、連合学習である温度走性行動を改善しないことが明らかになった。このことから、knj39変異体の影響はジアセチルに対する化学走性に特異的であると結論づけた。さらに、knj39変異体の寿命を調べたところ、野生型と同程度の寿命を示した。このことからknj39が老化に伴う化学走性の減弱を抑制する作用は、個体寿命とは独立していることが示唆された。さらに、スクリーニングの規模を拡大し、新たな変異体knj50を単離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は現在、概ね順調に進捗している。当初、考えていたよりも変異体のマッピングと特徴づけは順調に進んでおり、さらに、スクリーニングの規模の拡大と、新たな変異体の単離に成功した。これらのスクリーニングの経験から、今後、規模を拡大すれば、さらに新しい変異体を得ることができると期待される。一方で変異体のマッピングにはさらなる改善が求められる。これまでは、老化個体の行動アッセイをもとにしてマッピングを行ってきた。これには多大な時間と労力がかかる。今後はより効率的なマッピング方法の開発が必要である。 これまでに転写レポーターとしてはodr-10p-GFP-3’UTR(odr-10)を用いてきた。2021年度には、単一コピー挿入株を作製することにより、老化中であってもバラつきを最小限に抑えてレポーターの観察を行うことが可能になった。一方で、現在用いているレポーターでは、GFPが長時間蓄積することによって、老化中のodr-10の転写量が正しく反映されていない可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
まず、加齢中のodr-10の転写量を正しく、かつ安定的に反映するレポーターの作出を行う。この目的のために、現在、GFPの分解を促進するPEST配列を付加したコンストラクトを単一コピーでゲノムDNAに挿入したレポーター系統の作製を行っている。今後はここで開発されるレポーター系統をもとにしてスクリーニングの規模を拡大する。これにより、単離された変異体について、行動ではなく、一個体におけるレポーターの蛍光輝度で神経機能の老化を判断し、迅速にマッピングを行うことができると期待される。 また、knj39変異体についてはマッピングを完了させ、レスキュー実験を用いて機能細胞の特定を行う。さらに、関連遺伝子を調べることによって、神経機能老化を担う遺伝的経路を明らかにする。
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