研究課題/領域番号 |
21K06250
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
金田 剛史 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 講師 (70301752)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 蔓植物 / アサガオ / 植物ホルモン / 微小管 / 回旋運動 / オーキシン / ジベレリン / エチレン |
研究開始時の研究の概要 |
蔓植物には園芸および農業で有用な植物が多数ある。本研究は、蔓が支柱に「巻き付く」という特殊な形態をとる仕組みについて解明し、有用な蔓植物を有効に活用するための基盤的な知見を得ることを目的とする。蔓の巻き付きは、進化論で有名なダーウィンも関心を持った興味深い現象であるが、そのメカニズムについてはほとんど明らかにされていない。本研究では、特に茎の形態がらせん状に変化する仕組みについて、関連する植物ホルモンの種類とその働きを明らかにし、さらに、細胞骨格の働きに着目して細胞レベルで解明することを目指している。また、蔓植物として唯一のモデル植物であるアサガオの形質転換植物の作製法の改良も試みる。
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研究実績の概要 |
蔓植物は“蔓”と呼ばれる細長く伸長した茎を他の物体に巻き付けることで高い位置へと伸長して光合成に必要な光を得るという生存戦略を進化させてきた。そのため、“蔓の巻き付き”は蔓植物が生存するための重要な形態形成である。蔓植物には、園芸・教育上あるいは農業的に有用な植物が多数あり、また、雑草も多く見られる。それぞれその活用あるいは防除のために、蔓の巻き付きのメカニズムを解明することは重要である。本研究は、この“蔓の巻き付き”の仕組みについて生理学的および分子生物学的な側面から明らかにすることを目的としている。 アサガオの蔓の巻き付きにおける植物ホルモンの一種であるオーキシンの役割について明らかにするため、当該年度は、オーキシンに応答している組織を特定する目的で作製したオーキシン応答性プロモーターの制御下にマーカーとしてβ-グルクロニダーゼ(GUS)の遺伝子をつないで導入したアサガオの形質転換体を利用し、まずこの形質転換体が外因性オーキシンあるいは内因生オーキシンによる応答の検出にともに用いることができることを確認した。この形質転換体を用いて、巻き付いている蔓でオーキシン応答の検出を行うと、頂端付近に形成されるフック状の部位において屈曲の外側の皮層および表皮でGUS活性が検出されることが、組織切片による観察により判った。また、オーキシン輸送阻害剤NPAで蔓を処理すると、巻き付きおよびフック形成は抑制され、頂端付近で組織全体に著しく強いGUS活性が検出された。これらのことから、アサガオの蔓の巻き付きおよびフック形成にはオーキシンの正常な局在化が必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アサガオの蔓の巻き付きにおける植物ホルモンの一種であるエチレンの阻害剤の効果およびエチレン生合成関連酵素の遺伝子の発現に関する前年度に得られた成果について、論文としてまとめて公表することができた。また、オーキシン応答性プロモーターの制御下にマーカーとしてβ-グルクロニダーゼ(GUS)の遺伝子をつないで導入した当研究室で作製したアサガオの形質転換体について、下胚軸切片を用いた実験系で外因性オーキシンに対する応答を検出できることに加えて、重力刺激を与えた芽生えの下胚軸の屈曲の際に内因性オーキシンの働く組織の検出も可能であることを確認した。その上で、蔓の巻き付きの際にオーキシンの働く組織を特定するために、組織切片を使った光学顕微鏡レベルでの観察も用いて解析を進めた。また、オーキシンの働く組織と蔓の伸長との関連性について詳細に解析するために、伸長領域の特定とその伸長量を測定する方法について検討し、形質転換体をより有効に利用するための準備を進めることができた。さらに、アサガオでは組織培養による植物体の再生が難しいことから、現在報告のある形質転換体の作製法は効率が悪く、培養にも長い期間を要する。オーキシン応答の解析に現在用いている形質転換体だけでなく、蔓の巻き付きに関連した遺伝子の機能解析に用いる新たな形質転換体を作製して研究に活用するために、効率良く形質転換体の作製を行える組織培養法の改良についての検討も引き続き行った。 全体を通して当該年度には、蔓の巻き付きとエチレンとの関連性を示す論文を提出でき、形質転換体を利用した解析も進行していることから、研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
オーキシンに応答している組織を確認できるアサガオの形質転換体を用いて、蔓の巻き付きとオーキシンの働きとの関係についてさらに調査を継続して行う予定である。特に蔓の先端に形成されるフック状の部位について、蔓の巻き付きにおけるその役割およびその形成過程におけるオーキシンの働きについて明らかにするための解析を行う。また、これまで蔓の巻き付きとエチレンとの関連性について、巻き付きの際に発現量が変化するエチレン生合成関連酵素の遺伝子の候補を見出している。今後はこれらの遺伝子と巻き付きとの関連性を明らかにするために、形質転換体の作製やゲノム編集技術を用いた発現の組織局在および機能の解析を試みる。 一般に植物細胞の伸長方向は、細胞質表層微小管の配向によって制御されている。巻き付いた蔓の表皮細胞における細胞質表層微小管の配向の変化について検討するために、間接蛍光抗体法による染色あるいは蛍光タンパク質を融合させたチューブリンを発現させた形質転換体の作製などの手法により解析を進める予定である。 これらの解析を効率よく進めるにあたって、アサガオでは形質転換体の作製効率が悪いことや培養に長期間要することが課題となっている。蔓植物として唯一のモデル植物として全ゲノムの塩基配列も公開されているアサガオで、分子生物学的な解析を進める環境をより整えるため、形質転換法の改良も引き続き試み、特に培養に用いる材料や生長調節物質の条件等について検討を行う。
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