研究課題/領域番号 |
21K06110
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森脇 由隆 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70751303)
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研究分担者 |
村瀬 浩司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任准教授 (50467693)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 計算科学 / 蛋白質科学 / 蛋白質設計 / アブラナ科植物 / 生物物理学 / 分子動力学 / 自家不和合性 / タンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
植物の自家不和合性とは、遺伝的多様性を維持するために自己の花粉を拒否し他の株からの花粉を獲得する機構のことである。しかし、この自家不和合性は野菜生産の現場において、望ましい形質を持つ植物個体の遺伝子を保存する上で障害となることがあり、これを人工的に制御する技術の開発が望まれている。当該研究代表者と分担者はアブラナ科植物の自家不和合性を制御するタンパク質SRK/SP11複合体についてハプロタイプ網羅的な解析論文を発表した。この内容を発展させ、本研究では人為的に自家不和合性を制御する改変SP11を創出することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的である複数のハプロタイプ由来SRK分子に結合しうるSP11の創出は想定以上に進展している。2021年から22年にかけてタンパク質主鎖構造を固定した上で、その側鎖をデザインする手法がディープラーニングによって飛躍的に高まったことで、求められるSP11分子の骨格を設計していれば、そのアミノ酸をデザインするという手法に大きな道がひらけた。本研究では、新規SP11分子骨格をまずRosettaでデザインした。これは本来のSP11分子が60-70アミノ酸の機能ドメイン(defensin-likeドメイン)を持っているのに比べると、150アミノ酸と比較的大きなアミノ酸から構成されるものであるが、ジスルフィド結合をなくすことができたということで新しい。そしてSRKとの結合活性に必要だと思われる箇所については、活性アミノ酸を固定した状態のProteinMPNNを用いて側鎖をデザインすることができる。その後、AlphaFold, ColabFoldを用いてそのデザインされた配列から構造を予測したところ、高い信頼性で構造が予測された。これより、現実にそのデザインした新規SP11を大腸菌発現系などで発現できる可能性が高いと考えられる。 また、天然に100種類以上存在するとされるアブラナ科植物のSP11の構造多様性について、その立体構造を予測する手法で大きな進展が見られた。近年AlphaFoldによって多くのタンパク質構造が精度良く予測されるできるようになったが、SP11についてはこれを単純に適用するだけではうまくいかなかった。しかし、我々はこの改善手法について研究成果を出し、現在これについての論文を投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この2年は新規SP11分子のデザインを上記のように検討している一方で、アブラナ科に属する様々な属の花(ダイコン・セイヨウダイコン・カブ・ブロッコリー・ナタネ・セイヨウアブラナなど)が持つ合計100通り以上のハプロタイプのSRK-SP11間の相互作用の予測を、2021年に発表されたAlphaFold2を改変したColabFoldを用いて予測した。このとき、通常取得されるMSAを使うのではなく、SP11分子のジスルフィド結合を揃えた特殊なMSAを用意した。このために、過去20年にわたって実験的にSRKとSP11のS遺伝子座がともに決定されている98対のアミノ酸配列ペアの情報を論文から収集した。そのアミノ酸配列はGenBankおよびUniprotから取得した。これにより、現在AlphaFold Protein Structure Database( https://alphafold.ebi.ac.uk/ )において公開されているSP11分子のよりも高い信頼度を持つ予測モデルを得ることに成功した。さらにこれとSRK-SP11分子のペア配列を用いた複合体予測を行うことで、98対中80以上の分子において信頼できる複合体予測構造を得ることにも成功した。以上の手法により、SP11の構造多型性によって予測することが困難とされていたSRK, SP11間の網羅的な複合体構造予測を行うことができた。現在は、これらの構造情報を用いた新規SP11分子の創出も検討している。
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今後の研究の推進方策 |
詳細なSRK, SP11複合体構造情報が網羅的に利用可能になったことから、これらの情報を加味して複数のSRKに結合可能なSP11分子の設計が大きく前進する事が考えられる。単純なところで言えば、これまでアブラナ科のB. rapa属だけで検討していたが、B. oleracea属においてB. rapaのいくつかのハプロタイプ由来SRKと相互作用認識を同じくするものが5通り存在していることが過去の論文から判明していたが、B. oleracea属のSRK, SP11の複合体予測も可能になったことから、一残基レベルでの改変の影響を予見することができるようになった。さらには、当該研究の反対方向として、同じハプロタイプ由来のSRK-SP11複合体の結合を阻害するような分子の設計も近年の計算手法によって可能になりはじめたのではないかと考えている。各ハプロタイプのSRKはSP11分子との結合界面において集中的に変異を発生させることで、同族のSP11のみを受け入れるための特異性を創出しているが、それ以外の部分はよく保存されている。もし、SRKの保存されている領域に強く結合しながらSP11結合界面にまで影響する大きな人工タンパク質分子が設計できれば、SRKとSP11の相互作用を合理的に阻害することができるかもしれない。これが可能になれば、SRK, SP11分子がもたらす自家不和合性によって困難となっているホモ接合性のハプロタイプの保存を容易にすることができ、最終的にはアブラナ科野菜の品種改良の易化につながるかも知れないと考える。
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