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筋小胞体カルシウムポンプの脱共役モードの解析

研究課題

研究課題/領域番号 21K06058
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分43030:機能生物化学関連
研究機関旭川医科大学

研究代表者

山崎 和生  旭川医科大学, 医学部, 講師 (60241428)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワードカルシウムポンプ / イオン輸送 / リン脂質 / 熱産生 / 脱共役 / 非ふるえ熱産生 / 酵素反応速度論 / 膜タンパク
研究開始時の研究の概要

恒温動物において、筋肉は運動を司る器官であるとともに、体温維持のための熱発生器官でもあります。筋肉は震えることにより、熱が発生し体温の低下を抑えますが、この震えとは別の機構でも、筋肉が熱発生をやっていることが知られています。しかしそのメカニズムについては良く分かっていませんでした。最近、筋肉にあるカルシウムポンプの働きを調節するタンパク質(サルコリピン)を無くしたマウスは体温維持に異常をきたすという報告があり、筋小胞体のカルシウムポンプが熱産生の鍵であるのでは無いかと考えられるようになってきました。そこで本研究では筋小胞体カルシウムポンプの脱共役について調べ熱産生への寄与を見積もります。

研究実績の概要

筋小胞体カルシウムポンプの脱共役モードについて検討する足掛かりとして、ナノディスクに組み込んだカルシウムポンプ標品で見られる、ATP加水分解反応の反応初期におけるリン酸の過剰放出現象について調べた。その溶存ガス依存性や、マグネシウム依存性について検討を加えたが、過剰リン酸放出フェーズの大きさや継続時間は、再現性に乏しく明瞭な結論が得られなかった。
そこで基本に立ち返り現象が現れる温度、測定手法、溶液量などについて今一度詳細に検討してみたところ、実験系の温度管理と攪拌法が、リン酸の過剰放出に重要であることが判明した。そして、得られた結論は測定温度領域における、ATP分解反応が非常に温度依存性が大きいことが原因であり、反応開始のため攪拌した際の温度上昇が過剰リン酸放出を引き起こしていることが分かった。
そこでATP分解活性の温度依存性と律速段階であるリン酸化中間体(EP)の加水分解速度の温度依存性を取ったところ、カルシウムポンプをフォスファチジルコリン(POPC)を含むナノディスクに組み込んだ標品では、0℃付近において二つの間に差があることが分かった。このためこの標品では、0℃ではATP分解活性の実測値とEP量にEP分解速度を掛けた計算値が良く一致したのに対し、温度を少し上げるとこの二つが解離し、実測値の方が計算値より速くなることが見いだされた。これはこの温度領域で非共役モードが現れていることをし増している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

この研究を始めたきっかけは、フォスファチジルコリン(POPC)をもつナノディスクに組み込んだカルシウムポンプで、ATPase反応を測定した時、反応の初期相において、非常に速いリン酸の放出が観察されたことにある。リン酸化中間体の蓄積量とその加水分解速度から見積もることのできるリン酸放出量の3倍に近い速度のリン酸放出は、本来のカルシウム輸送とは関係のない脱共役経路の存在を示すものであり、今まで確立されたPost-Albertモデルと呼ばれるP-type ATPase共通の反応機構とでは説明できないものであった。この経路について詳しく調べる本研究はその再現性、Ca依存性、溶存ガスの影響、ナノディスクに含まれる脂質の影響などのデータを取ることができていたが、その経路の本質は何であるかつかめないでいた。しかし最終年度になり、初期過剰リン酸放出の主たる原因が、ナノディスクに組み込まれたカルシウムポンプのATP分解活性の温度依存性が異常に大きいこと、そしてリン酸化中間体の加水分解とATP分解活性では温度依存性が異なることをあきらかにすることができた。この二点はカルシウムポンプの脱共役経路の解明において真の突破口となる。この新たな知見が得られたことにより、今後この研究を大きく展開できる見通しが立った。この結果が得られたのが遅かったため、3年間の期間内に形のあるものと出来なかったのは残念であるが、残り一年の期間内に最初の目論見をおおきく上回る結果が得られると期待できる。従って進捗状況は(2)おおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

