研究課題/領域番号 |
21K06153
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
内田 安則 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (80793603)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 脂肪酸伸長酵素 / カルシウムポンプ / カルシウムシグナル / タンパク質複合体 / 脂質代謝 / 脂肪酸 |
研究開始時の研究の概要 |
細胞内には炭素鎖の長さが12から24以上の多様な脂肪酸が存在する。この長さの多様性は、炭素鎖を伸ばす酵素 (脂肪酸伸長酵素) によって形成される。脂肪酸伸長酵素の生理機能の理解が進む一方で、これらの酵素が他の細胞内のプロセスとどのように協調し、細胞機能を制御するか、という点については不明な点が多い。本研究では申請者が同定した「脂肪酸伸長酵素とCa2+ポンプの分子複合体」に着目し、脂肪酸伸長酵素とCa2+のクロストークの実体と、その生理的意義を解明する。得られた結果から、脂肪酸の長さとCa2+に立脚する、シグナル伝達の全く新しい制御機構が提唱できると期待される。
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研究実績の概要 |
脂肪酸は生命に不可欠の有機化合物であり、膜脂質の構成因子として生体膜の機能を制御する。脂肪酸の機能は、その炭素鎖の長さによって規定される。この「長さ」の多様性を産み出すのが炭素鎖を伸ばす酵素(脂肪酸伸長酵素)である。脂肪酸伸長酵素自体の解析が進む一方で、これらの酵素が他の細胞内プロセスとどのように協調し、細胞機能を制御するか、という点については不明な点が多い。申請者は、脂肪酸伸長酵素の一つTER (trans-enoyl CoA reductase) が小胞体にCa2+を取り込むポンプであるSERCA2bと結合し、その活性を阻害するという独自の結果を得た。本研究はこの結果を土台に、脂肪酸伸長とCa2+のクロストークを分子レベルで解明し、その意義を解明することを目指す。 本年度は、脂肪酸伸長や小胞体Ca2+が制御する生理現象である 「免疫シグナル伝達」の解析を進め、ウイルスDNAによって活性化するcGAS/STING経路に着目した解析を行なった。具体的には、この経路の活性化を評価するための実験系の開発を行い、分割ルシフェラーゼを利用することで、STING活性化をリアルタイムでモニターする実験系の開発に成功した。また、脂肪酸伸長酵素の発現抑制によって、STINGの活性化が変化するか検討を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において、脂肪酸伸長・小胞体Ca2+が関与する免疫シグナル伝達のうち代表的なシグナル伝達経路の一つであるcGAS/STING経路の活性化をリアルタイムでモニターする実験系の開発に成功した。今後こちらの実験系を利用することで、cGAS/STING経路の活性化における脂肪酸伸長・小胞体Ca2+クロストークの意義の解析が進むものと強く期待される。以上のように今後の研究の土台となる成果を得ていることから、順調に研究が進行しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)SERCA2b・Ca2+による脂肪酸伸長酵素の制御 SERCA2bの過剰発現、発現抑制や阻害剤(Thapsigargin)処理を行い、細胞内の各脂肪酸量を質量分析により定量する。また、ミクロソーム膜を酵素源とした脂肪酸伸長アッセイを行う。次に制御機構を確定させるため、リポソームを用いた再構成実験を行う。脂肪酸伸長酵素、SERCA2bの組換えタンパク質をリポソームに埋め込み、SERCA2bの有無やCa2+濃度の変化で脂肪酸伸長反応に影響が出るか検討する。
2)脂肪酸伸長酵素とCa2+のクロストークの生理的意義 脂肪酸伸長や小胞体Ca2+が制御する生理現象である、「表皮角化細胞の分化」及び「免疫シグナル伝達」に注目した解析を行う。まず市販のヒト表皮角化細胞を利用し、培地中のCa2+濃度を上げることで分化を誘導する。レンチウイルスベクターを用いてTER, SERCA2bを発現抑制し、角化細胞の分化や脂肪酸量に及ぼす影響を解析する。免疫シグナルについては、外来抗原を受容するT細胞受容体(TCR)や、ウイルスDNAにより活性化するSTINGといった免疫シグナル分子に着目する。TCRやSTINGを内在的に発現するヒトT細胞株 (Jurkat) やマウス線維芽細胞(MEF)を用い、TERやSERCA2bを発現抑制、ノックアウトする。この条件下で、TCRやSTINGが活性化する膜ドメインが変化するか、下流のシグナル伝達分子の活性化に異常が生じるか検討を行う。
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