研究課題
基盤研究(C)
膜蛋白質機能の構造基盤を定量的に明らかにするために,他の生体高分子や低分子リガンドと相互作用しながら変化する構造を原子分解能で解析する。さらに細胞システム機能解明には,1細胞内でのそれら各分子の数と位置,分子クラウディングに伴う蛋白質分子の多型構造状態分布など,定量的で原子から細胞に渡るマルチスケールな構造的解析を行う。本課題では,固体NMR及びその感度を1000倍向上させる超偏極高分解能クライオNMR法を用い,それと相補的な光学および電子顕微鏡も利用する。
相互作用する膜蛋白質に重点を置き細胞を対象にしてマルチスケールにわたる構造解析を行う方法の開発とその応用実証を行った。この課題で重要なのは,最先端のNMR測定法とその応用に最適な細胞試料調製法を組み合わせて解析を行うことである。NMRの低感度に対しては,温度20Kの高磁場動的核分極法(DNP)を用いて超偏極核スピン状態を作り出し,マジック角試料回転により高分解能NMR感度を5000倍向上させた。このための超偏極クライオNMR装置開発では,冷却Heガス循環法によって実用的で長時間安定して低温によりノイズも削減してNMR感度向上を実現した。これを応用して,感度の低い蛋白質・糖,蛋白質・脂質などについても分子間相互作用をNMR交差信号として検出できるようにした。従来のin-cell NMR法では,分子量5万以上の蛋白質検出が困難という制約を受けるが分解能で優れる溶液NMRが用いられていた。今回は,その分子量に関する選択性に影響されずに,全ての分子を定量的に測定できる固体NMR法を用いた。これを利用して細胞数計測と組み合わせて1細胞当たりの分子状態を反映した存在量を計測する。これで,運動性の低い膜蛋白質や重合体の構造解析を可能にした。細胞内の位置測定のために,イメージング法MRIで用いる常磁性造影剤とDNP用分極剤を用いて,細胞内の位置情報をNMR信号強度にエンコードした。このために造影剤Gd3+錯体が局在することで大腸菌表面を内部特別して選択的にNMR測定できることを示した。常磁性緩和促進と1Hスピン拡散により膜蛋白質と膜から離れて細胞内にある蛋白質を区別できることを示した。この解析には,相補的な構造情報を得られる電子顕微鏡細胞観察とも組み合わせた。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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