研究課題/領域番号 |
21K06191
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
和田 浩則 北里大学, 一般教育部, 教授 (70322708)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | ゼブラフィッシュ / 骨リモデリング / 破骨細胞 / 軟骨細胞 / mmp9 / TRAP / 骨芽細胞 / マクロファージ / 組織間相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎動物は、骨の形や大きさの違いによって、さまざまな環境に適応している。骨が成長する過程で、骨形成と骨吸収(骨リモデリング)が生じ、決まった形が生み出されるが、そのメカニズムはよく分かっていない。本研究では、ゼブラフィッシュの舌顎骨の形成過程において、(1)軟骨細胞の凝集、(2)破骨細胞による骨吸収、(3)骨芽細胞の局在、という3つの現象に着目する。それぞれの過程に必要な遺伝子の働きを解析することで、これらの細胞がどのように決まった場所で制御されるのか、また、組織間でどのような相互作用があるのかを明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ゼブラフィッシュ舌顎骨をモデルに、骨格系がリモデリングするさいの細胞間相互作用を明らかにすることである。骨格系リモデリングの重要な組織として、軟骨細胞、脂肪細胞、骨芽細胞、破骨細胞がある。当初の仮説では、これらの細胞を制御する組織として、神経軸索(グリア細胞)が役割を担っていると考えていた。しかし、舌顎骨と、側線鱗、角鰓骨の比較から、グリア細胞以外にも領域特異的に異なる制御を受けていることが分かった。側線鱗では感丘(側線の感覚器官)が役割を担っていることをすでに示している(Wada et al., 2014)。一方、角鰓骨では破骨細胞は神経組織とコンタクトしておらず、他の細胞と相互作用しているという結果は得られなかった。そこで、昨年度は、さらに角舌骨を検討したところ、血管内皮細胞が破骨細胞とコンタクトしていることが分かった。この血管内皮細胞は、第1鰓弓の遠心性動脈が別れた枝が、角鰓骨にそって前方へ伸び、擬鰓の求心性動脈をつなぐことを示した。この動脈は擬鰓を経て眼の脈絡膜に至る血管である。さらに、血管に沿って破骨細胞がリクルートされ、リモデリングが生じて、最終的に血管が骨髄に埋没することを示した。角舌骨には、basihyal, hyohyal, urohyalとをつなぐ靱帯が付着し、これらの靱帯を避けるように、リモデリングが生じる(つまり、靱帯と干渉しないように、血管が骨髄に埋没する)。これまで、破骨細胞を制御する組織として、1)神経軸索(舌顎骨)、2)感丘(側線鱗)、3)血管内皮細胞(角舌骨)、4)それ以外もの(角鰓骨)であることが分かった。つまり、骨格系リモデリングにおいて、複数の異なる組織が領域特異的に破骨細胞を制御している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、舌顎骨において、神経軸索が破骨細胞を制御していることを示そうとしていたが、上記のように、骨によってその制御の仕方が異なることが分かった。したがって、破骨細胞制御の普遍的メカニズムにアプローチするためには、機能解析の前に詳細な記載が必要である。例えば、角鰓骨について、シクリッドでは歯髄の神経軸索の可能性が指摘されているが、ゼブラフィッシュにおいては、少なくとも最初の歯が破骨細胞によって吸収される際には、歯髄に神経軸索は存在しない。このように、現在、主に、不足している基礎データを収集している。一方、機能解析の準備としては、現在、軟骨細胞の細胞膜を標識するトランスジェニック系統と、脂肪細胞を標識するトランスジェニック系統の樹立を行っている。当初予定していた、mmp9陽性細胞の機能解析には至っていない。mmp9:GFP-NTR系統はすでに入手済みである。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の記載論文を発表する予定である。同時に機能解析実験を行うが、舌顎骨、角舌骨、角鰓骨のいずれが最も適切な系かどうかはわからない。角鰓骨は骨化のタイミングが早いが、体の深い位置にあって、破骨細胞が何に制御されているのか分からず、生体での観察もむずかしい。舌顎骨は体の表面にあって、観察は容易であるが、神経軸索に沿って複雑なリモデリングを行うことをすでに報告した(Iwasaki et al., 2022)。一方、角舌骨は骨化のタイミングが遅いが、比較的単純な構造(血管が接しているだけ)をしているため、解析には適している。どちらが解析に優れているかは、神経軸索と血管形成をいかに効率よく操作できるかにもよるので、検討が必要である。また、新たに、樹立するトランスジェニック系統と、mmp9:GFP-NTR系統等を用いて機能解析を行う予定である。
|