研究課題/領域番号 |
21K06123
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菊池 裕 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 教授 (20286438)
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研究分担者 |
高橋 治子 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (70775767)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | DNAメチル化 / Dnmt3a / 転写終結 / ゼブラフィッシュ |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎動物において、3’-非翻訳領域におけるDNAメチル化の役割に関しては、未だ報告はなされていない。私達は、2種類のDNAメチル基転移酵素遺伝子Dnmt3a欠損変異体(zebrafish・mouse MEF)の全ゲノムバイサルファイトシークエンス(WGBS)或いはRNA seqの解析を行った結果、3’-非翻訳領域のDNA低メチル化と読み通し転写の間に正の相関関係がある可能性を見出した。本研究課題では、Dnmt3a欠損変異体を用いてmRNAの解析・RNA seq解析・クロマチン免疫沈降解析等を行い、脊椎動物共通のDNAメチル化による転写終結位置制御機構の解明を研究目的としている。
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研究実績の概要 |
DNAメチル化は転写開始・伸長を制御しているが、転写終結位置における機能は不明なままである。私達は、Dnmt3a欠損変異体(ゼブラフィッシュ、マウス胎児線維芽細胞MEF・神経細胞)を用いて直接の標的であるゲノム領域の解析を行った結果、タンパク質コード遺伝子(PCG)のTranscription termination site(TTS)が低メチル化しており、転写終結異常(読み通し転写)が起こっている事を世界で初めて報告する事に成功した。しかし、未だDNA低メチル化により読み通し転写が起こる機構や、ヒストン修飾との関連性に関しては全く明らかにされていない。そこで本研究課題では、脊椎動物に共通した、転写終結位置の制御におけるDNAメチル化の機能解明を研究目的としている。 本年度は、Dnmt3aノックアウトゼブラフィッシュにおけるWhole genome bisulfate sequencing (WGBS)と網羅的遺伝子発現解析RNA-seqのデータを用いて、受精後2日胚での転写終結異常(読み通し転写)に関して詳細なデータ解析を行った。その結果、胚全体を用いて解析を行ったため、有意な読み通し転写の変化を確認する事は出来なかった。しかし、RT-qPCRにより、転写産物を詳細に解析した結果、特定のゲノム領域において転写終結異常(読み通し転写)が起こっている事を明らかにした。更に、Dnmt3aノックアウトゼブラフィッシュでは、特定の遺伝子のエキソンと下流のゲノム領域とのキメラ転写産物が産出されている事を見出した。 以上の結果より、Dnmt3aノックアウトゼブラフィッシュを用いて、転写終結位置の制御におけるDNAメチル化の機能解明を行った結果、DNA低メチル化により転写終結異常が起こる事を実験的に世界で初めて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、Dnmt3aノックアウトゼブラフィッシュの解析データを用いて、転写終結異常(読み通し転写)の解析を行い、受精後2日胚で転写終結異常が起こっている事を明らかにする事に成功した。また、転写終結部位のDNA低メチル化により、特定の遺伝子のエキソンと下流のゲノム領域とのキメラ転写産物が産出されている事を実験的に証明した。本研究成果は、世界で初めての研究成果であり、本研究の最初の目的を達成する事が出来たと言える。また、本研究の第二目標である転写終結機構の解明に向けて、実験・解析を更に進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第二目標である転写終結機構の解明に向けて、以下の実験・解析を計画している。 染色体の三次元構造変化は、遺伝子発現に重要である。特に立体構造の変化によるエンハンサーとプロモーターとの相互作用は、遺伝子発現を決める重要な要因の一つである事が知られている。最近、細胞がストレスを受けると、転写終結異常により、読み通し転写が起こる事が報告されている。この様なストレスを受けた細胞では、染色体の三次元構造変化が起こる事も知られているので、両者の関連性に関して、解析を行う予定である。特にがん細胞は、常に炎症状態にあるため恒常的に転写終結異常(読み通し転写)を起こしている事が報告されている。がん細胞株は、培養が容易であり、安定した条件で解析が可能である。最初に、乳がん・肺がん細胞の既存データ(Hi-Cデータ)を用いて染色体のTAD(topologically associating domain)の変化を調べ、読み通し転写とTADの変化との相関関係を明らかにする予定である。更に、実際のがん細胞株を用いて、転写終結異常(読み通し転写)を起こしているゲノム領域を特定し、実験的な証明を行う予定である。
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