研究課題/領域番号 |
21K06017
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石井 いずみ (小田いずみ) 京都大学, 理学研究科, 特定研究員 (40624309)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 転写因子 / Zic因子 / T-box因子 / 転写調節 / ホヤ / Zic / 転写調節因子 / 結合モチーフ / 結合特異性 |
研究開始時の研究の概要 |
同じファミリーに分類される転写因子は、類似したDNA結合モチーフに特異的に結合するにも関わらず、それぞれ異なる標的遺伝子の調節を行う例が報告されている。この特異性がどのようにコントロールされているかを探るために、本研究ではZicファミリー転写因子を2つしかもたないシンプルな実験系であるホヤ(Ciona intestinalis type AまたはCiona robusta)胚を材料に解析を行う。ホヤの2つのZic因子がどのようにして共通のまたは異なる標的遺伝子の発現を活性化しているのかを、DNA結合モチーフに対する親和性の違いなどに着目して明らかにする。
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研究実績の概要 |
発生過程は転写因子が協調して細胞の種類に応じ異なる標的遺伝子の発現を調節することで進行する。この過程で同じファミリーに分類される転写因子は、類似したDNA結合モチーフに特異的に結合するにも関わらず、異なる標的遺伝子の調節を行う例が報告されている。このような特異性がどのようにコントロールされているのかという問いの答えを探ることを目的とし、ホヤ胚を用いて研究を進めている。 これまでに、Zicファミリーに属する転写因子Zic-r.aとZic-r.bが異なる親和性で、2種類の結合モチーフに結合することを示した。これらの因子は5つのZinc finger domainをもち、特異的な塩基配列を認識する。令和5年度は、どのZinc finger domainが2種の結合モチーフ、canonicalおよびnon-canonicalモチーフへの結合に寄与しているか解析し、Zic-r.aおよびZic-r.bともに第1zinc finger domainがcanonicalモチーフへの結合に寄与していることを示す結果を得た。 次に、T-boxファミリーに属する転写因子、Tbx6-r.bとTbx15/18/22による筋肉特異的遺伝子のシス調節領域内に存在するT-box因子結合モチーフ類似配列への結合について解析を行なった。その結果、Tbx15/18/22の結合モチーフ類似配列は、多くの場合Snail結合モチーフ類似配列と重複して存在していることがわかった。transcriptome解析によりSnailがTbx6-r.bとTbx15/18/22と同様に多くのホヤ筋肉特異的遺伝子の転写調節にはたらいていることが明らかになったことから、Tbx6-r.bとTbx15/18/22の特定の結合配列への結合親和性の違いには、Snailの結合の有無が関係している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、Zicファミリーに属する転写因子Zic-r.aとZic-r.bについて、5つのZinc finger domainのうちいずれか一つのdomain内のDNA結合に寄与するアミノ酸をグリシンに変更した変異型を作成し、各DNA結合モチーフへの結合に寄与するzinc finger domainの同定を試みた。in vivoの解析では、Zic因子結合モチーフに類似した配列を含むレポーターコンストラクトと、野生型または変異型Zic因子をホヤ胚で共発現させ、誘起される発現をin situ Hybridization法により観察した。in vitroの解析では、2つのZic因子結合モチーフ類似配列をプローブとし、大腸菌に合成させた野生型または変異型Zic因子GST融合タンパク質を用いてゲルシフトアッセイを行い、結合の変化を観察した。これらの解析により、Zic因子の各結合モチーフに対する結合親和性の違いや、結合に寄与するZic因子の構造についての一端を明らかにすることができた。また、T-boxファミリーに属する転写因子、Tbx6-r.bとTbx15/18/22についても解析を開始しTbx15/18/22標的遺伝子のシス調節領域内のTbx15/18/22結合配列とSnail結合配列との重複を見出した。今後、この重複がTbx6-r.bとTbx15/18/22の間の特定の結合配列に対する結合親和性の違いに関連があるか解析を行う予定である。これらのことを明らかにすることができたので、おおむね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は以下の実験を行い、研究計画の内容を進める予定である。 ①Zic-r.aとZic-r.bのcanonicalモチーフに対する結合に第1Zinc finger domainが寄与していることを示唆する結果が得られたが、Zic因子では複数のZinc finger domainが結合に関与していることが予想され、その組み合わせが結合親和性の違いを生み出している可能性が高い。したがって、複数の変異をもつ変異体についても同様の実験を行い、結合に寄与するzinc finger domainの組み合わせを明らかにし、2つの因子の間で比較を行う。 ②High throughputにZic因子がホヤゲノム上でどのような配列に結合しているかを調べるために、Cut&Run (Cleavage Under Targets & Release Using Nuclease)法を行う。この手法は標的に特異的な一次抗体とpAG-MNaseを用いて、クロマチン上のタンパク質結合DNA断片のみを切り出し回収することで、バックグラウンドレベルを低下させることが可能である。したがって、以前に行なったクロスリンクChIP-seq解析に比べて分解能と特異性が高い結果を得られることが期待される。 ③Tbx6-r.b、SnailおよびTbx15/18/22は筋肉系譜細胞で発生過程に沿って時期を少しずつずらして発現する。各発生段階での標的遺伝子のシス調節領域内の結合配列について、結合配列同士の位置関係や、各因子の結合親和性の違いに着目し、さらに多くの標的遺伝子のシス調節領域を対象に昨年度同様に解析を進める。
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