研究課題
基盤研究(C)
精子と卵子が受精して受精卵ができたあと、受精卵は卵割と呼ばれる体細胞分裂を開始します。卵割は通常の体細胞分裂と異なり、母親由来のmRNAのみが発現していることや、間期核がほとんどない、細胞サイズが大きく分裂回数を経て次第に小さくなるという特徴があります。また近年では卵割時期は非常に染色体異常を起こしやすい不安定な時期であることが知られてきました。しかしながら、何故、正常な体細胞分裂ができないのかは未解明なままです。そこで本研究では、染色体不安定を惹起させう要因を分子遺伝学アプローチにより解明することを目的としました。
倫理審査の認可を受けて、治療に用いられなくなった廃棄予定の受精卵を用いて、培養5-6日の胚盤胞期における受精卵の遺伝子発現パターンを網羅的に解析した。またその受精卵の染色体核型を調べ、染色体正常と染色体異常の2群に分けて、染色体異常を持つ受精卵における発現変動パターンを調べた。さらに妊婦血液中に含まれる胎児由来のcell free RNAの解析手法と、受精卵を培養する培地に含まれる受精卵由来のcell free DNAを鋳型にしたNon invasive PGTを参考にして、培地に含まれる受精卵由来のcell free RNAを網羅的に解析する手法を確立した。受精卵本体と培地の遺伝子発現プロファイルを調べ、遺伝子発現パターンの比較解析を行い、培地の遺伝子発現パターンが、受精卵の遺伝子発現を反映しているか確認した。次に、cell free RNAをmRNAだけでなく、non coding RNAも含めてTotal RNAを解析して、染色体異常を持つ受精卵で特異的に発現変動を起こす遺伝子群に着目し、これらの遺伝子群を調べることで、ほぼ100%の精度で受精卵における染色体異常の有無を判定できるようになった。この手法は、受精卵にとって侵襲のある生検を行うことなく、染色体異常の有無を予測することができ、さらには、従来のNon invasive PGTではDNAを鋳型にしていたため、塩基情報しか見ることができなかったが、RNAを鋳型にすることで染色体異常の情報のみならず、将来的には、移植の可否など胚の情報を明らかにできる可能性を秘めている。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 2件)
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