研究課題/領域番号 |
21K06060
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
天貝 佑太 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90773896)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 亜鉛 / 小胞体 / ZIP7 / レドックス / タンパク質品質管理 / 亜鉛輸送体 / ERp44 / 初期分泌経路 |
研究開始時の研究の概要 |
小胞体・ゴルジ体からなる初期分泌経路は、新規に合成された分泌タンパク質や膜タンパク質が正しい立体構造を獲得する場である。亜鉛が初期分泌経路タンパク質品質管理に重要であることが示唆されてきたが、その分子機構は不明であった。 申請者らは、分泌経路内腔シャペロンタンパク質ERp44が、亜鉛イオンと結合することでその機能が亢進することを発見し、亜鉛に依存したタンパク質品質管理の分子機構を見出してきた。本研究では、亜鉛輸送体ZIPファミリーによるERp44制御機構とタンパク質分泌制御を解明することで、分泌経路内の過剰な亜鉛が細胞毒性を生み出す分子機構とそれに対する細胞応答の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
ZIP7機能阻害が小胞体ストレスを誘導することは知られていたが、小胞体遊離亜鉛濃度がどの程度変化しているかはよく知られていなかった。そこで、HeLa Kyoto細胞の小胞体に遊離亜鉛濃度定量蛍光プローブZnDA-1Hを局在させ、ZIP7発現抑制またはZIP7阻害剤NVS-ZP7-4を処理し、小胞体遊離亜鉛イオン濃度定量を行った。定常状態では小胞体遊離亜鉛イオン濃度はZnDA-1Hの検出限界未満の濃度しかなかったが、ZIP7に対するsiRNAをトランスフェクションして48または72時間経過した細胞ではnMオーダーにまで上昇した。また、NVS-ZP7-4処理細胞では処理1時間までに劇的に小胞体遊離亜鉛イオン濃度が上昇することが明らかとなった。これらの亜鉛イオン濃度増加が小胞体機能を阻害し、小胞体ストレスを誘導する可能性が考えられた。 昨年度までに、NVS-ZP7-4処理は、複数種の小胞体酸化酵素の異常な細胞外分泌を促すことが明らかとなり、亜鉛イオンと結合するERp44の機能阻害が生じていることが示唆された。これに関連して、ZIP7阻害細胞では小胞体中のレドックス環境が還元的に変化することを見出した。この分子メカニズムをさらに詳細を調べるために、小胞体酸化酵素の一つに着目して、そのリコンビナントタンパク質の精製を行った。様々な濃度の亜鉛イオン存在下でその活性を調べたところ、過剰な亜鉛イオン濃度条件では酵素活性が減弱することが明らかとなった。このことは亜鉛イオンが酵素活性を直接阻害することを示唆する。nMオーダーの亜鉛イオン濃度存在下ではこの阻害効果が見られなかったため、この濃度域では阻害されないか、ERp44が影響する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従った実験結果は得られていないが、亜鉛イオンによる小胞体レドックス調節の可能性を発見し、それを実行するための直接的な分子メカニズムの一端を解明しつつあり、新しいコンセプトの研究が展開されたため、総合して概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、当初の計画にあった亜鉛輸送体発現抑制時における分泌タンパク質変化を網羅的に解析する。 また、現在進めている精製タンパク質の酵素活性測定系に、ERp44精製タンパク質も加えて解析し、さまざまな亜鉛イオン濃度条件で、小胞体酸化酵素への阻害効果が生じるか検証する。別の小胞体酸化酵素についても同様にリコンビナントタンパク質を作製し、亜鉛イオンとERp44の効果を検討する。これらの結果を取りまとめ、投稿論文として発表する。
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