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陸上植物における単相世代での性決定システムの進化

研究課題

研究課題/領域番号 21K06228
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分44030:植物分子および生理科学関連
研究機関京都大学

研究代表者

安居 佑季子  京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90724758)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
キーワード性決定因子 / 有性生殖 / 苔類ゼニゴケ / 性決定 / ゼニゴケ / 雌性化 / 有性生殖誘導 / 性染色体進化 / コケ植物
研究開始時の研究の概要

性決定は雌雄を持つ生物にとって共通のイベントであるが、そのメカニズムは多様性に富んでいる。近年植物でも、種子植物の性決定因子が複数報告されてきているが、性決定因子の進化については理解が進んでいない。本研究では、陸上植物の基部で分岐したコケ植物に属するゼニゴケの性決定因子に着目し、その起源と進化を明らかにすることを目的とする。陸上植物基部における性決定メカニズムの進化を辿ることで、単相世代での性決定システムの進化の理解につながると考えられる。

研究実績の概要

性決定は生物にとって普遍的なイベントであるが、そのメカニズムは多様性に富んでいることが知られている。植物でも、雌雄異株の種子植物において性決定因子が複数報告されているが半数体世代での性決定についての知見は未だ限られている。陸上植物の最も基部で分岐したコケ植物は半数体世代において性を持つ。これまでに雌雄異株タイ類ゼニゴケにおいて、雌の性染色体上にコードされるMpBPCUが性決定因子であることが明らかになっている。また雄の性染色体上には性染色体間相同遺伝子であるMpBPCVが存在しており、MpBPCUとMpBPCVは共通して有性生殖誘導に必要である。BPCの系統解析の結果、コケ植物に属する、タイ類、セン類、そしてツノゴケ類のBPCはそれぞれ別のクレードに、さらにタイ類はBPCU型とBPCV型に分かれることがわかっている。前年度までに、セン類ヒメツリガネゴケにおけるBPCの機能解析に加え、ヒメツリガネゴケのBPCとゼニゴケのBPCの機能保存性の解析を行なっていた。今年度はツノゴケ類と被子植物シロイヌナズナのBPCとの機能保存性の解析を進めるため、まずそれぞれのBPCをゼニゴケのbpcU変異体背景で発現させた株の作出を行なった。株の作出後は有性生殖を誘導しその表現型の解析によりそれら分子の機能の評価を進めた。また、タイ類のBPCU型とBPCV型は進化の過程で機能分化してきたことが考えられ、その機能差を生み出すアミノ酸残基の同定も、アミノ酸置換遺伝子導入株の作出を行ない、同様の表現型解析により進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでに行なっていたセン類ヒメツリガネゴケのBPCを用いた機能保存性の解析から、タイ類の進化の過程でBPCV型が雌性化能を失うことでBPCU型とBPCV型が機能分化してきたことが考えられていた。今回、ツノゴケのBPC、そしてシロイヌナズナのBPCをクローニングし、それぞれのBPCをゼニゴケのbpcU変異体背景で発現させた。シロイヌナズナのBPCは7遺伝子あるが、系統解析で3つのクレードに別れることがわかっている。そこでそれぞれのクレードに属する遺伝子を1つずつ選び解析に用いた。現在までにツノゴケとシロイヌナズナのBPCはゼニゴケにおいていずれも有性生殖誘導における機能は保存していることが表現型解析からわかってきている。また、BPU型とBPCV型の機能差を生み出すアミノ酸残基の同定では、様々な種の苔植物のBPCのアミノ酸配列比較から、4つのアミノ酸残機に着目して解析を進めていた。アミノ酸置換したBPCをゼニゴケのbpcU変異体背景で発現させ、表現型の解析と遺伝子発現の解析により評価を行なっている。まだ解析は途中ではあるが現在までに機能差に特に寄与していると考えられる2つのアミノ酸残基を特定してきている。

今後の研究の推進方策

これまでにツノゴケとシロイヌナズナのBPCをゼニゴケのbpcU変異体背景で発現させた株を作出し有性生殖の誘導は起こすことができることを確認している。雌雄の表現型を観察するため、切片を作成して観察する予定である。また、ゼニゴケにおいては、常染色体上の遺伝子FGMYBとその逆鎖のlncRNAであるSUFの発現制御により生殖始原細胞の性分化の制御機構が明らかにされている。SUFが転写されている状態においてFGMYBの発現は抑制されるが、SUFの転写が抑制された状態ではFGMYBは発現する。これまでにBPCUがSUFを抑制することでFGMYBの発現を促進し、雌性化が起こると考えられている。そこでこれらの株においてFGMYBとSUFの発現量を定量することでも雌雄を評価する。4つのアミノ酸残機に着目して進めているBPCU型とBPCV型の機能差の解析では、作出が遅れている株については株の確立を目指す。すでに一部の株では表現型の解析とSUFとFGMYBの発現解析を進めている。まだ解析ができていない株については株を確立できた後、順次、表現型と遺伝子発現解析を進める。これらの解析結果を合わせ、タイ類のBPCUが性決定因子として進化した過程を考察する。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] Transcription of the Antisense Long Non-Coding RNA, SUPPRESSOR OF FEMINIZATION, Represses Expression of the Female-Promoting Gene FEMALE GAMETOPHYTE MYB in the Liverwort Marchantia polymorpha2024

