研究課題/領域番号 |
21K06220
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44030:植物分子および生理科学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
浅井 智広 立命館大学, 生命科学部, 講師 (70706564)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 緑色硫黄細菌 / カロテノイド / cruC / 光阻害 / 三重項励起状態 / 硫黄代謝 / 嫌気 / 配糖体 / 消光 |
研究開始時の研究の概要 |
光合成生物のカロテノイドには、ポリエン骨格の末端に糖を結合した、配糖体が存在する。絶対嫌気性の光合成細菌である緑色硫黄細菌では、カロテノイド配糖体が光合成反応中心(RC)複合体に特異的に結合し、過剰な光エネルギーを散逸していることがわかってきた。一方、光合成のエネルギー散逸機構は活性酸素生成の抑制機構と考えられており、全く酸素が存在しない絶対嫌気環境での生理的意義は全く知られていない。本研究課題では、緑色硫黄細菌のもつカロテノイドの光合成機能を詳細に解析し、絶対嫌気環境でのエネルギー散逸機構のもつ生理的意義を解明する。
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研究実績の概要 |
緑色硫黄細菌Chlorobaculum tepidumで発生する嫌気的な光阻害現象について、その発生メカニズムの解析を進めた。前年度の研究成果により、カロノテイド配糖体を欠損しているcruC変異株は野生株よりも顕著な強光下での増殖抑制を示すことがわかっている。C. tepidum内でカロテノイド配糖体は光合成反応中心(RC)複合体に局在するため、C. tepidumから単離した精製RC複合体においてカロテノイド配糖体が関わる光化学反応を超高速の過渡吸収分光法で調べた。その結果、C. tepidumのRC複合体ではバクテリオクロロフィルの光励起によってカロテノイドの三重項励起状態(Car-T1)を生成し得ることがわかった。過渡吸収スペクトルの速度論的な解析により、Car-T1の生成はナノ秒オーダーの時定数をもつと推定された。バクテリオクロロフィルの三重項励起状態を前駆体として生成されると考えられたが、生成反応が既報のメカニズムよりも速く、未知の反応経路の存在が示唆された。 一方、前年度に行った増殖の光合成曲線による生理学的な解析を発展させ、強光環境で増殖阻害を増長する培養条件を探索した。その結果、本来C. tepidumの光合成反応で電子源として利用される硫化物の濃度依存的に増殖阻害が発生することがわかった。高濃度の硫化物存在下では、至適な光環境でも増殖阻害が発生した。カロノテイド配糖体を欠損しているcruC変異株でより顕著な表現型が見られ、嫌気的な光阻害が硫化物の代謝過程と関連していることが示唆された。硫化物濃度を上昇させても、培養初期の増殖は抑えられておらず、硫化物を酸化して生成される中間代謝物が原因物質と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要な目的である嫌気的な光阻害現象の実証は前年度までの研究成果によって達成されている。本年度の研究により、その発生メカニズムの追跡とカロテノイドが媒介する光化学反応との関係も見えてきており、当初予定していた研究内容は概ね実施できており、次年度の研究によって主要な目的は達成できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
過渡吸収分光法によってカロテノイドが関わる光化学反応を追跡できることがわかったため、さらなる分光測定と速度論的解析によって光保護機能として働くエネルギー移動経路を特定する。また光阻害の原因物質として硫化物の酸化で生成する中間物質が疑われるため、様々な硫黄化合物について増殖への影響を調べ、嫌気的な光阻害によって細胞毒性が誘起される分子メカニズムを追究する。
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