研究課題/領域番号 |
21K06262
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡 良隆 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 名誉教授 (70143360)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 生体情報学 / 生殖 / 性行動 / 神経機構 / 神経内分泌 |
研究開始時の研究の概要 |
動物が繁殖期だけに生殖と性行動を行うという、神経系と内分泌系の協調的な制御のしくみに迫るため、我々は、飼育の明暗周期により繁殖状態を制御でき、従来の実験系にはない様々な優位性を多数備えるメダカに着目した。本研究では、メダカ脳内のGnRHニューロン(GnRH:生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン)と呼ばれるペプチドニューロンの活動が繁殖期に周期的な排卵を引き起こすしくみや、成熟した卵巣から放出される性ホルモンや排卵に伴う何らかのシグナルに依存して、繁殖期特異的にメスの生殖と性行動を協調させるしくみを、従来我々が推進してきた、遺伝子改変メダカに最先端の神経科学的手法を適用することで、解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は動物の生殖と性行動を同調させることにより生殖を成功に導く神経系・内分泌系制御機構の解明を目的としている。 ①脊椎動物のメスに共通する排卵周期の神経・内分泌的制御機構:脳内GnRH(Gonadotropin-releasing hormone)ニューロンの機能を多角的に解析し、排卵の引き金となるGnRHニューロン活動を生じさせるしくみを解明する。GnRHニューロンの活動電位(発火)平均頻度が排卵に先立ち上昇すること、生殖周期中に血中エストロジェン(E)濃度が変動を示すことは我々がメダカで既に証明しており、これがGnRHサージの基礎になると考えられる。また、GnRHニューロンの6Hz以上の高頻度発火(HFF)が脳下垂体のGnRHニューロン軸索終末からGnRHを放出させて脳下垂体LH細胞からのLH放出を引き起こすことも証明している。一方、GnRHには3種のパラログ遺伝子が存在しており、メダカにおいてはGnRH1が生殖調節機能を持っている。この他に異なる機能を持つGnRH2、GnRH3が存在すると考えられるが、今年度はこうしたGnRHパラログの進化に関する共同研究を行い画期的な仮説をiScience誌に発表した。 ②メスが生殖周期(特に排卵)に同期して性行動を引き起こす神経機構:現在までに産卵に必須な抱接行動を制御するしくみに関してE受容体遺伝子esr発現ニューロンを中心とする神経機構を中心とする作業仮説の下に研究を進めているが、本年度は、同じくesrを発現しほ乳類では生殖調節に重要な機能を持つ神経ペプチドキスペプチンの受容体遺伝子gpr54-1を発現するニューロンがメダカなどの魚類では性行動制御に関与することを発見し、研究成果をiScience誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績概要①にあげた研究計画 研究代表者岡の研究室にかつて所属し現在東大大気海洋研に所属する神田真司准教授らの研究グループとの共同研究により、視床下部でGnRHパラログであるgnrh1とgnrh3が共発現して脳下垂体機能を調節しているユニークな魚種(ピラニア)を用いた分子遺伝学的解析により、これらのGnRHパラログの進化についての重要な仮説を提唱し、学際的な国際ジャーナルiScienceに論文発表した。 実績概要②にあげた研究計画 神経ペプチドの一種であるキスペプチンはほ乳類では生殖調節に重要な機能を持つが、研究代表者らの従来の研究成果などから、魚類を含む非哺乳類では生殖調節に関係しないのではないかと考えられ、その機能は未解明であった。本年度の研究ではキスペプチン受容体遺伝子gpr54-1を遺伝子操作により欠損させたノックアウトメダカの雌雄ペアを用いて性行動を詳細に解析し、Gpr54-1を欠損したメダカのペアでは産卵に遅れが生じ、産卵数も少なくなること、などを発見した。本年度の研究成果から、Gpr54-1を介したキスペプチンの機能は、メスでは性行動の促進作用、オスでは性行動の抑制作用であることを提唱し、学際的な国際ジャーナルiScienceに論文発表した。
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今後の研究の推進方策 |
実績概要①にあげた研究計画:現在メスメダカ脳内におけるGnRH1ニューロン活動をin vivo状態におけるメダカ脳からのCa2+ファイバー・フォトメトリーにより経時的記録を行う実験と、GnRH1により刺激を受けて脳下垂体から放出されて排卵をトリガーする生殖腺刺激ホルモンLHの血中濃度の経時的記録を行う実験を、共同研究者の池上、馬谷らと共に準備中である。この実験結果が得られれば、両者の関係を解析し、学会発表ないし論文発表を実施予定である。 実績概要②にあげた研究計画:現在、2021年に論文発表した研究で開発した行動解析装置を用いて、メスメダカの性行動制御においてE受容体発現ニューロンの果たす役割を中心に、共同研究者の富原らと共に論文投稿の準備中である。
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