研究課題/領域番号 |
21K06198
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44020:発生生物学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
稲葉 真史 京都大学, 理学研究科, 助教 (60893360)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | パターン形成 / 膜電位 / トリ胚 / 光遺伝学 |
研究開始時の研究の概要 |
多細胞生物の多様な形態が作り上げられる過程では、さまざまなタイプの細胞間相互作用が使い分けられている。中でも、長距離ではたらく相互作用(長距離シグナル)は、組織のマクロスケールな構造を作り出すのに重要であると考えられているが、その分子・細胞実体はほとんど分かっていない。そこで本研究では、トリ胚表皮の色素パターンの形成過程をモデルケースとして解析を行う。特に、組織中の局所的な細胞膜電位の変化が長距離シグナルとして伝播し、マクロスケールなパターン形成に影響を及ぼす現象に注目し、組織培養系と光遺伝学とを組み合わせた手法によって、原理解明を目指す。
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研究実績の概要 |
前年度までに、色素細胞にチャネルロドプシンを強制発現させて光刺激を与えると色素分化がスイッチし、縞パターンが乱れることをin vivoで見出した。分化スイッチは直接刺激を与えていない色素細胞にも長距離に渡って波及しており、色素細胞集団をつなぐ長距離シグナルの存在が示唆された。 そこで、今回、そのシグナルの性質を理解するために、膜電位およびカルシウムシグナルのイメージングとその解析を行った。チャネルロドプシンを使ったこれまでの研究により、縞パターン形成は色素合成より前に開始することが推定されていたので、この時期におけるウズラ皮膚を器官培養しイメージングを行った。膜電位感受性蛍光タンパクArclightとMarinaを色素細胞特異的に発現させることに成功したが、現有の顕微鏡システムでは蛍光の変化を検出することはできなかった。そこで、カルシウムセンサーGCaMP6sを使ってカルシウム変化の可視化を行ったところ、色素細胞においてカルシウムシグナルが振動することを見出した。さらに、カルシウム振動の同期パターンから細胞間ネットワークの推定を行い、距離の近い細胞ほど同期の結合強度が高い傾向にあることが分かった。また、近距離で起こる相互作用を細胞レベルで調べるために、縞の境界を高倍率で長期間動画撮影した。境界では最初、黒と黄色の細胞が入り組んで存在しているが、細胞移動によってそれぞれの細胞が同じ色の領域に取り込まれ、明瞭な境界を形成することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
蛍光強度が高いとされる膜電位感受性蛍光タンパクプローブを2種類試したが、いずれもウズラ色素細胞の膜電位変化の検出に至っていない。そこで膜電位の直接可視化ではなく、膜電位変化に付随して変化すると考えられるカルシウムに注目しGCaMP6sによるイメージングを行った。その結果、色素細胞において周期的なカルシウム振動を見出した。また振動同期のパターン解析によって、距離の近い色素細胞同士は強い同期を示す傾向があることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
今回のカルシウム振動の同期解析から、色素細胞間の相互作用をカルシウムイメージングによって解析できる可能性がでてきた。今後は、カルシウム振動の解析を縞パターンを跨いだ広い範囲に適用し、色素細胞の同期マップの作成をおこなう。特に、黒縞内、黄色縞内、黒と黄色の境界に存在する細胞群のシグナル同期に注目し、縞パターン形成に関係のある同期パターンを見つけることを目指す。また、長距離シグナルの伝播範囲を膜電位の変化として検証する当初の計画を変更し、これをカルシウム振動の変化として捉えることを考えている。 黒縞と黄色縞の境界を長期間観察したところ、異なる領域に存在していた黒・黄色細胞が細胞移動によりそれぞれ同じ色の領域に取り込まれることが分かった。この現象は明瞭な縞パターンを形成するうえで重要であると考えられるため、本研究課題のマクロスケールのシグナル解明に加えて、機構の解明に取り組みたい。
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