研究課題/領域番号 |
21K06281
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45010:遺伝学関連
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
岩崎 直子 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70203370)
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研究分担者 |
赤川 浩之 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (60398807)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | monogenic diabetes / 若年発症糖尿病 / 機能解析 / 発症機序 / 網羅的 / MODY / WES |
研究開始時の研究の概要 |
MODY(maturity onset diabetes of the young) は常染色体優性遺伝の若年発症糖尿病で、原因遺伝子は15種類知られ、糖尿病の成因研究において重要である。全エクソーム解析で原因遺伝子不明定の例が存在する一方で、我々は複数MODY遺伝子にlikely-pathogenic variant (rare variant)を重複保有し、各々が独立して連鎖する家系を認めている。重複variantによる疾患発症の可能性は重要な未解決課題で、CRISPR /Cas9ゲノム編集技術により複数variantを導入したINS-1 cell lineを樹立し、詳細に検討する。
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研究実績の概要 |
原因遺伝子不明のMODYの遺伝素因の解明を目的として、従来の候補遺伝子に的を絞ったパネル解析とは異なり、全エクソーム解析を用いた網羅的解析を行っている。これまでに単一遺伝子異常による糖尿病が疑われる患者パネルから、原因遺伝子が未同定の患者計72例を対象としてNovaSec6000を用いた全エクソーム解析を行ってきた。アウトプットデータのアノテーションに関しては、一般集団における頻度<0.02のバリアントを選択し、ClinVarデータベースやACMG/AMP guidelineによって病原性を判定した。さらに隠れマルコフモデルによるXHMMアルゴリズムにより遺伝子欠失のスクリーニングを行い、MLPAで確認した。VUSについてはヒト細胞を用いたレポーターアッセイを行い、バリアント機能を検討した。これまでの結果では、72例中20名においてMODY遺伝子内に存在する病原性意義が不明なバリアントを20種類検出した。これらの一部については機能解析を実施し、学会で発表後に論文化した。さらに、XHMM解析により遺伝子(全体若しくは一部)の欠失が疑われ、MLPAにより確認できた4例であった。我が国におけるMODYの診断率は従来20%程度とされてきたが、これらの網羅的かつ段階的な解析を組み合わせることで、最近4年間の解析事例に絞ると、全体で23例(1型糖尿病 6例、2型糖尿病 13例、糖尿病 3例、MODY 1例)中、14例(60.9%)で診断が確定できた。内訳はMODY1 4例、MODY2 4例、MODY3 3例、MODY5 1例、MODY12 1例、Wolfram症候群 1例であった。 今後はさらに機能解析を進め、複数の家系で同定されている、2種類の糖尿病関連遺伝子内のVUSについて機能解析を含めた検討を行うことで、日本人(アジア人)特有の新規MODY遺伝子の同定につなげられる可能性が高い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に述べたように、既知のMODY遺伝子において新規病的バリアントを含む原因となるバリアントの同定を数例において達成し、うち1例を論文化した。我々のように全エクソームアウトプットデータにアノテーションとして隠れマルコフモデルを加えた解析(XHMM)を加えて得られた結果をMLPAで確認し、さらにVUSに対する機能解までの一連の工程をsequensialに実施している施設は少なく、このことによって最近4年に収集したサンプルにおいて、診断率60%とこれまでにない高いレベルを達成することができたと考えている。逆に言えば、そのような手順を経なければ病的バリアントを見過ごしてしまっているリスクがあると推定される。また、原因遺伝子の同定できていない複数のMODY疑い症例において、糖尿病関連遺伝子ではあるがMODY 遺伝子としては報告されていない遺伝子内において、複数家系において別々のVUSバリアントを見出しており、新規のMODY遺伝子である可能性が考えられる。
成果の一部は、2022年度に学会発表並びに論文化によって発信した。 2022年度の学会発表は、国際学会口演1回、国内学会シンポジウム口演2回、一般口演4編、ポスター発表1回、合計8回。論文は英文1編が受理、投稿中が2編、執筆中は2編となっている。 これらの研究は大学院生が担っており、リサーチマインドが育まれ、極めて意欲的に研究に取り組んでおり、研究推進並びに業績の集積に大きく役立っている。 社会への還元に関しては、原因遺伝子が同定できた症例には結果開示を行うとともに個別化医療を実践し、患者のQOL改善につなげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
原因遺伝子の同定できていない複数のMODY疑い症例において、糖尿病候補遺伝子であるがまだMODY 遺伝子としては報告されていない遺伝子内に複数家系おいて異なったバリアントを見出しており、新規のMODY遺伝子の同定に発展する可能性が高いと考えている。その可能性を明らかにするために、VUSの状態にとどまっている数種類のバリアントについて機能解析を行う。具体的にはヒト細胞を用いたレポーターアッセイを行い、ACMG/AMP guidelineによる病原性判定においてlikely pathogenic 若しくはpathogenic の判定になる条件に合致する根拠が得られるかどうかを検討を行う。大学院生が機能解析技術を習得しており、検討は十分実施可能である。 これにより、当初の目的である新規MODY遺伝子の同定、および日本人MODY 原因遺伝子の同定率の向上を達成できると考えている。また、systematicな一連の解析が臨床診断においては極めて重要であることを論文化し、今後のMODY遺伝子検査の標準的な実施手順として推奨されるよう提唱していく予定である。これらの一連の仕事は直ちに臨床に還元可能である。 さらに、最近イントロン内に存在する病原性バリアントが同定されており、注目を集めている。我々も研究手法をその領域までを含めた網羅的解析へと移行し、全エキソームから全ゲノム解析へと拡大することを検討している。アウトプットデータが巨大となることから大容量コンピューターが必要であり、対応としては外部の大容量コンピューターを用いることで解決可能であり、詳細について検討を開始しているところである。また、AIを用いたアノテーションも解析応用技術として視野に入ってくることから次回の研究課題としたい。
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