研究課題/領域番号 |
21K06113
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森 義治 神戸大学, システム情報学研究科, 講師 (90646928)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | タンパク質合成 / リボソームタンパク質 / 翻訳開始因子 / tRNA / 分子シミュレーション / マルチスケールシミュレーション / 粗視化シミュレーション / 自由エネルギー解析 / リボソーム / 翻訳因子 / RNA / ブラウン運動 / 翻訳過程 / 動力学的校正 / マルチスケール |
研究開始時の研究の概要 |
タンパク質は生物が活動を行う際の必須の要素である。タンパク質はアミノ酸から構成される分子であり,生物においてはリボソームと呼ばれるタンパク質・RNA複合体により合成される。 このような合成過程はDNAからの遺伝情報を実現するものであるため翻訳過程と呼ばれる。翻訳過程におけるタンパク質合成の精度は非常に高い。そうでないならば生物を構成する要素は正常に機能しなくなってしまうだろう。このように翻訳過程は重要で精密な過程であるが,その分子的な機構の詳細はまだ限られたものである。本研究は分子シミュレーションの技術を利用することにより,そのような分子機構の理解を目指すものである。
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研究実績の概要 |
細胞内には類似した分子が多数存在する。このような環境の中で,例えばタンパク質を合成するリボソームは正しいtRNA分子をどのように選択して結合させるのだろうか。本研究課題は速度論的な観点でこのような分子認識機構を解明することを目的としている。本研究課題においては会合・解離速度定数のような速度論パラメータを3つの計算スケールに分けて計算する。原子レベルでは分子動力学,1個の分子全体はブラウン運動,拡散過程は拡散方程式の解をそれぞれ利用することにより,広いスケールにおよぶ現象を扱うことを可能にする。 第二年目においてはリボソームにおける翻訳の開始過程を理解するために,リボソーム開始前複合体におけるリボソーム小サブユニットと開始tRNAとの結合・解離過程を研究対象とした。上記のスケールでいう原子レベルでの分子動力学計算をその手段として利用した。一方でリボソーム小サブユニットを原子レベルでの分子動力学シミュレーションで実行することは計算時間の点から難しい。そのため本課題においては粗視化モデルを活用することにより,リボソームとtRNAの結合・解離過程を理解するためのシミュレーションを実行した。具体的手法としてはメタダイナミクスとアンブレラサンプリングを使用した自由エネルギー解析を行い,tRNAの結合・解離過程における分子機構を明らかにすることを試みた。 以上の解析から,リボソーム開始前複合体に開始tRNAが結合する過程における様々な段階において,その結合・解離自由エネルギーは異なることを見出した。tRNAが結合した直後の状態では複合体の全体はまだ安定化されていない一方で,tRNAが結合し緩和した状態ではtRNAがリボソームから解離することは難しいことが分かった。さらに,このようなエネルギー状態の相違はリボソームタンパク質やRNAとの相互作用が変化することによるものであることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目の研究計画として次のふたつを行う予定であった。つまり(1)リボソーム,tRNA,翻訳因子等の構造を抽出し,粗視化モデルを構築することおよび(2)有効拡散係数の決定等を行うことであった。 まず(1)についてはおおむね順調に進展している。リボソームにtRNAが結合した立体構造からそれぞれの分子を抽出し,全原子モデルから粗視化モデルを構築した。そこから粗視化分子シミュレーションを実行し,リボソームとtRNAの系についての結合・解離自由エネルギー解析も実行することができた。したがって,速度論的パラメータを計算する場合に必要な物理量を得ることができた。 (2)については,混雑環境におけるリボソームやtRNAのシミュレーションが必要となるが,その計算はまだ実行できていない。このような系におけるシミュレーションはそのまま実行することは難しいため,有効的な混雑環境を構築し,その条件下でリボソームやtRNAなどの構成分子のシミュレーションを実行することが現実的である。そのような条件の設定やシミュレーション設定の考察を行っている段階であるため,有効拡散係数等の決定はそれほど進んでいない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
第2年目での未実行の計画を継続して行っていく予定である。つまり混雑環境におけるリボソーム等の分子について有効拡散係数等を決定することである。このようなことを実現することにより,マルチスケールのシミュレーションにおいて利用可能なパラメータを得ることが可能となるからである。 さらに3年目では当初の目的である,リボソームにおけるタンパク質合成においては異なるtRNAをどのように選択的に結合させ高精度の翻訳を行っているのか,という問いに答えるための計算系を構築しシミュレーションを実行する予定である。まず翻訳伸長過程(タンパク質が合成されている過程)におけるリボソームの構造を取得する。この過程はタンパク質が合成されている過程であるため様々なアミノ酸に対応するtRNAがリボソームと結合する必要がある。これらのtRNAはmRNAで指定されたものにしたがって選択的にリボソームと結合する必要があるため,本過程を理解することで翻訳過程におけるtRNAの選択的結合の分子機構を明らかにすることができる。そこで3年目においては,2年目の研究計画の続きに加え(1)上記の系を粗視化モデルにより表現し,伸長過程におけるtRNAの結合・解離過程の解析を実行すること,および(2)伸長過程過程を構成する分子群(リボソーム,tRNA,EF-Tu)の混雑環境における有効拡散係数等を決定しマルチスケールシミュレーションを実行することができるパラメータ群を決定することを目的とする。
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