これまで得られた結果から、POPCを含むナノディスクに組み込んだカルシウムポンプは、EP分解速度とATP分解活性の温度依存性に乖離が生じ、ある温度帯で脱共役経路が顕著になることが分かった。今後このような乖離がSRV標品や他の種類の脂質を組み込んだナノディスクにカルシウムポンプを組み込んだ場合に起きるか、また起きるとすれば、その規模はどの程度かしらべる。またSR膜に存在するカルシウムポンプの調節因子であるサルコリピンがこの現象にどのような影響を及ぼすか調べてゆく。またリン酸化中間体の分解速度とリン酸化中間体量から見積もったリン酸放出量と、ATP分解活性が解離している状況で実際のカルシウム輸送能はどのようになっているのか分かっていない。ナノディスクに組み込んだ状況ではカルシウム輸送は測定できないので、カルシウムポンプをジャイアントベシクルに再構成して、カルシウム輸送活性を測定することを試みる。
またここまでの解析はSR膜から調製したカルシウムポンプ標品を用いたものであったが、脱共役経路の反応メカニズムについての情報を得るために、触媒部位付近のアミノ酸残基に変異を導入した変異体を作成する。それらの変異体をナノディスクに組み込んでEP分解速度とATP分解活性の温度依存性の解離状態がどのように変化するかについて調べる。この分析から触媒部位付近の構造と脱共役反応との関係を探り、その反応機構を明らかにしてゆきたい。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Electrostatic interactions between single arginine and phospholipids modulate physiological properties of sarcoplasmic reticulum Ca2+-ATPase.2022

    • 著者名/発表者名
      Yamasaki K, Daiho T, Yasuda S, Danko S, Kawabe JI, Suzuki H.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 12 号: 1 ページ: 12200-12200

    • DOI

      10.1038/s41598-022-16091-9

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Angle change of the A-domain in a single SERCA1a molecule detected by defocused orientation imaging2021

    • 著者名/発表者名
      Katoh Takanobu A.、Daiho Takashi、Yamasaki Kazuo、Danko Stefania、Fujimura Shoko、Suzuki Hiroshi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 号: 1 ページ: 13672-13672

    • DOI

      10.1038/s41598-021-92986-3

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 筋小胞体Ca2+-ATPaseのリン酸化中間体形成過程に対する脂質の違いによる影響2023

    • 著者名/発表者名
      山崎 和生, 安田 哲, 大保 貴嗣, 川辺 淳一
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 筋小胞体Ca2+-ATPaseのリン酸化中間体形成過程に対する脂質の違いによる影響2023

    • 著者名/発表者名
      山崎 和生, 安田 哲, 大保 貴嗣, 川辺 淳一
    • 学会等名
      日本生体エネルギー研究会 第49回討論会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Roles of Intra-Protein and Protein-Lipids Interactions Including Arg324 of Sarcoplasmic Reticulum Ca2+-ATPase.2022

    • 著者名/発表者名
      Kazuo Yamasaki, Takashi Daiho, Satoshi Yasuda, Stefania Danko, Jun-ichi Kawabe and Hiroshi Suzuki
    • 学会等名
      16th International Conference on Na,K-ATPase and Related Transport ATPases: P-Type ATPases in Health and Disease
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 混合脂質環境における筋小胞体Ca2+-ATPaseの特性の変化について2022

    • 著者名/発表者名
      山崎 和生、安田 哲、大保 貴嗣、川辺 淳一
    • 学会等名
      第95回 日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 混合脂質環境における筋小胞体Ca2+-ATPaseの特性の変化について2022

    • 著者名/発表者名
      山崎 和生、安田 哲、大保 貴嗣、川辺 淳一
    • 学会等名
      日本生体エネルギー研究会第48回討論会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 筋小胞体カルシウムポンプの多機能側鎖Arg324と多種のリン脂質のアンサンブル2021

    • 著者名/発表者名
      山崎和生、 大保貴嗣、 Danko Stefania、安田 哲、川辺 淳一、 鈴木裕
    • 学会等名
      第94回 日本生化学会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 筋小胞体カルシウムポンプの多機能性残基 Arg324 と脂質との相互作用の多様性について2021

    • 著者名/発表者名
      山崎和生、 大保貴嗣、 Danko Stefania、安田 哲、川辺 淳一、 鈴木裕
    • 学会等名
      日本生体エネルギー研究会第47回討論会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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