    • 著者名/発表者名
      Kajiwara Tomoaki、Miyazaki Motoki、Yamaoka Shohei、Yoshitake Yoshihiro、Yasui Yukiko、Nishihama Ryuichi、Kohchi Takayuki
    • 雑誌名

      Plant and Cell Physiology

      巻: 65 号: 3 ページ: 338-349

    • DOI

      10.1093/pcp/pcad170

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identification of the sex-determining factor in the liverwort Marchantia polymorpha reveals unique evolution of sex chromosomes in a haploid system2021

    • 著者名/発表者名
      Miyuki Iwasaki Katsuyuki T. Yamato John L. Bowman Takayuki Kohchi et al
    • 雑誌名

      Current Biology

      巻: 31 号: 24 ページ: 5522-5532.e7

    • DOI

      10.1016/j.cub.2021.10.023

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 雌雄同株アカゼニゴケと雌雄異株ゼニゴケのゲノム比較による性染色体進化の解析2024

    • 著者名/発表者名
      安居佑季子, Giacomo Potente, 下川瑛太, 梅谷結佳, 田中知葉, 川村昇吾, 大和勝幸, 山口勝司, 重信秀治, 嶋村正樹, Peter Szovenyi, 河内孝之
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 雌雄同株の苔類アカゼニゴケにおける季節特異的な性分化機構の解析2024

    • 著者名/発表者名
      田中知葉, 下川瑛太, 井上慎子, 嶋村正樹, 河内孝之, 安居佑季子
    • 学会等名
      第65回日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 生殖様式の転換に関わるコケ植物苔類の性決定遺伝子発現制御の解析2024

    • 著者名/発表者名
      安居佑季子,田中知葉, 下川瑛太, 井上慎子, 嶋村正樹, 河内孝之
    • 学会等名
      日本農芸化学会2024年度大会 創立100周年記念大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 苔類における性決定因子BPCUの進化2023

    • 著者名/発表者名
      安居佑季子, 河内孝之
    • 学会等名
      日本植物学会 第87回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 苔類の雌雄同株アカゼニゴケと雌雄異株ゼニゴケの性分化制御機構の比較解析2023

    • 著者名/発表者名
      安居 佑季子,田中 知葉, 井上 慎子, 嶋村 正樹, 河内 孝之
    • 学会等名
      第64回 日本植物生理学会年会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 蘚類ヒメツリガネゴケとの比較による苔類の性決定因子BPCUの機能進化の解析2022

    • 著者名/発表者名
      田中 知葉, 安居 佑季子, 井上 慎子, 岩崎 美雪, 川井 絢子, 養老 瑛美子, 小藤 累美子, 榊原 恵子, 河内 孝之
    • 学会等名
      日本植物学会 第86回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] アンチセンス長鎖非翻訳RNA SUFの転写は苔類ゼニゴケ雌性化遺伝子FGMYBの発現抑制に重要である2022

    • 著者名/発表者名
      梶原 智明, 宮崎 基, 岩崎 美雪, 山岡 尚平, 吉竹 良洋, 安居 佑季子, 西浜 竜一, 河内 孝之
    • 学会等名
      日本植物学会 第86回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 苔類ゼニゴケの性染色体上の性決定因子の同定2022

    • 著者名/発表者名
      岩崎 美雪, 梶原 智明, 安居 佑季子, 吉竹 良洋, 宮崎 基, 川村 昇吾, 末次 憲之, 西浜 竜一, 山岡 尚平, Dierk Wanke, 橋本 研志, 朽津 和幸, Sean A. Montgomery, Shilpi Singh, 谷澤 靖洋, 矢倉 勝, 望月 孝子, 坂本 美佳, 中村 保一, Chang Liu, Frederic Berger, 大和 勝幸, John L. Bowman, 河内 孝之
    • 学会等名
      日本植物学会 第86回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ゼニゴケとヒメツリガネゴケを用いた植物のGAGA結合タンパク質の機能進化の解析2021

    • 著者名/発表者名
      安居 佑季子, 井上 慎子, 田中 知葉, 岩崎 美雪, 川井 絢子, 養老 瑛美子, 榊原 恵子, 河内 孝之
    • 学会等名
      日本植物学会 第85回大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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