研究課題/領域番号 |
21K06036
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
松井 崇 北里大学, 理学部, 講師 (30463582)
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研究分担者 |
横山 武司 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20719447)
渡辺 豪 北里大学, 理学部, 准教授 (80547076)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 分子動力学計算 / 質量分析計 / クライオ電子顕微鏡 / X線結晶構造解析 / FtsZ / 細胞分裂 / 構造生物学 / 計算物理学 |
研究開始時の研究の概要 |
真正細菌は、Z-ringと呼ばれるリングに沿って細胞が分裂することで増殖する。このZ-ringは主にFtsZと呼ばれるタンパク質が数珠状に自己重合することで形成され、この重合体の構造が変化することで細胞分裂が進む。この重合体の構造変化は、重合体を形成する個々のFtsZ分子の構造変化によって生じると考えられているが、このFtsZ分子の構造変化が観測されているのは黄色ブドウ球菌のみであり、すべての細菌で同様な構造変化が生じているかは不明である。そこで、本研究では計算物理学と構造生物学により、種々の細菌由来のFtsZの繊維化機構が菌株横断的に統一的な機構を有するか明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、真正細菌の細胞分裂制御に関わるタンパク質であるFtsZを対象とする。そのなかでも、FtsZが有する重合・乖離機構や重合構造の湾曲化などの繊維化機構を分子動力学計算、X線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡によるフィラメント構造の構造解析により、解明するものである。 本研究を達成するために、当該年度ではまずはじめに、様々な菌株由来および核酸結合状態のモデル分子を構築し、分子動力学計算を用いてFtsZの構造安定性を評価した。これらの結果を比較解析したところ、各構造状態や菌株の違いによって構造の安定性や運動性に変化があることを捉えることに成功した。さらに、この変化に大きく寄与する残基を特定するために、変異分子の分子動力学計算も実施し、その領域を同定することができた。 そこで、分子動力学計算から導かれたこれらの安定性等に関与する領域を変異させた複数の変異体を設計した。設計した変異体は大腸菌発現系を用いて大量発現し、多段階のクロマトグラフィーによって高純度に精製した。高純度変異体試料は結晶化し、得られた結晶のうち、いくつかの変異体結晶については、X線結晶構造を解析中である。 これらと並行して、種々の物理化学的な解析により重合していることが推定できたFtsZ試料を負染色透過型電子顕微鏡およびクライオ電子顕微鏡で観測した。その結果、クライオ電子顕微鏡で繊維状構造を捉えることに成功しており、今後、これらの構造解析と菌株による比較解析によって、菌株による線維化機構の相違点を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「5. 研究実績の概要」に記載した通り、本研究目的を達成するために分子動力学計算を実施し、構造安定性や運動性を生む領域などを明らかにできている。また、分子動力学計算の結果をもとに設計した複数の変異体試料について、変異体試料の調製と結晶化に成功している。また、一部は高エネルギー加速器研究機構のPhoton FactoryにてX線回折実験を行い、既にX線結晶構造解析に成功している。 また、クライオ電子顕微鏡によるフィラメント構造の構造解析では、測定のための試料条件が定まり、クライオ電子顕微鏡によって繊維構造を捉えることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
既に分子動力学計算によって、複数の運動性に寄与する領域が特定できているため、引き続きこれらの変異体を調製し、精製した試料はX線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡による構造解析を行う。得られた構造情報と変異体での分子動力学計算の結果をもとに、さらなる変異体の設計・調製とX線結晶構造解析を行う。また、菌株ごとで同様に構造解析をすすめることで構造安定性やT/R構造変化など、線維化機構の相違を明らかにする。
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