研究課題/領域番号 |
21K06072
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山本 雄広 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50383774)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 解糖系 / アルギニンメチル化 / 乳がん / 化学治療抵抗性 / 脂肪酸代謝 / セリン合成系 / 脂肪酸合成 / 脂質代謝 / 抗がん剤耐性 / セリン合成経路 / 翻訳後修飾 / 含硫アミノ酸 |
研究開始時の研究の概要 |
エネルギー産生の恒常性(需要と供給のバランス)は糖、アミノ酸、核酸、脂質など各代謝系との連携の上に成立している。これらはすべて中心炭素代謝から分岐し、この連携バランスの崩壊が代謝性疾患やがん、老化の一因とされている。本提案研究では解糖系から分岐するセリン合成系酵素で、バイオマス産生経路群の『ハブ酵素』として機能するPHGDHに着目し、その活性制御機構を生化学的手法を通じて解明することで、がん細胞が悪性形質を獲得する仕組みを解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
非必須アミノ酸セリンの生合成系は一般的に予後の悪いがん種で活性化しているが、これはセリン代謝系を経由した葉酸代謝による核酸合成が旺盛な増殖能を賄うためと解釈されている。本研究は、難治性のがんにおいて活性化しているセリン生合成経路中の律速酵素PHGDHに着目し、その修飾レベルが酵素活性およびがんの増殖、化学治療への感受性に与える機構を明らかにすることを目的とする。 最終年度は、昨年度明らかにしたPHGDHのメチル化部位に対する特異的な抗体を取得した。その結果、パクリタキセルに耐性を持つ乳がん細胞株では感受性株に比べ高いメチル化レベルを呈していた。また、パクリタキセル耐性株においてアルギニンメチル化酵素PRMT1ノックアウト細胞を樹立したところ、PHGDHのメチル化レベルが低下した結果、パクリタキセルに対する感受性が回復することがわかった。また、免疫不全マウスを用いたゼノグラフト実験においても、パクリタキセル耐性細胞に比べ、PRMT1ノックアウト耐性細胞では腫瘍形成能が低く、パクリタキセルに対する感受性が部分的に回復するなど、in vivoの実験でも立証できた。 さらに乳がん患者の針生検の組織切片を用い、PRMT1およびメチル化型PFKFB3、PKM2、PHGDH抗体を用いて免疫染色を施行した結果、化学治療効果が奏功しなかった患者群において、がん細胞の核内で染色が認められ、染色陽性核数も奏功した群に比べ有意に高いものであった。 以上のように、本研究によってトリプルネガティブ乳がんの化学治療抵抗性細胞では、3つの代謝酵素が同時にメチル化を受けることで脂肪酸合成が亢進するという代謝特性が明らかになった。加えて、これらメチル化修飾レベルの差異は細胞診における乳がんの悪性度の判定や、脂肪酸代謝への介入による抗がん剤の増強効果など、新しい治療標的となりうる知見が得られた。
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