研究課題/領域番号 |
21K06280
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45010:遺伝学関連
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
菱田 卓 学習院大学, 理学部, 教授 (60335388)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | DNA相同組換え / DNA二本鎖切断 / 染色体構造 / 大腸菌 / SMCファミリー |
研究開始時の研究の概要 |
DNA二本鎖切断(DSB)の修復には、切断部位周辺の染色体構造を安定に維持し無傷の姉妹染色体との相互作用を促進する染色体レベルの空間的な制御が重要である。しかしながら、大腸菌には姉妹染色体をつなぎとめるコヒーシンに相当するSMCタンパク質が存在しないため、その分子機構は未だ不明である。本研究は、DNA損傷依存的に発現するSMCタンパク質であるRecNのDSB修復における役割を詳細に解析し、DNA鎖間の空間的制御とDSB修復促進のメカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
大腸菌のSMC(染色体構造維持)ファミリーに属するRecNタンパク質は、真核生物の染色体に相当する核様体構造の安定性維持に関与し、DNA二本鎖切断(DSB)修復の促進に重要な役割を果たしている。本研究では、アラビノースの添加により遺伝子発現が誘導されるPBADプロモーターの下流にRecN遺伝子を導入した発現制御系を用いて、DNA損傷ストレス下でRecNの発現タイミングが核様体の動態や安定性に及ぼす影響を詳細に解析した。これまでの研究から、DSB誘導剤であるマイトマイシンCで処理したrecN欠損細胞では、核様体の断片化が引き起こされることが示されていたが、今回の実験系を用いた解析から、MMC処理後のrecN欠損細胞にRecNを発現すると、断片化した核様体が正常な構造へと回復し、野生型細胞と同程度にまで細胞生存率が回復することがわかった。同様の条件でGFPまたはmCherryを融合したRecN及びRecAを蛍光顕微鏡を用いて観察すると、GFP-RecNは断片化した核様体の間(ギャップ領域)で特異的な局在を示すフォーカスを形成し、この領域でDNA組換えタンパク質であるRecA-mCherryと共局在していることが示された。さらに、生細胞を用いたGFP-RecNのタイムラプス蛍光観察から、RecNがフォーカスを形成しているギャップ領域において断片化した核様体の再構築が起こることがわかった。これらの結果は、recN欠損細胞で観察された核様体の断片化は細胞死を伴う核様体の崩壊を示すものではなく、RecAを介したDSB修復のプロセスが中断された状態であることを示唆している。これらの結果より、DSB修復時にRecAが関与する相同鎖探索と鎖交換反応は時空間的に分離可能であり、RecNは核様体の動態を制御することによって、RecAによる組換え反応の促進に関与していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アラビノースによるRecN発現系を構築し、RecN発現の有無によるDNA損傷時における核様体構造の観察を行なった結果、RecNの発現誘導後に断片化した核様体が元の状態に回復することがわかった。そこで、この核様体の回復過程を詳細に解析するために、RecNとRecA、核様体結合タンパク質であるHUに蛍光タンパク質を融合した実験系を新たに構築し、蛍光顕微鏡を用いた各タンパク質の細胞内動態解析及び生細胞を用いたタイムラプス解析を行なった。その結果、RecNとRecAが核様体の再構築が起こる核様体間ギャップ領域に共局在することを明らかにした。さらに、RecNのATP加水分解活性の欠損したRecN変異体を用いて同様の解析を行なったところ、RecN変異体はギャップ領域に局在できる一方で、その後の核様体の再構築が起こらないことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
今回の結果は、RecAが持つ2つのDNA相同組換えプロセス、すなわちRecAフィラメントによる相同鎖探索とDNA鎖交換反応が時間的・空間的に分離可能であり、SMC様のRecNがRecAフィラメントと核様体の両者の動態を制御することによって一連の反応を促進する必須の役割を果たしていることが明らかになった。今後は、精製タンパク質とDNAを用いた生化学実験によって、RecNによるRecAの組換え反応の制御メカニズムを分子レベルで明らかにする。
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