研究課題/領域番号 |
21K06172
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池上 浩司 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (20399687)
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研究分担者 |
中里 亮太 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (30761803)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 繊毛 / ストレス / 浸透圧 / pH / 中心体 / 一次繊毛 / 繊毛病 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトを含む脊椎動物の細胞に生えている一次繊毛の先天的変化によって起こる遺伝性の繊毛病が近年多数明らかになっている。本研究では,未開拓のストレス依存的な一次繊毛変化に挑み,1) 一次繊毛の形成や安定化に影響を及ぼすストレス因子,2) それらストレス依存的一次繊毛変化と繊毛病様現象との関係,3) ストレス依存的一次繊毛変化の抑制手段,4) 繊毛病の原因遺伝子変異とストレス因子による相乗的な一次繊毛変化の検証とその抑制,これら4つの命題に対する解を得る。本研究の成果は一次繊毛や繊毛病の基礎理解を深めるに留まらず,ストレスによって発症する様々な疾患の理解に新たな視点を付与しうる。
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研究実績の概要 |
前年度までに発見した浸透圧変化ストレスによる一次繊毛の形態・形状変化について更に解析を進め、一次繊毛形態・形状の経時変化、細胞内変化の階層性などを含むメカニズムの一旦に迫った。さらに外傷ストレスによる一次繊毛関連タンパク質の変化を見出した。くわえて個体レベルの解析を行い、温度変化ストレスによる一次繊毛の形成や形態の変化を見出した。 浸透圧変化ストレスによる一次繊毛の形態・形状変化については、一次繊毛の根もとの分子の変化が先に起こり、その後に一次繊毛の形態が変化することを見出した。さらに阻害剤を用いた実験により、これら双方に共通して寄与する細胞内分子を同定した。また電子顕微鏡観察も行い、一次繊毛の根もと及び細胞内の分子配置に関する超微細形態の情報を得た。くわえて浸透圧変化ストレスによる一次繊毛形態・形状の変化が急激な浸透圧変化によるアーチファクトであるか否かも検証し、酵素反応などを介した現象であることも示した。また浸透圧変化ストレスによる一次繊毛形態・形状の変化に付随して一次繊毛タンパク質の一部が選択的に培地中に放出されることも見出した。 本年度は前年度までに実施していなかった細胞傷害ストレスによる一次繊毛および一次繊毛周辺構造の変化を検証し、細胞傷害により迅速に一次繊毛周辺構造が大きく変化することを見出した。くわえてニワトリ胚を用い、温度変化ストレスが一次繊毛に与える影響を検証し、温度変化ストレスによって一次繊毛の形成や形態が変化することを見出した。 細胞外pH変化ストレスによる一次繊毛の形態・形状変化および一次繊毛周辺タンパク質の変化については、pH変化による蛍光タンパク質の蛍光消失が原因で本年度は解析が進まなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由 浸透圧変化ストレスによる一次繊毛の変化については、一次繊毛の根もとも含めた超微細形態観察やライブイメージングなどで多角的な検証から変化の階層性や寄与する分子、シグナル伝達系の一部が明らかになり論文発表の準備が整ったため。また細胞に対する外傷ストレス、個体レベルの温度変化ストレスなど、新しいストレスによる一次繊毛や一次繊毛関連構造の変化を新たに見出すなど、当初計画で想定していた以上の一次繊毛ストレス応答現象を幅広く捉えつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
浸透圧変化ストレスによる一次繊毛の形態・形状変化については、昨年度の内容と併せて論文化に取りかかっており、令和5年度中に学術雑誌に掲載されることを目指す。 細胞外pH変化ストレスによる一次繊毛の形態・形状変化および一次繊毛周辺タンパク質の変化については、pH変化に耐性のある蛍光タンパク質を使用した一次繊毛および一次繊毛の根元の標識を行い、経時変化を捉えるとともに、浸透圧変化ストレスに対する応答でも行ったように電子顕微鏡を用いた超微細形態の観察を行い、論文化を目指す。 上記2つの初年度から取り組んできたストレスによる一次繊毛形態変化については、ヘッジホッグシグナルに対する感受性など、一次繊毛形態変化の機能解析を行う。 新たに発見した細胞に対する外傷ストレス、個体レベルの温度変化ストレスによる一次繊毛および一次繊毛周辺関連構造の変化については、発展的課題として、阻害剤を用いたメカニズム解析、薬剤誘導二量体化技術(ケミカルダイメライズ法)などを用いた人為的な局在変化によるストレス応答の生理学的意義検証などを行い、次期プロジェクトに発展させたい。
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