研究課題/領域番号 |
21K06052
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43020:構造生物化学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
肥後 順一 立命館大学, 総合科学技術研究機構, プロジェクト研究員 (80265719)
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研究分担者 |
笠原 浩太 立命館大学, 生命科学部, 助教 (90634965)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | GPCR / ボセンタン / エンドセリンリセプター / 結合過程 / 自由エネルギー地形 / fly-casting / orientation selection / 自由エネルギー障壁 / conformational selection / 阻害効果 / 効率的立体構造探索 / 膜蛋白質 / 全原子モデル |
研究開始時の研究の概要 |
初年度でシミュレーションの大枠を終える(TSUBAME 3.0 使用)。また、基本的な解析プログラムを作成する。シミュレーションを行う計算機プログラム(gromacs)に改良が必要になった場合に、それを行う。 次年度は、追加でシミュレーションが必要になった場合に実行する。解析を開始する。また、引き続き、計算機プログラムに改良を加える。必要に応じて解析プログラムも作成していく。 最終年度は、解析を完了し、それを発表していく。
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研究実績の概要 |
我々が独自に開発した立体構造探索法「Genetic algorithm にサポートされた多次元仮想空間と連動する分子動力学法(GA-guided-mD-VcMD; 以下VcMDと呼ぶ)」は、生体高分子系に複数の反応座標を設定し、その反応座標に沿う構造変化を促進し、自由エネルギー地形を算出する。本課題ではこの計算手法を使い、膜蛋白質であるG蛋白質共役型受容体(GPCR)ファミリーに属するヒト・エンドセリン受容体タイプB (hETB)と薬剤分子ボセンタンの結合・解離過程を構造探索し、結合・解離の自由エネルギー地形を算出する。 GPCR は深い結合ポケットを持ち、そこにリガンドが結合するとき複雑な過程を経る。従来のシミュレーションでは、統計的優位性を保ちその過程を探索することは難しい。我々のVcMD法で自由エネルギー地形を求め、この複雑な結合過程を明らかにし、結果を論文発表(Sci. Rep. 12,13792,2022)した。 計算から得られた結合自由エネルギー地形からは以下のことが分かった:hETB から離れたところからボセンタンが接近し hETB の深いポケットに結合していくとき、「fly-castingメカニズム」と「orientation selection メカニズム」という二つのメカニズムが連動して働く。そして、最終的には、ポケットの底で最安定構造(実験で決まった複合体構造)が形成される。 GPCRは重要な創薬ターゲットであり、ボセンタンはそれに結合する薬物である。計算では、hETB、ボセンタン、生体膜(脂質二重膜)、コレステロール分子、溶媒(水分子とイオン)等のすべてがflexibleな全原子モデルで表現した。計算機プログラムはgromaxを、計算機は東京工業大学のTSUBAME3.0システムを使った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記の「研究実績の概要」で記述した内容は、本研究課題の申請時に想定した研究目標にほぼ等しい。従って、最終年度を待たずに研究目標をほぼ達成できたと言える。 そこで、さらに研究を発展させるために、手法の改良を試みている。現在のVcMDでも理論上は反応座標を任意に設定できる。つまり、どのように反応座標を設定しようと、シミュレーションを続けていけば最終的には系のカノニカル分布(統計的に意味のある自由エネルギー地形)が得られる。しかし、実際上は反応座標の選定は系に依存する。最悪の場合、系によっては、分布の収束が非常に遅くなることもある。 詳細はここでは述べないが、現在、どんな系であっても同程度の収束効率が得られる統一的(画一的)な反応座標設定法を開発しようとしている。最終年度でこの改良の目鼻をつけたい。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「現在までの進捗状況」の欄で書いたように、「どんな系であっても同程度の収束効率をもつ統一的(画一的)な反応座標の設定法」を現在開発しようとしている。これにより、反応座標の設定の系依存性がなくなるので、ユーザには助かる。 さらに、この方法の良さは、複合体構造を知らなくても反応座標を設定できる点にある。どのような複合体が形成されるのか事前に知識がなくても良いのであるから、実験からの情報がなくても使用でき、応用範囲が広がる。
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