研究課題/領域番号 |
21K06024
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
前田 明 藤田医科大学, 医科学研究センター, 教授 (50212204)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 遺伝子発現制御 / スプライシング / 癌 / TSG101 / mRNA再スプライシング / エクソン接合部複合体(EJC) / mRNA品質管理 / スプライシング完了機構 / mRNA前駆体スプライシング / エキシトロン / EJC |
研究開始時の研究の概要 |
数多くのイントロンに分断されたエクソンを正しく認識しエクソン同士を正確に結合させるスプライシングは、mRNAが蛋白質合成の鋳型であるが故に、遺伝子発現での必須過程である。ところが、スプライシングの精度を上げている仕組みは未だに不詳である。スプライシングが完了した成熟mRNAが、通常はなぜ再びスプライシングされないのか? という素朴な疑問に対し、まだ満足な答えがない スプライシングが完了すると、成熟mRNA上にEJCが形成されることが知られるが、私たちはEJCが再スプライシングを抑制する事実を発見した。EJCがスプライシング完了のシグナルとなっている、という仮説を証明し、未知のスプライシング完了機構を解明したい。
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研究実績の概要 |
私たちが発見した癌特異的なmRNA再スプライシング現象は、正常細胞におけるmRNA品質管理機構を解明につながる絶好のアプローチとなった。なぜなら、実際に正常細胞では一旦完成された成熟mRNAは再びスプライシングされない事実があるからだ。その未知の仕組みを紐解くことが、mRNA品質管理機構を解明につながる。 一昨年、本研究のブレークスルーとなる成果が得られた。すなわち、mRNA再スプライシングを抑制する因子の本体が、エクソン接合部複合体(EJC, Exon Junction Complex)の中核3因子(eIF4A3, MAGOH, Y14/RBM8A)であると判明した。成熟mRNAはEJCが種々のRNA結合タンパク質の結合を誘導し、コンパクトに束ねられたmRNA蛋白質複合体(mRNP)を形成する。EJCがないと成熟mRNAはコンパクト構造をとれなくなり、スプライシング複合体(スプライソソーム)の再形成を許してしまう、と予想した。 この仮説を証明するために、解析が容易なmRNA再スプライシングのモデル基質として、エキシトロン(エクソン内に埋没しているイントロン)を利用する。そのために、まずmRNA再スプライシングによって、エキシトロンが取り除かれることを証明しなければならない。EJC中核因子eIF4A3のノックダウン細胞において、エキシトロンが取り除かれるスプライシングが起こるかを、RNA-Seqデータから解析した。その結果、eIF4A3ノックダウンによって、多くのエキシトロン・スプライシングの促進が検出された。他のEJC中核因子であるRBM8AとMAGOHのノックダウンによっても同様の結果が得られたので、成熟mRNAにおける再スプライシングによって、エキシトロンが取り除かれることが示唆された。私たちは、mRNA再スプライシングの極小モデル基質としてエキシトロンが利用できると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、本研究課題を担当していた大谷勇太研究生が日本新薬に戻り、新しく赴任した藤田賢一助教も論文執筆に時間をとられ、なかなか予定通りに研究が進まなかった。論文投稿も終えて、今年度からは、ようやく藤田助教が本研究に専心できるようになり、確実にデータを出している。 彼自身のRNA-Seq解析によって、スプライシングが完了した成熟mRNA上の再スプライシングによって、エキシトロンが取り除かれるという予想を支持するデータが得られた。引き続き、彼の考案した時系列スプライシング解析法によって、この予想を確実にするため検証に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)上記のように、RNA-Seqデータの解析で、mRNA再スプライシングによって、エキシトロンが取り除かれている事実を示唆する結果を得ている。これを確実に証明するために、時系列スプライシング解析法を用いて、再スプライシング産物を経時的に解析する。ウリジンアナログである4SUを細胞に取り込ませて標識し、経時的にRNAを採取する。4SUを標的としてビオチン標識およびストレプトアビジンを用いて、新生RNAを精製し、次世代シークエンス解析することで、スプライシング状態の経時変化を解析する。得られた時系列データから、スプライシングが完了したmRNAが再スプライシングされてエキシトロンは除外されることが証明できるだろう。
(2)スプライシング後のEJC結合が発端となるmRNP形成が、エキシトロン・スプライシング、すなわちmRNA再スプライシング、の抑制に重要であることが示唆されたので、これを検証したい。エキシトロンのスプライシングが生じる代表的なHNRNPM遺伝子のエキシトロンを含む領域のミニ遺伝子を作成し、人工的にEJCの結合を再現できるレポーター系を作り、このエキシトロンを含むミニ転写産物へのEJC結合が、エキシトロン・スプライシングの抑制に重要であるかを調べる。EJC結合が、エキシトロン・スプライシングを抑制することが示されれば、EJCが誘導するmRNPのコンパクト構造な構造が、スプライソソームの再形成を阻害し、mRNA再スプライシングの抑制を導いていることが明らかとなる。
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