研究課題/領域番号 |
21K06271
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
田中 浩輔 杏林大学, 保健学部, 教授 (50236585)
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研究分担者 |
伊藤 慎 杏林大学, 保健学部, 講師 (00460139)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 甲殻類 / RNAseq / トランスクリプトーム解析 / HCN channel / モノアミン受容体 / 自動能 / 個体発生 / ペースメーカー |
研究開始時の研究の概要 |
甲殻類の自律運動器官(心臓や消化管)は、横紋筋様組織で構成され、神経原性により自律運動を発現するものが知られている。本研究では、まず主に心臓神経節ニューロンおよび心筋の活動電位を構成するイオンメカニズムを電気生理学的に調べる。次に、網羅的なRNA発現解析を行い、イオンチャネルの発現を組織ごとに調べる。さらに個体発生における自動性の変移、および筋原性を保持している種との比較により、筋原性から神経原性への転換メカニズムを解明する。
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研究実績の概要 |
甲殻類の自律運動器官の自動性の源を調べるため、クルマエビ成体の心臓や腸管を用い自動性の発現機構を明らかにするため、分子生物学的アプローチによる研究を主に進めた。 本年度は、Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated (HCN) channelが発現しているか及びそのサブタイプについて、RNAseq法を用いて網羅的に検討を行った。成体のクルマエビの代表的な組織(中枢神経系、消化管、心臓、筋肉)から抽出したTotal RNAを混合したサンプルについて目的とする遺伝子に関して発現を調べた。 得られたデータに関してBLAST検索を行い、アノテーション情報を付加した。HCN channelを示す参照Subject428個と相同性があるトランスクリプトーム情報を抽出した。それらの中で、更に一致度が高いものを194抽出した。それらは3つに集約された。一つは98サブジェクトと高い一致を示し、これには様々な動物種のHCN channelのisotype 2ないし3のものが含まれていた。もう一つは、95サブジェクトと一致し、isotopeは同様に2ないし3であった。この2つのTranscriptomesは、isotype同士であった。最後の一つのTranscriptomesは、1サブジェクトと一致し、これはisotype1であった。結果から、クルマエビにおいて、HCN channelに関して、少なくともIsotype 2ないし3と1の2つのfamilyの存在が示唆された。これらに関して、成体の個体ごとの主要な部位における発現を調べた結果、中枢神経系及び心臓において、発現が観察された。これらの結果は、参照となる他の動物とも一致することから、我々が得たこのTranscriptomeはHCN channelであることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
分子生物学的手法を用いた解析に関しては、Transcriptome解析から、ターゲットの1つであるHCN channelに関して、既存の無脊椎動物と比較し、3つのisotypeを見つけることができた。発現解析により、中枢神経系及び心臓に発現が認められたが、まだ組織化学的な発現部位の特定ができておらず、やや遅れている。 一方、生理学的手法に関しては、腸管構成筋を用いた研究が進まず、筋の基本生理学的特性の特定に至らなかった。今後、イオン濃度を変化させる等の手法により自律運動を構成する筋の性質を引き続き明らかに必要がある。したがって、総合的に遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
23年度が最終年度であったが、期間の延長を申請し承認を受けたため、24年度に以下のことを実施する予定である。 最も強く示唆されたTranscriptomeがHCN channelであるかを明らかにするために、強く発現が確認された中枢神経系ないし心臓からRNAを抽出して遺伝子の全長クローニングを行い配列を決定する。得られた塩基配列について他の動物種と比較検討を行い、今回のTranscriptomeがHCN channelか否かを検討する。更に、in situ hybridizationなどの組織学的解析による検討を行うことで、TranscriptomeがHCN channelであることを明らかにする。 次に、解剖学特徴から、腸管の中でも小腸-直腸接合部分の構成筋にターゲットを絞りそれら生理学的特徴を調べ、分子生物学的結果と併せて自律運動の源となるメカニズムの解析・検討を行う。
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