研究課題/領域番号 |
21K06037
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
依田 隆夫 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (50367900)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 分子動力学シミュレーション / 抗微生物ペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
抗微生物ペプチドは、細菌などの外敵から身を守るためにヒトを含む哺乳類だけでなく昆虫や植物など幅広い生物が持っているペプチドである。抗微生物ペプチドは微生物の細胞表面の膜を破壊するが、そのメカニズムは抗微生物ペプチドの種類により様々である。種々のシミュレーション手法を活用することにより、高い抗菌活性で知られる抗微生物ペプチドCryptdin-4の抗菌作用のメカニズムを解明するための研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の研究対象である Crytpdin-4 (以下 Crp4)はマウスの小腸で発現しているα-ディフェンシンの一つである。脂質二重層と相互作用している抗微生物ペプチドの高分解能一分子観察が可能な全原子分子動力学シミュレーションは有力な研究手段であるといえる。 本研究において我々は、Crp4の抗菌作用機構を明らかにするため、陽溶媒全原子分子動力学法を活用した研究を行なっている。2022年度は (1) ベシクルからの漏出実験で用いられる低分子化合物のgeneral AMBER force field (GAFF)によるモデル化と、同化合物を含んだ系における膜形成シミュレーション (2) 実際に膜が形成された脂質二重層形成シミュレーションの延長 (3) Crp4膜透過の自由エネルギー曲線解明のためのシミュレーション条件の検討を行った。(1)では、単独では膜を透過できない水溶性の蛍光色素分子が、Crp4存在下ではCrp4と共に膜内部に侵入しうることを示唆するデータが得られた。 α-ディフェンシンに属する抗微生物ペプチドは折れ畳まれた立体構造が互いに似通っているがアミノ酸配列は多様であり、また、抗菌作用機構にも相当な多様性が存在している。この多様性は立体構造そのものではなく、アミノ酸配列、あるいはペプチド分子の表面の性質やその分布に起因すると考えられ、抗微生物ペプチドの作用における脂質、水、低分子やイオンとの相互作用を解明することは重要である。よって本研究の成果は抗微生物ペプチドの作用機序の理解に資すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はCrp4抗菌作用機構を明らかにするため、陽溶媒全原子分子動力学法を活用した研究を行なっている。2021年度には我々が行なった脂質二重層形成シミュレーションのデータについて (1) 脂質分子の頭部、溶媒の水、およびイオンの膜法線方向の分布の解析を行い (2) 脂質二重層内部でCrp4複合体が観察されたシミュレーションデータから選択した5つのシミュレーションの延長 を行なった。その結果、水、脂質分子の頭部、イオンがCrp4と相互作用した状態で膜中にも見出された。脂質分子の頭部やイオンでは、膜中でのCrp4との相互作用の様相がその正味の電荷に依存することが示唆された。 2022年度にはさらに(1) ベシクルからの漏出実験で用いられる低分子化合物のGAFFによるモデル化と、同化合物を含んだ系における膜形成シミュレーション (2) 実際に膜が形成された脂質二重層形成シミュレーションの延長 (3) Crp4膜透過の自由エネルギー曲線解明のためのシミュレーション条件の検討を行った。 (1)では漏出実験で用いられる水溶性蛍光色素の一つである5(6)-Carboxyfluorescein (CF)をgeneral AMBER force field (GAFF)によりモデル化し、POPGの膜形成シミュレーションを行った。CFはCrp4非存在下では形成される膜の表面に局在する一方、Crp4存在下で行った膜形成シミュレーションではCrp4と共にCFも膜内部に取り込まれた構造が観察された。 (3)ではアルギニンを仮の溶質分子としてREUS法による膜法線方向の拘束の交換のシミュレーションを試みたところ良好な交換確率が得られた。(1),(3)は研究室に所属する学生(深江君、西野君、東君)の協力のもとで行った。 以上、予定した研究をおおむね順調に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的を達成するため、2023年度はこれまでに行った研究を進展させる。蛍光色素存在下の膜形成シミュレーションにより、膜透過実験のプローブとして用いられる物質のCrp4存在条件における膜中での振る舞いを分析可能であろうという手応えが得られたが、試行回数を増やすことにより結果の再現性を確認したい。また、ベシクルを用いた低分子膜透過の実験ではCF以外にもプローブとして用いられるものがあり、それらの振る舞いも興味が持たれる。また、REUS法によるCrp4自身の膜透過のシミュレーションの実現を目指して引き続き研究を推進する。
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