研究課題/領域番号 |
21K06120
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
秋山 昌広 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (80273837)
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研究分担者 |
末次 正幸 立教大学, 理学部, 教授 (00363341)
日詰 光治 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10378846)
大島 拓 富山県立大学, 工学部, 教授 (50346318)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 複製阻害 / 複製ストレス / ヌクレオチド欠乏 / チミン飢餓死 / ゲノム不安定性 / 染色体構造タンパク質 / DNAポリメラーゼ / 複製フォーク / ゲノム安定化 / 染色体構造解析 / 人工染色体 / ゲノム不安定化 / 染色体構造 / プログラム複製阻害 / ゲノム安定性 |
研究開始時の研究の概要 |
ヌクレオチド欠乏で生じる複製阻害は、ゲノム不安定性による発がんや細胞死(チミン飢餓死)の要因である。しかし、ヌクレオチド不足の環境でゲノム安定性を維持するための複製制御機構、および、チミン飢餓死の機構は未解明である。申請者は、大腸菌でチミン不足に依存して複製を遅延させるゲノム領域FTZを、チミン飢餓死で消失するゲノム部位に発見した。本研究では、「FTZは、ヒストン様タンパク質H-NSによって形成された染色体高次構造で、ヌクレオチド不足時に複製を停止してDNA合成の基質不足による突然変異を抑制し、かつ、重篤なヌクレオチド飢餓時には複製開始点の消失にも関与する」という独自の仮説を検証する。
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研究実績の概要 |
複製フォークでは、DNAポリメラーゼがチミンを含む4種類の基質を重合してゲノムDNAを合成する。チミンの欠乏状態では、この酵素反応の基質が一つ不足するために、複製フォークの進行が阻害される。さらに、細胞が迅速に、かつ、急激に生存力を失う「チミン飢餓死」を生じる。チミン飢餓死は今から60年以上前に発見され、この現象を起こす薬剤が医療現場で長年広く使用されている。しかし、微生物でも真核生物でも、細胞内の複製フォークの動態がゲノム全体で明らかでないために、未だにチミン飢餓死のメカニズムは謎のままである。 研究代表者は、チミン不足の大腸菌細胞の複製フォークは、複製開始点oriCの両側近傍に位置する約200kbのゲノム領域(複製遅延領域FTZ: Fork Trapping Zone)で高頻度に阻害されることを見出した。さらに、これらの二つのFTZで囲まれたoriC周辺領域は、チミン飢餓死で消失するゲノムDNA領域と一致した。そこで、本研究では、「チミン不足時に、選択的にFTZで複製フォークの進行を阻害する仕組みと、その役割は何か」を明らかにして、チミン飢餓での複製阻害とゲノム不安定化のメカニズムの解明を目指す。 これまでに、oriC左側のFTZ領域(L-FTZ)のコア領域を含むFTZ人工染色体を構築し、大腸菌の複製タンパク質を用いてセルフリー複製して解析した。また、細胞内の複製フォークの動態を、ブロモ・デオキシウリジンの取り込みによって間接的に解析するのではなく、複製フォークで働くDNAポリメラーゼのゲノム分布から直接解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでに、L-FTZのコア領域(約50 kb)を持つFTZ人工染色体を構築し、試験管内でセルフリー複製した。また、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてこのDNA複製産物を観察して、人工染色体DNAを検出できた。しかし、染色体構造タンパク質H-NSの添加やヌクレオチド枯渇の条件で複製したDNA産物を、AFMや次世代シークエンサーで解析した結果、複製フォークの停止を検出できなかった。また、L-FTZのコア領域の遺伝子群を相補して、この領域をゲノムから欠失させるために、DNA複製能とDNA分配能を強化したFTZ人工染色体を大腸菌細胞に導入した。しかし、ゲノムの一部を欠失させられるほどに十分安定に、この人工染色体を維持できなかった。そのため、当初の計画を達成できなかった。 これまでは、複製フォークのDNAポリメラーゼが重合するチミン類似体(ブロモ・デオキシウリジン)のゲノム分布を解析することによって、細胞内の複製フォーク動態を間接的に解析してきた。本研究では、DNAポリメラーゼの分布をゲノム全体のレベルで初めて決定して、細胞内の複製フォーク動態を直接的に解析した。これらの状況から、計画の進捗は遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を一部変更して、チミン不足に依存した複製フォーク進行の変化を、DNAポリメラーゼのゲノム分布によって解析する。また、複製開始点oriCの周辺領域における、DNAポリメラーゼの蓄積に影響する遺伝子を明らかにする。これらの解析から、DNAポリメラーゼの蓄積とFTZの関係を明らかにする。これらの解析は、研究分担者と共同で行う。
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