研究課題/領域番号 |
21K06277
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45010:遺伝学関連
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
井上 喜博 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (90201938)
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研究分担者 |
松田 修 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00271164)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 自然免疫 / ショウジョウバエ / 癌化突然変異体 / 抗癌ペプチド / 血球細胞 / 抗菌ペプチド / 造血組織腫瘍 / MAPキナーゼ / metalloproteinase / Anti microbial peptides / 造血組織 / 腫瘍 / 抗癌作用 |
研究開始時の研究の概要 |
ショウジョウバエmxc変異体では造血組織内にある未分化細胞が異常増殖し、他の組織に浸潤、転移する。本研究では、自然免疫系しか持たないショウジョウバエを材料として、同モデル生物で確立された優れた発生遺伝学的手法を駆使しながら、このmxc変異体の癌化メカニズムを解析する。さらに造血組織が発生,悪性化する機構および自然免疫系が癌を認識、排除する機構を明らかにする。ヒト相同ペプチドにも同様な抗腫瘍効果があるか,まで明らかにする。本研究により,昆虫の血球細胞の増殖、分化を制御する機構の理解が進むことが期待できる。
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研究実績の概要 |
大半の生物は自然免疫系しか備えていない。それらの生物でも癌は発生するが、自然免疫系による癌細胞の認識,排除する機構については十分に理解されていない。ショウジョウバエmxc変異体では造血組織(LG)内の未分化細胞が異常増殖し、他の組織に浸潤する。同変異体において自然免疫系が強く活性化されており、その結果AMPペプチドが誘導され、それらには抗癌作用があることを示した。本研究の目的は、mxc腫瘍が発生、悪性化する機構、癌が血球細胞に認識され、免疫担当組織で自然免疫系が活性化される機構、AMPsが癌細胞だけに作用し、抑制する機構を明らかにすることである。2022年度は、まず、腫瘍により自然免疫経路が活性化される機構の解明を目指した。mxc変異体では体液中の血球細胞内に活性酸素種(ROS)が蓄積していた。抗酸化物質を与えてこれを除去するとAMPsのmRNA量が減少し、腫瘍が増大した。変異体の血球細胞ではROS産生酵素DuoxのmRNA量が上昇していた。血球細胞でこれをノックダウンするとAMPsのmRNA量が減少した。これらの結果は、腫瘍を認識した血球細胞内でDuoxが誘導され、ROSが産生されたと解釈できる。変異体ではより多くの血球細胞が脂肪体にも局在していた。これらを介して癌に関する情報が脂肪体に伝わり、自然免疫経路が活性化された。その結果、AMPが誘導されたという可能性がある。次に、自然免疫系が腫瘍を認識する機構についても検討した。変異体のLGではMMP1、2が大量発現していた。変異体LGでMMP2を低下させると脂肪体でのAMP発現が抑制された。LG腫瘍におけるMMP2の異常発現が、最終的に脂肪体での自然免疫系の活性化に関連すると考えている。ショウジョウバエの血球細胞が腫瘍を認識し、免疫担当組織(脂肪体)に情報を伝達した結果、自然免疫経路が活性化されるというモデルを提唱した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ヒト白血病に似たmxc腫瘍が発生、悪性化する機構、癌が血球細胞に認識され、免疫担当組織で自然免疫系が活性化される機構、AMPが癌細胞だけに作用し、抑制する機構を明らかにすることとしている。mxc腫瘍が発生、悪性化する機構については2021年度に研究を行い、成果についてはすでに論文化している。2022年度はこの癌が血球細胞に認識され、免疫担当組織で自然免疫系が活性化される機構について研究をおこなった。実績の概要に述べたような成果があがったので、この目的に関しては達成していると考えている。したがって、2022年の研究計画は概ね順調に進展したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1.LG腫瘍を認識した血球細胞は脂肪体にその情報を伝え、そこで自然免疫系が活性化される。mxc変異体の脂肪体ではサイトカインUpd3が高発現していた。これを阻害すると脂肪体にリクルートされる血球細胞が減少した。哺乳類のマクロファージは炎症性サイトカインに誘因される。ショウジョウバエでもUpd3を放出する脂肪体へ血球細胞がコンタクトするという仮説をたてた。検証のために、正常幼虫の脂肪体特異的にUpd3を異所的に発現させる。これだけで血球細胞がリクルートされるか検討する。2.AMPsがmxc突然変異体の癌細胞だけを標的にする機構の推定:脂肪体から分泌されたAMPは癌細胞だけに作用する。この認識機構を推定する実験を行う。哺乳類の癌細胞は細胞膜上に負に帯電したリン脂質(ホスファチジルセリンなど)が多く含む。mxc変異体のLG腫瘍でも細胞表面にこれが多いか検討する。これと高い親和性があるAnnexin Vを検出に用いる。AMPの中には正電荷を帯びたアミノ酸に富む領域がある。一方、PSが細胞膜の表面にあると両者が静電的相互作用により引き合う可能性がある。LG腫瘍上にあるPSを目印にAMPが作用し、その結果アポトーシスが誘導されるという仮説を検討する。3.ショウジョウバエCecropin Aに相同な蛾のAMP(化学合成品)あるいはDefensinに相同なマウスbeta -Defensinの化学合成品を mxc変異体幼虫に注入する。これらの異種のAMPがショウジョウバエの血球細胞に取り込まれないか、それを取り込んだ血球細胞が腫瘍上にリクルートされるか、周辺のLG腫瘍にアポトーシスが導入されないか、免疫染色法により検討する。4)マウスDefensinのcDNAをマウスのガン細胞で発現させ、これを担癌マウスに注入して、癌細胞の増殖が阻害されないか検討する。
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