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ヒドラ属の生存戦略の差を生み出した種分化メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K06289
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分45020:進化生物学関連
研究機関岡山大学

研究代表者

濱田 麻友子  岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (40378584)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
キーワード共生 / ゲノム / 刺胞動物 / ヒドラ / 進化
研究開始時の研究の概要

刺胞動物ヒドラ属には、クロレラを細胞内に共生させ栄養面で相利共生の関係にあるグリーンヒドラと、非共生性で捕食によって栄養を獲得する比較的大型のブラウンヒドラが存在する。本研究では、このような種間での生存戦略の差を生み出すメカニズムと進化を明らかにすることを目指す。特に、ブラウンヒドラ系統でのみレトロトランスポゾンの大規模な挿入が起こっていることに注目し、その遺伝子発現調節メカニズムへの影響とエピジェネティクス制御から種分化の分子メカニズムを解明する。

研究実績の概要

本研究では近縁種間で異なる栄養獲得戦略を取るヒドラを用いて、種分化の分子メカニズムの解明を目指している。ヒドラ属には、細胞内共生クロレラと栄養面で相利共生の関係にあるグリーンヒドラと、非共生性で捕食によって栄養を獲得する比較的大型のブラウンヒドラが存在している。また、グリーンヒドラの共生クロレラは栄養面でヒドラから供給される栄養に完全に依存しており、ヒドラー共生クロレラの共進化が示唆される。さらに興味深いことに、グリーンヒドラとブラウンヒドラの分岐の直後にブラウンヒドラ系統ではレトロトランスポゾンの大規模な挿入によるゲノムサイズの増加が起こっており、このことがヒドラ属の生存戦略の違いを生み出した原因の一つになっているかもしれない。そこで本研究ではブラウンヒドラ進化におけるトランスポゾン等のゲノムサイズ増大への関与とグリーンヒドラ進化における共生クロレラの関与から、種分化の分子メカニズムを解明することを目的とする。
これまでに、グリーンヒドラHydra viridissimaとその共生藻Chlorella sp. A99両方のゲノム情報を用いて共生関係における相互作用に関係する遺伝子の特徴などを明らかにしてきた。また、ブラウンヒドラHydra vulgaris AEPのOxford Nanopore社のMiNIONを用いたロングリードシーケンスを行い、その結果を得ている。本年度はこれらの結果と既知の刺胞動物ゲノムとの比較により、ブラウンヒドラのゲノム進化に特徴的な性質を探索したところ、ブラウンヒドラにおける遺伝子とトランスポゾンの同時大規模重複がおこっている領域があることが明らかになった。さらに、グリーンヒドラから高分子ゲノムDNAを抽出し、現在ロングリードシーケンスを行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度得られたブラウンヒドラH. vulgaris AEPのロングリードシーケンスの結果を用い、トランスポゾンや遺伝子の重複を探索した。H. AEPのゲノムは、すでにゲノムが解読されているブラウンヒドラH. vulgaris 105と同様、1Gb以上の大型のゲノムで、LINEトランスポゾンのがゲノム内で大幅に増幅していた。さらに、いくつかの遺伝子ファミリーでは大規模な遺伝子重複が見られ、ゲノム上にタンデムに並んでいた。興味深いことに、これはトランスポゾンの増幅と同時発生しているようである。また、これら遺伝子群は神経や免疫に関連するものが多く含まれていた。以上の結果は、ブラウンヒドラにおけるゲノムサイズの増大は、トランスポゾンの増幅だけでなく、それに伴うゲノム領域の重複によるものであることが示唆される。さらにこのことによって、大規模な遺伝子重複が起こっている遺伝子ファミリーがあり、ブラウンヒドラの生態的特徴との関連が示唆される。これはブラウンヒドラで特異的に起こっており、グリーンヒドラではこのような遺伝子重複は見られなかった。
グリーンヒドラゲノム解析は前年度に完了させる予定であったが、充分量の高分子ゲノムDNAを得るための材料の準備や条件検討に時間がかかったため、「やや遅れている」とした。現在は充分量のDNAを得ることができたため、ロングリードシーケンスを進めている。

今後の研究の推進方策

今年度は、現在進めているグリーンヒドラのロングリードシーケンスの結果を、これまでに得られたブラウンヒドラゲノム解析の結果と比較し、遺伝子重複やトランスポゾンの増幅の観点からこれらのゲノム進化の特徴を明らかにする。
グリーンヒドラシーケンスデータが得られ次第、アセンブルと遺伝子モデルの構築を行う。遺伝子領域とリピート配列領域の分布やメチル化領域の特定を行い、近傍の影響を受けている可能性のある遺伝子を同定する。以上の結果をブラウンヒドラとグリーンヒドラで比較し、その違いを明らかにする。また、グリーンヒドラまたはブラウンヒドラにおいて重複やメチル化が見られる遺伝子についてはmRNA-seqやリアルタイムPCR, in situ hybridizationなどで発現パターンの解析を行い、両種に差があるかを確かめる。
グリーンヒドラの共生クロレラの遺伝子構成とトランスクリプトーム解析の結果は論文として今年度中の投稿と受理を目指す。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (10件)

すべて 2024 2023 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)

  • [国際共同研究] キール大学(ドイツ)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] 台湾・中央研究院(その他の国・地域)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [国際共同研究] キール大学(ドイツ)

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [国際共同研究] キール大学(ドイツ)

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Model systems for discovering evolutionary singularity of bilaterian physiological regulation: lessons from studies on simple/primitive flatworms2024

    • 著者名/発表者名
      Mori Shunsuke、Kobayashi Aoshi、Sakamoto Hirotaka、Hamada Mayuko、Sakamoto Tatsuya、Nakamura Ryo
    • 雑誌名

      Biophysics and Physicobiology

      巻: 21 号: Supplemental ページ: n/a

    • DOI

      10.2142/biophysico.bppb-v21.s012

    • ISSN
      2189-4779
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 光共生動物の普遍性と多様性:刺胞動物グリーンヒドラとサンゴの藻類共生システム2023

    • 著者名/発表者名
      濱田麻友子
    • 雑誌名

      月刊「細胞」

      巻: 55 ページ: 61-65

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] A Reference Genome from the Symbiotic Hydrozoan, Hydra viridissima2020

    • 著者名/発表者名
      Hamada Mayuko、Satoh Noriyuki、Khalturin Konstantin
    • 雑誌名

      G3 Genes|Genomes|Genetics

      巻: 10 号: 11 ページ: 3883-3895

    • DOI

      10.1534/g3.120.401411

    • NAID

      120006939590

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Diversified photosymbiotic systems in animals: Insights from the symbiosis of green hydra2023

    • 著者名/発表者名
      Mayuko Hamada
    • 学会等名
      EMBO COB Workshop "Trans-Scale Biology using exotic non-model organisms"
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ゲノムから探る動物と藻類の共生システム2023

    • 著者名/発表者名
      濱田麻友子
    • 学会等名
      第23回マリンバイオテクノロジー学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Genome analysis reveals interactions and evolution in Hydra-Chlorella symbiosis2021

    • 著者名/発表者名
      Mayuko Hamada
    • 学会等名
      The 4th Asian Congress of Protistology
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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