研究課題/領域番号 |
21K06217
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小澤 真一郎 岡山大学, 資源植物科学研究所, 特任助教 (80717538)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | Photosynthetic control / シトクロムb6f複合体 / LHCI / 光化学系I複合体 / 光合成 / 光エネルギー利用 |
研究開始時の研究の概要 |
光合成反応が光を利用してエネルギーを供給するため、植物は適切な光のもとでより良く成長する。ところが光の強度は短時間に変化するため利用する光エネルギー量制御と電子伝達反応制御の二段構えの制御機構が効率的な光合成の鍵となる。これまで、それぞれの機構は詳細に研究されてきたが、両者の相互影響は不明な点が多い。そこで本研究では、常に電子伝達経路に含まれる光化学系である光化学系I複合体(PSI)に着目し、特にその光エネルギー量制御を担うLHCIの高次構造に着目し、電子伝達制御を変化させることとLHCIの構造を改変することで、光合成における二段構えの制御機構の相互影響を検証する。
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研究実績の概要 |
光合成明反応では電子伝達と集光性アンテナによる光エネルギー利用効率の適切な制御が重要となる。本研究では両者の相関を明らかにすることをめざす。広範囲の光強度に適応した光合成を行ない、遺伝子情報基盤が整備され遺伝子改変手法が確立された緑藻クラミドモナスを材料とする。 光合成電子伝達反応と葉緑体ストロマからチラコイド膜ルーメンへのプロトン移動は共役する。プロトン移動により生じたチラコイド膜内外のプロトン濃度勾配形成はATP合成に必須であると同時にNPQ誘導を初めとした光合成反応の防御や制御にも重要である。過度にルーメンが酸性化するとPhotosynthetic controlにより光合成電子伝達が抑制される。シロイヌナズナのpgr1変異株は、より弱いルーメン酸性化状態で光合成電子伝達が抑制されNPQ誘導が低下する。緑藻クラミドモナスにpgr1変異に相当する変異を導入したPETC-P171L株を作出し解析した。PETC-P171L株はシトクロムb6f複合体を正常に蓄積するが、強い光の下では光合成的生育速度が低下した。パルス変調によるクロロフィル蛍光を測定するとシロイヌナズナと同様にNPQ誘導低下を確認した。続いて、暗所かつ嫌気条件下でチラコイド膜ルーメンを酸性化させ、ポンピングプローブ法によって弱い作用光条件の下でカロテノイド吸収の時間変化を測定しシトクロムb6f複合体の電子伝達速度を推定すると、野生株ではシトクロムb6f複合体の電子伝達速度は上昇したがPETC-P171L株では上昇せず、ナイジェリシン添加で観測されなかった。以上のことよりPhotosynthetic controlは、低照度であってもチラコイド膜ルーメンの酸性度により機能すること、自然環境で緑藻クラミドモナスが生育する低酸素低照度の条件では光合成を有利に進めることに貢献することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
緑藻では嫌気条件かつ暗所でルーメンを酸性化させることができる。この状態で短時間の閃光を照射し光化学系を駆動させポンピングプローブ法で完全暗所におき光化学系を駆動させたシロイヌナズナpgr1変異株に相当する緑藻クラミドモナスのPETC-P171L株の解析によって、Photosynthetic controlは弱い光強度で確立することを見いだした。緑藻の生育する自然環境である低照度かつ低酸素状態では光合成を有利に進める条件であることが示された。また、葉緑体ATP合成酵素の速度はPETC-P171L株で変化がないことも確認した。一方で、葉緑体ATP合成酵素活性は還元状態で制御されるためにはガンマサブユニットの2つのドメインが重要であるという構造基盤情報を共著で明らかとした。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目までに確立したルーメンを酸性化させる手法をLHCI遺伝子欠損株に適用し、どのような電子伝達制御機構が機能するかを明らかにする。並行して強光下など光合成の電子伝達制御が行なわれるときの動的なLHCI構造変化を生化学的に解析し、両者の相関を解析する。
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