研究課題/領域番号 |
21K06133
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43050:ゲノム生物学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小野口 真広 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), 次席研究員(研究院講師) (30645297)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | トランスポゾン / 反復配列 / エンハンサー / 神経前駆細胞 / 1細胞解析 / 大脳進化 / ゲノム進化 / LINE1 / RNA結合タンパク質 / RNA binding protein / eCLIP / ヘテロクロマチン / SAFB / RNA二次構造 / repeat element / transposon |
研究開始時の研究の概要 |
近年の報告により、ゲノム中に散在する反復配列が「RNA機能ドメイン」として重要であることが示唆されている。しかしながら反復配列の解析の困難さなどのため、どのような反復配列にどのような機能があるのか、その全容は十分にわかっていない。本研究では、公共のデータベースを用いてRNA反復配列に対するタンパク質結合配列を推定し、得られた候補配列に対し検証実験などを加えることで、RNA反復配列の中から機能性RNA配列を探索することを目的とする。本研究はRNA反復配列の新たな役割の解明の手がかりとなり、RNA配列中に存在する新たな「機能ドメイン」の発見に貢献することが期待される。
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研究実績の概要 |
トランスポゾン(transposable element, TE)を含む反復配列は、哺乳類のゲノムのおよそ半分を占めるが、その生物学的意義については不明な点が多い。本研究では、ゲノムに散在する反復配列の機能や生物学的意義を解明することを目的とする。本年度は、エンハンサーなどのゲノム制御領域に存在するトランスポゾン由来の配列について解析を進めた。その結果、TEが哺乳類の脳組織において特定の種類の細胞の遺伝子制御に関わる配列モチーフを提供することで、転写因子の結合を誘導し、細胞種の機能獲得に貢献した可能性を明らかにした。特に、マウス脳において、TEの一種であるMER130とMamRep434が、それぞれNeurod2とLhx2転写因子結合モチーフを内在し、グルタミン酸作動性神経前駆細胞において転写因子の結合部位として機能することを明らかにした。MER130とMamRep434由来の遺伝子制御領域は、それぞれAmniota(有羊膜類)とEutheria(真獣類)の祖先において増幅されており、これらの結果は、TEによる遺伝子制御領域の獲得が進化の過程の複数段階で起こり、脳の複雑な機能や形態の獲得に寄与している可能性を示している。 本研究により、グルタミン酸作動性神経前駆細胞に関わる遺伝子制御配列の獲得にTEが多大な影響を及ぼしていることが明らかとなった。これは、従来考えられているような塩基置換の蓄積だけでは大規模な遺伝子制御機構の獲得が十分に説明できないことを意味しており、TEによる配列の大規模な改変が生物進化の有益なトリガーになりうることを示している。一方でTEはゲノム不安定化を引き起こす有害な作用を併せ持つことが知られている。このようなTEの重要な二面性の理解は、哺乳類におけるゲノムの分子進化メカニズムの解明に貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エンハンサーなどゲノム制御領域におけるトランスポゾンの機能およびゲノム進化上の生物学的意義を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
反復配列のゲノムにおける機能について、解析対象を広げさらに進める。
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