研究課題/領域番号 |
21K06034
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石橋 洋平 九州大学, 農学研究院, 助教 (90572868)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ステロール / 脂質過酸化 / 鉄イオン / フェロトーシス / ラビリンチュラ類 / 細胞死 / FSP1 / 細胞質分裂 |
研究開始時の研究の概要 |
ステロールは真核生物にとって必要不可欠な脂質であるが、その構造は生物種によって異なる。ステロールの構造上の違いがステロールの機能に何をもたらすのか、どのような生物学的な意味があるのか、その詳細は不明である。ステロール代謝遺伝子の変異株を用いた解析により、ステロールの構造に依存した細胞質分裂、細胞死の制御メカニズムが存在する可能性を見出している。本研究では、上記変異株を活用しステロールが介在する細胞分裂・細胞死に関与する未知分子を同定することにより、ステロールの構造と機能の相関を明らかにすることを目指す。本研究により、構造に応じたステロールの機能に関する新知見が得られることが期待される。
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研究実績の概要 |
ステロールは真核生物にとって必要不可欠な脂質であるが、その構造は生物種によって異なる。進化の過程で特定のステロールを取捨選択したと考えられるが、構造の違いがステロールの機能に何をもたらすのか、その詳細は不明である。申請者はこの問いを追究するための新規モデル生物としてラビリンチュラ類を提案する。この微生物は多様な構造のステロールを合成する能力を有しており、代謝経路改変により特定のステロールを選択的に欠損させ、その機能を比較・評価することが可能である。この系を活用し、ステロールの構造に依存した新しい細胞分裂、細胞死の制御メカニズムが存在する可能性を見出している。本研究ではステロールが介在する細胞分裂・細胞死の分子基盤の解明を通じて、ステロールの構造的違いが司る生命機能に迫ることを目的としている。植物ステロール合成の責任酵素SMT1を欠損する株は破裂を伴う細胞死が起こる。昨年度、野生株とSMT1欠損株のRNAシーケンスを行い、細胞死に関与する遺伝子を探索した結果、フェロトーシスの制御に関与するFSP1の発現量がSMT1欠損株において大幅に上昇することを見出した。フェロトーシスは鉄イオンに依存した脂質過酸化物の蓄積により引き起こされる細胞死と定義される。そこで蛍光プローブを用いて細胞内の鉄イオンと脂質ラジカルを測定した結果、細胞死が起こるSMT1欠損株において、有意に細胞内鉄イオン濃度が増加すること、それに伴い脂質ラジカルが増加することを見出した。SMT1欠損株の中で、細胞死を回避した細胞を蛍光顕微鏡観察した結果、脂質ラジカルが油滴という脂質を蓄積する細胞内小器官に局在することが示された。本年度の研究により、ステロール組成の変化が細胞内鉄イオンの取り込み量に影響を及ぼし、フェロトーシス様の細胞死を引き起こすことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではステロールの構造的違いによって制御される細胞分裂および細胞死のメカニズムの解明を目的としている。今年度は、特に細胞死について大きく進展があった。フェロトーシスは鉄イオン依存的な細胞死である。鉄(II)イオンの細胞内濃度が重要であり、これを特異的に認識し、可視化・定量が可能なプローブがFerroOrangeである。細胞死が起こるSMT1欠損株は野生株と比べてFerroOrangeにより発する蛍光強度が高いことを見出した。鉄(II)イオンを触媒として細胞膜リン脂質の過酸化反応が連鎖し、脂質ラジカルが蓄積することで引き起こされる細胞死がフェロトーシスである。鉄(II)イオンの増加に伴い、脂質ラジカルが増加しているかを検証するため、脂質ラジカルをトラップすることで蛍光を発するLipiRADICAL Greenを用いてフローサイトメトリー解析を行った結果、SMT1欠損株では脂質ラジカルが顕著に増加していることを見出した。これらの結果から、植物型ステロールを欠損するSMT1欠損株においてみられる細胞死はフェロトーシスの可能性が高いことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
ステロール組成が変わることで起きる細胞死はフェロトーシスである可能性が高いことが分かった。一方、細胞集団の中にはフェロトーシスを起こさないものがいることを見出した。脂質ラジカルの局在を顕微鏡観察した結果、脂質を蓄積する細胞内小器官である油滴に、脂質ラジカルが隔離されることを見出した。おそらく、油滴に脂質ラジカルを捕捉することで、酸化ストレスを軽減しているものと考えられる。ラビリンチュラ類というDHAを豊富にもち、脂質の酸化ストレスのリスクが高い生物に独自に備わった、酸化脂質から身を守る機構の存在が示唆される。何故油滴に脂質ラジカルが移行するのか、また酸化ストレスの軽減に寄与しているのかを解明していく予定である。また、細胞死を起こさない細胞では、ステロールの細胞外放出が促進することも分かった。RNA-シーケンスの結果、ステロールを排出する細胞では、ステロールのトランスポーターとして知られるABCA1に相同性を示す機能未知遺伝子の発現量が大幅に上がることが分かった。微生物において、ABCA1の機能解析を行った研究はこれまでになく、今後はABCA1の機能解析を進めていく予定である。また、細胞分裂の異常に関しては、細胞骨格の動態解析を行い、その原因解明を試みる。
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