研究課題/領域番号 |
21K06287
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 敦子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (90589433)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 発生緩衝 / 進化可能性 / カタユウレイボヤ / 母性効果 / ネットワーク解析 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、遺伝子診断が個人レベルでも普及してきたが、仮に病気と関わる変異をゲノム中に持っていたとしても、発病するとは限らない。その主要な原因のひとつが、生物の発生をゲノムの変異や環境ストレスに関わらず一定に保つ「発生緩衝」である。発生緩衝は、種を一定に保つはたらきを担う一方で、発生緩衝度合いの変化によって、ゲノムに潜在する変異が表現型となり、進化的変化を方向付ける。本研究では、環境が発生に及ぼす影響について、トランスクリプトームの継代的変化における数学的パターンやシステム的特性を明らかにすることにより、進化の数学的予測を目指す。
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研究実績の概要 |
カタユウレイボヤの親個体に熱ストレスを与えたものと与えないものとで、卵の母性mRNAのばらつきがどのくらい異なるか、また、親の発生緩衝度合いはばらつきの変化にどのように影響するかを明らかにした。発生緩衝度合いは母性遺伝するため、熱ストレスに比較的強いタイプAを祖母とする卵と、タイプBを祖母とする卵(両方とも、祖父はタイプB)を得て、単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析を行った。さらに、それらの卵を野生型タイプBと交配し、次世代の卵を得て、同様の網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、交配の種類によって、卵の母性mRNAの発現におけるばらつきが大きく異なることが明らかになった。本研究では、それぞれの交配について1個体ずつからしか卵を採取していないため、ばらつきに見られる差が、交配の種類ではなく、個々の母親の個体差である可能性ももちろんあり、今後さらに検証を続ける必要がある。さらに、正常な発生過程に重要な、シグナリング分子の発現のいくつかは、熱ストレスの影響を受けやすいことが明らかになった。本研究の成果は、単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析技術を使って母性mRNAにおけるばらつきを調べた先駆的成果であり、現在、投稿論文を執筆中である。 さらに、カタユウレイボヤよりもさらに世代時間が短い線虫を用いて、継代によって形質のばらつきはどの程度遺伝するのか、seam cellをGFPで標識した系統を用いて、熱ストレスの影響の多世代遺伝について調べた。先行研究では、熱ストレスに応答した遺伝子発現が14世代にわたって多世代遺伝することが報告されていたが、形態におけるばらつきは、それよりもずっと早く熱ストレスの影響が消失することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、カタユウレイボヤの卵のばらつきについて、研究成果を論文にまとめることが出来たほか、カタユウレイボヤの発生における時系列データの取得を行い、解析を始めることが出来たため。線虫の実験については、当初の予想とは異なった展開となった。
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今後の研究の推進方策 |
カタユウレイボヤの実験については、当初の計画どおり、時系列データを取得することが出来たため、その解析を進めている。当初の予定と異なり、繰り返しや振動のパターンを観察していないため、empirical dynamic modelingではなく、whole genome co-expression network analysis (WGCNA)を用いて、共発現する遺伝子ごとのモジュールを作成し、発生緩衝が強いものと弱いものとで、モジュールの様態やネットワークの特性がどのように異なるかについて解析を進める。さらに、卵の母性mRNAのどのような特性によって、受精後の発生の発生緩衝度合いが予測できるかについて、解析を進める。
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