研究課題/領域番号 |
21K06197
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
島田 裕子 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (30722699)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ショウジョウバエ / 栄養 / ステロイドホルモン / コラゾニン / オクトパミン / 早熟蛹化 / キイロショウジョウバエ / エクジステロイド生合成 / 脳神経系 |
研究開始時の研究の概要 |
多くの生物の発生過程には、「生殖能力を有さない幼若期(こども)」から「生殖能力を有する成体期(おとな)」へと移行する変遷ステップが設けられており、次世代を残すために体内の生理状態が大きく変化する。その成長と成熟の両方を制御する主要な生体分子がステロイドホルモンである。従来の研究では、個体内外の環境に応答して生合成されるステロイドホルモンの増減により、生体応答が変化することが知られている。しかしながら、環境依存的にホルモンの量を適正に調節する神経経路を追究した研究はほとんどない。そこで本研究では、モデル生物ショウジョウバエを用いて、成長から成熟へと舵を切る神経機構を解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、成長から成熟への変遷を司る神経内分泌機構を明らかにする目的で、ショウジョウバエ幼虫のコラゾニン産生神経(以下、Crz 神経)の活動を制御するオクトパミン産生神経(以下、OA 神経)を同定することを目指す。また、Crz 神経が成長を抑制し、成熟への舵切りを誘導する過程で、他の神経群との連携プレーがあることを、神経特異的RNAiによる機能解析や single cell RNA seq 解析によって明らかにする。本研究により、十分に栄養を蓄えた個体において、成長から成熟への舵切りスイッチを担う神経経路の全貌を掴む。 2022年度においては、発育から成熟へのスイッチに必要な栄養量を定量する目的で、3齢中期の幼虫を飢餓条件に起き、蛹化するタイミングが早まる現象(早熟蛹化)の解析を行った。興味深いことに、飢餓条件においても前胸腺でのエクジステロイド生合成遺伝子群の発現に劇的な変化はない一方で、脂肪体での活性型エクジステロイドの生合成に関わる shade 遺伝子の発現が有意に上昇していた。さらに、エクジステロイドシグナリング経路の因子EcR、E74A、E74B、E75A、E75B の発現も顕著に上昇することを見出した。これらの結果から、3齢中期の幼虫では、前胸腺ではなく、末梢組織の脂肪体においてエクジステロイドシグナリングが促進されることによって、蛹化のタイミングが早まることが示唆された。 さらに、本研究では、飢餓条件でのエクジステロイドシグナルの亢進には、ショウジョウバエのインスリン様ペプチドの1つである dilp6 の機能が関わることが示唆された。本研究によって、発育から成熟へのスイッチにおいて、栄養条件に応じて発育が促進されるだけではなく、飢餓条件が成熟を早めるメカニズムがあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コラゾニン神経を上流で調節するオクトパミン神経が同定できておらず、適切な標識系統を作出することができていない。一方で、幼虫が、成熟するのに必要最低限の栄養を確保した後に、余剰分の栄養がない場合には、成熟のタイミングを早めるのに必要な分子機構を新たに見出した。このメカニズムでは、「飢餓」のシグナルが成熟を遅らせるという従来知られているメカニズムとは真逆で、飢餓が成熟を促進する。すなわち、幼虫の発育段階と栄養状態によって、成長から成熟へのスイッチが飢餓によって駆動されるという新たな可能性を支持する。この分子メカニズムは今まで報告がないことから、新たな研究の展開として、実験を続けていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いて、コラゾニン神経を支配するオクトパミン神経の探索を行う。また、Dilp6 が飢餓条件に応答して、どのようにしてエクジステロイドシグナリグを調節するのかを調べ、早熟蛹化の分子機構を明らかにする。
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