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頭部形成を制御する転写因子OTX2の、エピブラストでの新しい機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K06204
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分44020:発生生物学関連
研究機関株式会社生命誌研究館

研究代表者

近藤 寿人  株式会社生命誌研究館, その他部局等, 顧問 (70127083)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワードOTX2 / Wntシグナル / 神経系原基 / N2エンハンサー / 脳 / 脊髄 / 単一細胞トランスクリプトーム / 神経系ー中胚葉共通前駆体 / エピブラスト幹細胞 / 中枢神経系 / 神経幹細胞 / エピブラスト / 細胞移動 / Wnt シグナル / 胚 / ニワトリ胚 / 頭部形成
研究開始時の研究の概要

OTX2は、頭部形成に必須の転写因子である。本研究では、エピブラストの前半の領域が頭部組織に発生する過程での、OTX2の新しい制御機能を解明する。私たちの予備研究によって、OTX2は、エピブラスト細胞の尾側への移動を制御し、エピブラスト内で頭部前駆体と体幹部前駆体のバランスをとる機能を持つ可能性が示された。本研究では、(1) OTX2がエピブラストの頭部領域から体幹部領域への移動を制御することを検証し、(2) その制御に関与するOTX2の下流遺伝子を同定し、(3) エピブラストの尾側領域でのOtx2遺伝子の発現抑制にWntシグナルが関与する可能性を検討する。

研究実績の概要

(1)胚のエピブラスト細胞が移動しながら神経系原基を作る過程への、転写因子OTX2の制御機能の関与、(2)OTX2が制御する下流遺伝子の解析、(3)OTX2と、発現・機能の両面で逆走間が予測されるWntシグナルとの関わりの解析、これらが本研究の柱になっている。
令和5年度(2023年度)の研究では、令和4年度における(3)の研究実績をもとにして、(1)の研究を進展させた。その結果、以下のことが明らかになり、論文発表した。
まず、頭部を形成する前部エピブラストの細胞で、OTX2の作用によってSox2遺伝子のN2エンハンサーが活性化され、それらのN2活性化細胞が胚の中心軸に向って集合して神経系原基を作る。それらの神経系原基細胞の多くはさらに前方に移動して脳組織を作るが、N2活性を持っていた神経系原基細胞の一部は、OTX2の発現を停止するとともに、後方に移動して脊髄の細胞に発生する。このことから、神経系原基の中には、脳と脊髄のいずれにも発生できる細胞群が存在することが予想された。
マウスのエピブラスト幹細胞から神経幹細胞を樹立すると、樹立過程で作用するWntシグナルの強度を反映して、脳の前端(FOXG1発現)から体幹部の脊髄(HOXC9発現)に至るまで、胚の前後方向の様々な位置に対応する神経幹細胞株が得られた。あるグループの神経幹細胞株では、単一細胞内でOTX2(脳の性質)とHOXA7など脊髄固有の転写因子を同時に発現しており(単一細胞トランスクリプトーム解析による)、脳と脊髄のいずれにも発生できる細胞群が存在することが確認できた。
N2活性化細胞(神経系のみに発生する原基細胞)の中枢神経系形成への関与は胸部脊髄までにとどまり、より後部の脊髄は、神経系ー中胚葉共通前駆体から発生する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

研究自体は着実に目標に向かって進行しており、成果を上げている。しかし、以下の理由から、研究進展のペースは、当初計画よりは遅れている。(1)本研究の基盤となる論文の発表までに、想定以上の長い期間を要した(令和3年度)。これまでの通年を大幅に覆す研究結果であったために、多数の確証実験や追加解析を求められたためである。(2)令和4年度に実施した、エピブラスト幹細胞由来の神経幹細胞の解析では、当初計画にはなかった、単一細胞トランスクリプトーム解析を実施することが不可欠になった。その解析の準備とデータ解析に、長期間を要した。(3)令和5年度後半からは、ニワトリ胚への遺伝子導入実験を再開して、胚の中での細胞の挙動を詳細に解析する作業を進めている。現在の実験環境でライブイメージングを行う条件の最適化に数ヶ月を要した。

