研究課題/領域番号 |
21K06134
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43060:システムゲノム科学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
金子 真也 東京工業大学, 生命理工学院, 助教 (10399694)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ゲノム合成 / 長鎖DNA / 溶菌法 / 接合伝達 / バイオテクノロジー / 長鎖DNA |
研究開始時の研究の概要 |
ゲノム編集技術の登場で、ゲノムは「弄って活用できる」時代になった。将来的にゲノムを「デザインして創り出す」時代に向けて、汎用的なゲノム合成・導入法の開発を目指す。従来の大腸菌のプラスミドベクターを用いた遺伝子工学では、数kb (数千塩基対)のDNAを対象とした技術であった。ゲノムは遥かにサイズが大きく、これまでの常識は通用しない。物理的ダメージを受けやすいゲノム(長鎖DNA)の合成・細胞導入に向けて、既に実績のある酵母の人工染色体(YAC)や枯草菌のゲノムベクター(BGM)をさらに改良するとともに、DNAの抽出・精製操作を伴わない「溶菌法」、「接合伝達法」を活用した細胞導入法を試みる。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、昨年度までの成果を受けて出芽酵母と枯草菌のGRC法のさらなる改良を実施した。まず、双方の宿主及び大腸菌でも使用可能なシャトルベクターとして、出芽酵母、大腸菌、枯草菌それぞれの複製起点と選択用マーカー遺伝子を保持する2種類のシャトルベクターを構築した。これを用いて出芽酵母では、ベクターを含む11断片をGRC法で繋ぎ合わせ、45 kbのDNA合成に成功した。しかしこの配列を大量精製すべく、大腸菌に導入したところ、大腸菌の生育が著しく阻害されることが明らかになった。出芽酵母はGRC法を実施する上で相同組み換え効率も高く、適しているが、合成した長鎖DNAを出芽酵母から直接精製するのが困難であるため、大腸菌に導入し直して大量調製するのが一般的である。しかしながら配列によっては大腸菌が生育できないといった欠点が指摘されている。我々はこの配列を枯草菌に導入して大量調製を試みたところ、問題なく精製することを確認した。今年度は酵母から枯草菌へ速やかに導入する系の構築を行なった。酵母からの精製法の改良や、枯草菌の形質転換法を工夫して、最善の手法を構築しつつある。また枯草菌でGRC法を実施する方法について、GFPをマーカーとする4断片を用いたGRC法をモデルケースとして、相同組み換え酵素であるRecAの発現をキシロース誘導型に改良することや、プロトプラスト形質転換法の条件検討などを行い、効率改善に取り組んだ。今年度は、RecAだけでなく、相同組み換え時にRecA同様に発現誘導されるタンパク質群の転写発現を制御している転写因子であるcomKとcomSもキシロース誘導型プロモーターを付加して効率改善を図った。その結果、相同組み換え効率を大きく改善することができた。現在、実践編としてラムダDNA(約50 kb)のDNA合成を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、1)ベクターの改良・ゲノム合成について、同等の条件で酵母と枯草菌のGRC法を比較するため、出芽酵母、大腸菌、枯草菌それぞれの複製起点と選択用マーカー遺伝子を保持する2種類のシャトルベクターを構築した。これを用いて出芽酵母でベクターを含む11断片をGRC法で繋ぎ合わせ、45 kbのDNA合成に成功し、大腸菌または枯草菌に導入して大量調製を実施した。その結果、大腸菌に入れると生育阻害が起こり精製できないが、枯草菌では問題なく大量調製することができた。さらに酵母からの精製法の改良や、枯草菌の形質転換法を工夫して、最善の手法を構築しつつある。枯草菌のGRC法では、相同組み換え酵素であるRecAの発現をキシロース誘導型に改良することや、プロトプラスト形質転換法の条件検討などを行い、効率改善に取り組んだ。さらにRecAだけでなく、相同組み換え時にRecA同様に発現誘導されるタンパク質群の転写発現を制御している転写因子であるcomKとcomSもキシロース誘導型プロモーターを付加して効率改善を図った。その結果、相同組み換え効率を大きく改善することができた。現在、実践編としてラムダDNA(約50 kb)のDNA合成を実施中である。 2)溶菌法を用いた細胞導入法では、出芽酵母をさまざまな条件で溶菌して枯草菌へ導入する方法を行ったが、今のところ成功しておらず、今後の展開を検討中である。 3)接合伝達を用いた細胞導入法では、枯草菌の接合伝達プラスミドpLS20について接合伝達に必要な領域の特定を行った。その結果、65 kbのプラスミド中、55 kbが接合伝達に必要と判明し、10 kbほど短縮することができた。広域宿主への接合伝達を目指して、大腸菌用の接合伝達プラスミドpUB307との併用、融合などについて今後検討する予定である。以上のことから当初の計画通りおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は出芽酵母のGRC法について、酵母からの精製法の改良及び枯草菌の形質転換法の最適化を検討し、プロトコルを確立する。出芽酵母のGRC法で構築されるDNAが環状であるため、枯草菌に導入するには通常の自然形質転換法ではなく、プロトプラスト法を用いる必要がある。プロトプラスト法の最適化を検討するともに、酵母の溶菌法についても検討する。一方、枯草菌でのGRC法ではRecA、comK、comSをキシロース誘導で発現できる株が構築できているので、これを用いて、ラムダDNA(約50 kb)など実践的な長鎖DNA構築を実施し、プロトコルを確立する。さらに枯草菌のDNA分解酵素をコードするNucA遺伝子破壊株の構築を試みる。これにより、安定して枯草菌細胞中で長鎖DNAを合成できるものと見込まれる。さらに枯草菌でのGRC法において、枯草菌ゲノム中での構築法も検討し、良い長いDNA合成が可能かどうか試みる。以上を持って出芽酵母、枯草菌双方の長所を生かし、それぞれに好ましい配列に応じて長鎖DNA合成法の二者択一的な運用法を確立する。溶菌法を用いた細胞導入法に関しては、50 kb以上の長いDNAを対象とした導入法を検討するとともに、培養細胞への導入についての条件検討を試みる。接合伝達を用いた細胞導入法については、枯草菌の接合伝達プラスミドpLS20と大腸菌での広域宿主接合伝達プラスミドpUB307の併用、融合を検討し、枯草菌からの広域宿主接合伝達法を実現させる条件を検討する。以上の方策を実施することで当初の計画を実現できるものと見込まれる。
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