研究課題/領域番号 |
21K06275
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
太田 茜 甲南大学, 自然科学研究科, 特任研究講師 (50410717)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 温度受容体 / Gタンパク質共役型受容体 / サーモセンサー分子 / 線虫 / 低温耐性 |
研究開始時の研究の概要 |
温度は生物の生存に必須の環境情報である。感覚神経の温度受容体としてTRPチャネルが知られているが、TRP以外の温度受容体については未解明の点が多い。本申請者らは、これまでに温度情報が視覚と同様に三量体Gタンパク質(Gα)で伝達されることや、DEG/ENaC型のメカノ受容体が温度受容体として機能することを見つけた。本研究では、新規の温度受容体の単離を目指す。これまでに、新規の温度受容体候補として、GPCR SRHを単離したため、この分子が本当に新規サーモセンサー分子として機能するのかを遺伝学的解析と生理学的解析から研究を進める。また、遺伝学的解析から新規の温度情報伝達分子の同定も進める。
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研究実績の概要 |
温度は生物の生存に必須の環境情報である。感覚神経の温度受容体としてTRPチャネルが知られているが、TRP以外の温度受容体については未解明の点が多い。本研究者は、これまでに温度情報が視覚と同様に三量体Gタンパク質(Gα)で伝達されることを見つけた。これまでに、新規の温度受容体候補として、GPCR SRHを単離したため、この分子が本当に新規サーモセンサー分子として機能するかの解析を進めている。また、遺伝学的解析から新規の温度情報伝達分子の同定も進めている。 当該年度は、TRPとGPCRの関係性を調べるために、ocr-2 osm-9二重変異体およびocr-2 osm-9;srh-40三重変異体の温度馴化解析をおこなったところ、srh-40; osm-9 ocr-2三重変異体は温度順化の増強異常を示した。 ocr-2 osm-9;srh-40三重変異体のADL温度受容ニューロンのCa2+イメージングを行った結果、いずれもCa2+イメージングのレベルでは、ADL温度受容ニューロンは、正常な温度応答を示した。この表現型は、osm-9 ocr-2二重変異体と類似していた。これらの現象は、未同定の代償機構によるものと考えられる。カメレオンYC3.60のアーチファクトによる結果でないことを示すために、YC3.60の代わりにCa2+に対する親和性の低いYC4.12を用いて、ADL温度受容ニューロンのCa2+イメージングを行った。その結果、YC4.12で測定したADLの温度応答はとても弱く、ADLにおけるYC3.60の温度依存的な強度変化はCa2+の増加によるものであり、カメレオンのアーチファクトによるものではないことが示唆された。 これらの解析から、TRPVチャネルはSRH-40の下流にあるか、あるいはSRH-40経路と並行して作用している可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、新規の温度受容体の単離を目指す。これまでに、新規の温度受容体候補として、GPCR SRH-40を単離したため、この分子が本当に新規サーモセンサー分子として機能するのかを遺伝学的解析と生理学的解析から研究を進めており、また、遺伝学的解析から新規の温度情報伝達分子の同定も進めている。当該年度は、TRPとGPCRの関係性を調べるための多重変異体解析を進め、温度順化とカルシウムイメージング解析から、TRPVチャネルはSRH-40の下流にあるか、あるいはSRH-40経路と並行して作用している可能性があると考えられた。一方で、ocr-2 osm-9;srh-40三重変異体およびocr-2 osm-9;ocr-1 srh-40四重変異体のADL温度受容ニューロンのCa2+イメージングを行った結果、いずれもCa2+イメージングのレベルでは、ADL温度受容ニューロンは、正常な温度応答を示した。この結果は、想定外であったため、追加の解析を行ったが同様の結果となり解釈に困ることとなった。そのため、それのらの実験に予想以上に時間がかかってしまい、予定した解析の一部を行えなかった。
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今後の研究の推進方策 |
神経系における温度受容に関与する分子として、TRP型チャネルが知られているが、それ以外の分子には未知の点が多い。本研究では、比較的解析の進んでいない三量体Gタンパク質を介した温度情報伝達機構の解明、特にGαの上流で機能する未知の温度受容体の単離を目指し下記の解析を進めている。低温耐性に関わる温度受容ニューロンASJでは、哺乳類の視覚・嗅覚系と同様の三量体Gタンパク質、グアニリル酸シクラーゼ、ホスホジエステラーゼ(PDE)、cGMP依存性チャネルが温度受容に関与することを見つけたが、一般的に、感覚ニューロンにおいてGαはGPCRにより活性化されることから、Gαの上流にはGPCR型の温度受容体(GPCR)が存在する可能性が考えられ、新規の温度受容体候補としてSRH-40が見つけた。当該年度以降は、(1)SRH-40以外の温度受容体候補GPCRに関しても、温度受容体であるかを遺伝学的解析および生理学解析から検証することを計画している。また、(2)遺伝学的解析から温度受容情報伝達系に関わる新規の変異体が得られ、その原因遺伝子を同定したためその解析を行う。
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