研究課題/領域番号 |
21K06219
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
桶川 友季 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (10582439)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 光合成 / サイクリック電子伝達 / チオレドキシン / レドックス制御 / 光化学系I / 光阻害 |
研究開始時の研究の概要 |
植物は光合成反応をおこなうことによって、太陽の光エネルギーを利用して生命が利用可能な化学エネルギーを作り出している。この反応の実体は葉緑体における電子伝達反応である。地球上のほぼ全ての生命活動を支えている光合成だが、その詳細な制御メカニズムについては未解明な部分が多い。 本研究では、光合成電子伝達経路の1つである光化学系Iサイクリック電子伝達に注目し、この経路が植物体内でどのように制御されているかを明らかにすることを目的にしている。 制御の生理的な意義が解明されれば、植物の光合成能力の改善に結びつくことが期待される。
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研究実績の概要 |
植物は自然環境下で変動する光環境に適応して生育している。植物の生育に必須な光合成も環境ストレスに対して様々な防御機構を発達させてきた。被子植物では光化学系I (PSI) サイクリック電子伝達が光防御機構の誘導に必要とされるため、主要な経路(PGR5依存の経路)を欠損したシロイヌナズナの突然変異体、pgr5は自然環境下(変動光条件下)で生育することができない。私たちはこれまでに、PGR5依存の経路がレドックスタンパク質であるチオレドキシン(Trx)によって制御されることを明らかにした。シロイヌナズナの葉緑体にはf、m、x、y、z型の5グループのTrxが局在しているが、m型Trxがこの経路の制御に特異的に関わることがわかった。その一方で、これまでのところ他のTrxグループのストレス応答における役割についてはあまりわかっていなかった。 そこで本年度はx型とy型Trxに注目して研究を進めた。これらのTrxはin vitroの研究から抗酸化防御機構に寄与することが示唆されてきた。その一方で、それぞれのTrxを欠損した変異株は一定の光条件下では野生株と同様の成長を示し、これらのTrxのin vivoでの役割についてはあまりわかっていない。しかし、本研究において、x型Trxを欠損した植物(trx x)が変動光条件下で生育阻害を示すことを見出した。trx xは野生株に比べて生育が遅延しており、葉が黄化した。また、y型Trxを欠損した植物(trx y1y2)では生育阻害を示さなかったが、x型Trxとy型Trxの両方を欠損した三重変異株(trx x trx y1y2)はtrx x一重変異株よりも深刻な生育阻害を示した。さらにこれらの変異体を使って光合成解析をおこなった結果、x型Trxとy型TrxがPSIサイクリック電子伝達経路と同様にPSIの光防御に寄与することを明らかにすることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はx型およびy型Trxの変異体の解析をおこなった。変異体での詳細な光合成解析によって、trx x trx y1y2変異体ではPSIサイクリック電子伝達の変異体と同様に変動光条件下でPSIの電子受容体側で過還元が起こっており、PSIの光阻害が引き起こされていることを明らかにすることが出来た。本来の予定ではPGR5依存の経路で働くPGRL1タンパク質のシステイン変異体を用いて電子伝達活性を測定する予定であったが、昨年報告された論文でPGRL1とは別にPGRL2という新規のタンパク質が同定され、解析材料をさらに追加する必要があり、その準備に時間を要するため、本年度の研究計画を最終年度である来年度に延期した。研究計画に変更はあったが、本年度進めたTrxに関する研究によって新たにPSIサイクリック電子伝達と協調してチオレドキシンシステムがPSIに光防御に寄与することを明らかにすることが出来たため、研究計画はおおむね順調に進展していると言えると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
x型およびy型Trxの変異体の解析を引き続きおこなう。これらの変異体が変動光条件下で顕著な表現型を示すことは本年度までの研究で明らかになったが、その分子メカニズムについてはわかっていない。そこで来年度はx型およびy型Trxの標的となるタンパク質の同定を試みる。Trxは標的タンパク質のジスルフィド結合を還元することによって標的タンパク質の活性を調節したり、標的タンパク質に還元力を供給する。これまでin vitroの系を用いた解析から、x型Trxは活性酸素の消去に関わるペルオキシレドキシンに電子を供給することが示唆されているが、in vivoの系では他のチオレドキシンシステムが働くと考えられており、変異体を用いた詳細な解析はあまりおこなわれていない。そこで、trx x trx y1y2変異株を用いて、変異体が生育阻害を示す変動光条件下においてx型およびy型Trxがペルオキシレドキシンの制御に関わるかどうかを評価する。またPSIサイクリック電子伝達とx型およびy型TrxによるPSIに光防御機構の生理学的関係を明らかにし、結果を論文にまとめて発表する。 また、本来は本年度実施予定であったPGRL1のシステイン変異体の解析も来年度おこなうことによって研究課題であるチオレドキシンによるPGR5/PGRL1依存経路の制御機構とその生理的意義の解明に関する研究を推進する。
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