今後の研究の推進方策

研究実績の概要にも述べたように、脊髄の前側は、N2活性化細胞に由来し、脊髄の後側は、神経系ー中胚葉共通前駆体に由来することが明らかになった。神経系ー中胚葉共通前駆体はOTX2を発現せず、従ってN2エンハンサーを活性化しないエピブラスト細胞から生まれることが、令和5年の研究で示されている。
予備実験によれば、異なった細胞起源を持った脊髄組織は明確な境界を持つのではなく、前側から後側に向かって徐々に置き換わっている。これら、異なった起源を持つ神経組織が、どのようにして機能的な連続性をもつのかが、生物学的にも重要な、本研究の発展課題となっている。この課題をも包含する形で、ニワトリ胚の標識細胞のライブイメージングとマウスエピブラスト幹細胞を用いた胚モデルを中心とした研究を進めて、本研究としての大きな結論を得たい。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Wnt signal-dependent antero-posterior specification of early-stage CNS primordia modeled in EpiSC-derived neural stem cells2024

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Kae、Watanabe Yusaku、Boitet Claire、Satake Sayaka、Iida Hideaki、Yoshihi Koya、Ishii Yasuo、Kato Kagayaki、Kondoh Hisato
    • 雑誌名

      Frontiers in Cell and Developmental Biology

      巻: 11 ページ: 1260528-1260528

    • DOI

      10.3389/fcell.2023.1260528

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The Origin and Regulation of Neuromesodermal Progenitors (NMPs) in Embryos2024

    • 著者名/発表者名
      Kondoh Hisato、Takemoto Tatsuya
    • 雑誌名

      Cells

      巻: 13 号: 6 ページ: 549-549

    • DOI

      10.3390/cells13060549

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Epiblast cells gather onto the anterior mesendoderm and initiate brain development without the direct involvement of the node in avian embryos: Insights from broad-field live imaging2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshihi Koya、Iida Hideaki、Teramoto Machiko、Ishii Yasuo、Kato Kagayaki、Kondoh Hisato
    • 雑誌名

      Frontiers in Cell and Developmental Biology

      巻: 10 ページ: 1019845-1019845

    • DOI

      10.3389/fcell.2022.1019845

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Live imaging of avian epiblast and anterior mesendoderm grafting reveals the complexity of cell dynamics during early brain development2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshihi Koya、Kato Kagayaki、Iida Hideaki、Teramoto Machiko、Kawamura Akihito、Watanabe Yusaku、Nunome Mitsuo、Nakano Mikiharu、Matsuda Yoichi、Sato Yuki、Mizuno Hidenobu、Iwasato Takuji、Ishii Yasuo、Kondoh Hisato
    • 雑誌名

      Development

      巻: 149 号: 6

    • DOI

      10.1242/dev.199999

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] The anteroposterior regionality of the CNS is determined by the Wnt signal input levels when neural stem cells develop from the epiblast2023

    • 著者名/発表者名
      Yusaku Watanabe, Kae Nakamura, Hisato Kondoh
    • 学会等名
      56th Annual meeting of JSDB
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Sox2 enhancers N2 and N1 pave the way to the understanding of embryonic neural development2023

    • 著者名/発表者名
      Hisato Kondoh
    • 学会等名
      6th International Workshop on SOX transcription factors
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 脳発生の最初の大まかな領域特性は、Wntシグナル強度の緩やかな違いで与えられる2023

    • 著者名/発表者名
      近藤寿人
    • 学会等名
      日本発生生物学会:Wnt研究会2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Live imaging of avian epiblast and anterior mesendoderm grafting reveals the complexity of cell dynamics during early brain development2022

    • 著者名/発表者名
      Koya Yoshihi, Kagayaki Kato, Hideaki Iida, Machiko Teramoto, Yasuo Ishii, Hisato Kondoh
    • 学会等名
      55th Annual Meeting of the Japanese Society of Developmental Biologists
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [図書] Molecular Basis of Developmental and Stem Cell Regulation2024

    • 著者名/発表者名
      Hisato Kondoh
    • 総ページ数
      252
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      9783031390265
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 発生生物学の静かな革命 VOL. 1 実験発生学とオーガナイザー

    • URL

      https://www.brh.co.jp/research/hisato_kondo/

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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