研究課題/領域番号 |
21K06180
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44010:細胞生物学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
政池 知子 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 准教授 (60406882)
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研究分担者 |
池上 浩司 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (20399687)
中江 進 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 教授 (60450409)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 気管繊毛運動 / 呼吸器疾患 / 喘息 / セミインタクト細胞 / 繊毛運動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は喘息などに代表される呼吸器疾患の病態を解明し、治療や創薬に役立てることを目標とする。そのため、マウスの気管を半円筒形状に調製し、光学顕微鏡下で観察する。これにより発症・回復メカニズムの解明につながる知見を得ることを目指している。具体的には、上皮細胞に生えている繊毛の運動を動画撮影するのと並行して、発生する周辺の液体の流れを水中のビーズの動きとして計測する。さらに、異物微粒子の排出計測も行い、液流形成や異物排出に重要な繊毛運動の要素を探る。
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研究実績の概要 |
気管内腔にアレルゲンが侵入したときの細胞表面への接触と、それによる繊毛運動の変化がもたらす粘液流形成および異物排出能への影響を調べ、呼吸器疾患の病態解明につなげるのが本研究の目的である。 2022年度は、生体内を模倣する条件下の液流測定と繊毛運動観察を目指し、前年度に引き続き、摘出した気管を対象とした実験を行った。本年度の主な成果としては、気管内腔における粘液層と繊毛周囲層の二層構造を再現したin vitroの系を構築したことと、セミインタクト細胞を用いた繊毛運動評価系の条件検討を行ったことが挙げられる。 第一の成果について、生体内では気管上皮は粘性の低い繊毛周囲層に覆われており、繊毛の先端はその上に重なる高粘性の粘液層にわずかに先端を突き刺すことで、粘液層を動かすことが知られている。生体内での繊毛の運動特性を明らかにするためには、この二層構造をモデル化する実験系の構築が必須である。そこで、メチルセルロースを粘液層に見立て、繊毛周囲層を模倣した緩衝液の上に重ねる実験系を構築した。この実験系により、これら2つの層における液流をそれぞれ評価することが可能となった。 第二の成果については、気管上皮組織から上皮細胞層を剥離し、その後細胞膜に膜タンパク質で細孔形成を施した後、繊毛運動に寄与する成分を外液から導入する実験をすすめた。一部の細胞については溶液交換により繊毛運動の周波数が変化したことから、セミインタクト細胞となっていることが示唆された。これらの細胞についてはヨウ化プロピジウムやFura2での蛍光染色により、細孔形成の度合を見積もることができることが明らかになった。 その他に、生きている個体にプロテアーゼ投与を行って上皮の電子顕微鏡像により繊毛脱離を評価する実験や、繊毛軸糸を対象とした運動評価も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体内では、粘液層と上皮組織の間に繊毛間液層(PCL)と呼ばれる粘性の低い層が存在する。繊毛は低粘性抵抗のPCL中で運動し、繊毛先端部分を粘液層に突き刺して粘液を牽引することが知られている。これをin vitroで模倣するため、マウスから摘出した気管をシート状に切り開き、組織接着剤で気管外膜側を上面カバーガラス上のろ紙に固定し、0.2%の蛍光ビーズを含むDMEM培地をその繊毛の上に滴下して疑似PCLを作製した。一方、疑似粘液として3%メチルセルロースを含む0.1%(v/v)蛍光ビーズを加えてガラスボトムディッシュ上に用意した。そこに、繊毛側を下に向けた前述のカバーガラスを押し付けた。この試料のビーズの流れを観察したところ、ビーズの密度差を手掛かりに、疑似PCLと粘液層の境界面を見つけることができた。ここでは繊毛の往復運動に影響され進行方向に対して前後に往復する特有の流れが形成されることがわかった。 一方、気管上皮細胞をセミインタクト化し、繊毛運動の評価も行った。気管上皮細胞をプロテアーゼの一種であるディスパーゼで剥離した後、ストレプトリジンOを添加し、細胞膜に透過性チャネルの細孔を形成させた。その後ヨウ化プロピジウムとFura2で染色し細胞膜の透過性獲得を明確に評価することができた。外液ATPによる運動周波数の変化がみとめられたことと、ADPによる振幅の増大が検出されたことから、従来軸糸を用いて応答を評価してきた実験をこのセミインタクト細胞に応用する道が拓けたと考えられる。 さらに、本年度は生きた個体にパパインを投与し、電子顕微鏡観察による気管繊毛の脱離評価を行う実験も行い、画像から繊毛密度を計測する方法を検討することができた。 以上、本研究はおおむね順調に進んでいると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は気管上皮の上にあるPCL層と粘液層の二層をin vitroで再現する実験系を立ち上げることができたので、この実験系にキチンを導入し、粘液繊毛輸送による排出機能を定量的に検証することができると考えられる。気管上皮における繊毛の密度とキチン排出能の関係を今後明らかにしていきたい。 またセミインタクト細胞は、in vitroでありながらより生体内に近い構造を保った実験系として有用であると考えられる。細胞骨格や内在性タンパクがある程度保持されていることが想定され、シグナル伝達を再現できる可能性が高いと考えられるためである。この実験系を用いることにより、パパイン等により炎症を起こした細胞や薬剤に晒された細胞がどのようにシグナル伝達を通じて繊毛運動を変化させるのかを明確に解明することができると考えられる。 このように生体内に近い実験手法が確立されても、軸糸の3次元運動観察も依然として有用である。これまでの研究から、運動パラメーターを正確に算出することができることが実証されているためである。この実験系でシグナル伝達による運動の活性化を検証するためには、カスケードに関与する酵素が軸糸の状態でも微小管に結合していることを直接証明し、阻害剤により活性化が停止することを確認していく必要がある。この手法が確立すれば、cAMP-PKAシグナル伝達経路の再活性化を通じた喘息薬の効果を証明こともできるようになると考えられる。 このように、粘液繊毛輸送における液流や繊毛運動に焦点をあてた実験の他、今年度開拓した電子顕微鏡や蛍光顕微鏡による上皮組織の画像化も重要となる。これら静止画の解析においては、繊毛の脱離による密度低下や杯細胞の分布の変化を定量化していきたい。
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