研究課題/領域番号 |
21K06016
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 大阪大学 (2022-2023) 京都大学 (2021) |
研究代表者 |
谷口 一郎 大阪大学, 大学院生命機能研究科, 特任助教(常勤) (00467432)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | RNAヘリカーゼ / RNA-タンパク質複合体 / RNA核外輸送 / RNA結合タンパク質 / RNP / RNP remodeling / RNA export / RNA helicase |
研究開始時の研究の概要 |
RNAヘリカーゼのUAP56が試験管内反応系において、核内低分子RNAの核外輸送複合体の形成を促進すること、および、新生mRNA-タンパク質複合体の解体を促進することを見出した。UAP56によるRNP再編成の分子機構を明らかにするため、UAP56の変異体を用いて試験管内反応系において解析を行う。また、細胞内でも再編成活性があることを検証するため、ノックダウンや変異体の発現した培養細胞を用いて、生化学および細胞生物学的手法を利用する。また、RNAヘリカーゼの新規標的RNPを網羅的に探索する方法を開発するため、UAP56に焦点を絞り、結合タンパク質とRNAを生化学的に同定する。
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研究実績の概要 |
RNAヘリカーゼはATP依存的に様々なRNA代謝に関与する。例えば、DEAD-box型RNAヘリカーゼのUAP56はmRNA前駆体のスプライシング反応やmRNA核外輸送に関与する。一般的なmRNAの核外輸送において、UAP56はTREX複合体と呼ばれるタンパク質複合体の構成因子として、TREX複合体をmRNA上にロードする。次いでTREX複合体が核外輸送因子TAP-p15ヘテロ二量体をRNA上へリクルートすることによって、mRNAは核外へ輸送されるようになる。 ウリジン配列に富む低分子核内RNA(U snRNA)は核内で合成後、細胞質へ輸送される。細胞質へ輸送されたU snRNAは化学修飾とタンパク質との複合体形成を経た後、再び核内へ輸送される。以上の一連の成熟化を経て、U snRNAはmRNA前駆体のスプライシング反応に関与する。この成熟化の過程の中で、核外輸送に関与するRNAヘリカーゼは不明であった。これまでに、試験管内反応系を構築することにより、UAP56がATP依存的に核外輸送因子PHAXをRNA上へロードすることを見出していた。 当該年度では、UAP56がATP依存的にRNAとPHAXの両方に結合することを明らかにした。また、UAP56のアミノ酸配列と相同性の高いURH49もPHAXと相互作用し、PHAXローディング活性を有すること、一方で、別のRNAヘリカーゼのDBP5にはそのような活性がないこともわかった。さらに、TREX複合体構成因子であるALYREFが、PHAXとUAP56の橋渡し役としてはたらくことを見いだした。アフリカツメガエル卵母細胞への顕微注入実験により、UAP56とALYREFはmRNA核外輸送とは異なるメカニズムでU snRNA核外輸送に関与していることを示した。以上の結果をまとめ、国際論文に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くのRNAヘリカーゼは、「RNAの高次構造の解きほぐし」と「RNA上からの結合タンパク質の解離」を行うことで、RNA-タンパク質複合体を再編成する。その一方で、相互作用するタンパク質をRNA上へロードすることによって、RNA-タンパク質複合体形成を促進するものも例は少ないが存在する。本研究では独自に開発した試験管内反応系を利用して、UAP56がPHAXをRNA上へロードする活性を有することを明らかにした。本研究成果はRNAヘリカーゼのローディング活性を一般化できる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の過程において、PHAXローディングはUAP56とALYREFだけでは不十分であることがわかった。このことから、PHAX-ALYREF-UAP56を中心とする、より巨大なタンパク質複合体の存在が推測された。そのような複合体をU snRNA型TREX複合体(uTREX複合体)と仮称し、その構成因子の同定を行う予定である。 U snRNA核外輸送複合体は核内の非膜性構造体であるカハール体を通過することが知られているが、uTREXがカハール体に局在するかは不明である。uTREXの局在解析を行う予定である。 UAP56がPHAXをRNA上へローディングした後、UAP56はRNAから解離することが推測されるがそのメカニズムは不明である。この解離のメカニズムの解明を目指す。
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