研究課題/領域番号 |
21K06075
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
柴田 識人 国立医薬品食品衛生研究所, 生化学部, 部長 (30391973)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ゲノム編集 / Cas9 / タンパク質制御 / ゲノム編集技術 |
研究開始時の研究の概要 |
CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術において課題となる「意図しない変異」を抑制し、本技術のさらなる安全性向上に資するために、Cas9タンパク質がどのようにして細胞内で安定に発現するのかその分子機構を明らかにし、この知見を利用することでCas9タンパク質を細胞内から迅速に除去するシステムの構築を目指す。
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研究実績の概要 |
CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集技術において、「意図しない変異(オフターゲット編集)」を抑制することは、本技術の社会実装を考える上で大きな課題の一つとなっている。この点についてはこれまでに多方面から研究が進んでするが、本技術のさらなる安全性の向上を目指すためには、CRISPR/Cas9システムを時空間的に精密に制御することが求められている。一方で哺乳類細胞に発現させたCas9タンパク質が比較的長時間にわたって安定に発現できることを示す報告があることから、適切なタイミングでCas9タンパク質の発現量を調節できるシステムの構築が必要であると考えた。本研究では、Cas9タンパク質がどのように して哺乳類細胞内で安定に発現するのかその分子機構の解明を試みると共に、この知見を利用するなどして、Cas9タンパク質の哺乳類細胞内での発現量を適切かつ精密に制御するシステムの構築を目指している。 これまでの成果の概要は以下の通りである。 ・Cas9タンパク質の哺乳類細胞内での安定発現機構として、分子シャペロンや脱ユビキチン化反応といった既知のタンパク質安定化機構が関与していることを示すデータは得られておらず、何らかの新規の分子機構によって安定化している可能性が示唆された。 ・薬剤依存的にCas9タンパク質の発現を誘導する機構と分解誘導する機構を組み合わせたシステムを構築し、哺乳類細胞におけるCas9タンパク質の発現量を数時間オーダーでオン・オフに制御することが可能となった。 ・上記の本研究課題で開発したCas9タンパク質の分解誘導システムはPROTAC技術を活用しているが、想定通りに、E3リガーゼを介したユビキチン-プロテアソーム系によって分解されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、細胞内におけるCas9タンパク質の発現量を厳密に制御することが、ゲノム編集技術における意図しない変異の抑制に対してどのような影響を与えるのか検討することが目的である。これまでに薬剤依存的にCas9タンパク質の発現を誘導する機構と分解誘導する機構を組み合わせたシステムを開発しており、ある種の培養細胞に本システムを導入して、細胞内のCas9タンパク質の発現量を数時間オーダーでオン・オフに制御できる条件(処理薬剤、処理時間、処理濃度など)を見出している。 今年度は本システムの適用を拡大するべく、別の細胞において、本システムの適用可否を検討した。リクルートするE3リガーゼについてはVHLとCRBNについて検討したが、いずれの場合でも、Cas9分解システムが全く機能しない細胞種が存在することが分かった。当該細胞における内在性のVHLやCRBNの発現量、発現させたCas9タンパク質の周辺環境など、考慮すべき要因は多々あるが、現状では明確な要因の特定には至っていない。本システムを適用できる細胞種には制限があるという点は本システムの汎用性という観点では大きな欠点にはなるものの、適用可能な細胞種が明確化されたという点では、本研究課題を進める上で最も重要な知見であると考えている。したがって本研究課題は順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題でこれまでに開発したCas9タンパク質の発現を誘導する機構と分解誘導する機構を組み合わせたシステムを培養細胞に導入し、オフターゲット部位が既知のガイドRNAを用い、次世代シークエンサーを利用したアンプリコンシークエンスやT7E1アッセイなどを活用して、Cas9タンパク質の細胞内発現量を精緻に制御することが、当該細胞でのゲノム編集におけるオンターゲット編集およびオフターゲット編集の効率や割合にどのような影響を与えるのか、詳細に検討する。これにより、CRISPR/Cas9によるゲノム編集でのオフターゲット編集のさらなる低減と安全性向上に資するべく、Cas9発現量の条件の明確化、及びCas9発現量制御の有効性を提起したい。
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