研究課題/領域番号 |
21K06295
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
植木 紀子 法政大学, 法学部, 教授 (80415116)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 多細胞化 / レイノルズ数 / ボルボックス目 / ボルボックス / 光反応 / 走光性 / 鞭毛 / 繊毛 / 大型化 / 環境応答 |
研究開始時の研究の概要 |
緑藻ボルボックスは数千細胞から成り、各細胞から生える鞭毛を一斉に打ちながら遊泳し、顕著な走光性を示す。走光性の方向転換は、細胞間の情報伝達ではなく、個々の細胞に予め備わっている性質が総合して実現する。個体に調和のとれた動きを生み出すこの自律分散システムは、単細胞性の祖先生物が少しずつ細胞数を増やし、進化する過程で完成したと考えられる。本研究では、鞭毛の光反応に着目してボルボックス目の種の光行動を比較・解析することで、多細胞化進化における光環境応答機構変遷の全体像の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
緑藻のボルボックス目には、単細胞生物から数千細胞から成る生物にいたるさまざまな細胞数の種が含まれる。いずれの種も、体細胞から2本ずつ生える鞭毛を動かすことで水中を遊泳する。光刺激を与えると、一時的にこの鞭毛運動が変化するが、面白いことにその変化の様式は種によって異なっている。これまでに、ボルボックス目の20以上の種についてその様式を高速度撮影によって観察・記録した。その結果、その変化様式は、(1)鞭毛波形の一時的な変換、(2)反応なし、(3)鞭毛の一時的な停止、(4)鞭毛の打つ方向の変化、の4パターンに分類できることがわかった。さらに、各種の個々の個体の直径と遊泳速度を同時計測し、その値から実際の粘性力と慣性力の比(レイノルズ数)を求めたところ、上記のパターンの違いはレイノルズ数の違いに関係することを示すことができた。 本年度は、ボルボックス目から最終的に選抜した全27系統について、上記データの不足部分を補完する実験を行った。これにより、ボルボックス目全体をカバーするデータとして記述することができた。また、上記(1)(2)(4)に分類される種では鞭毛軸糸レベルの解析が報告されているが(3)については報告がない。そこで、上記(3)の「鞭毛の一時的な停止」を示す種の代表種として、16細胞から成るパンドリナに着目した。鞭毛軸糸レベルの解析と比較を行うため、パンドリナの除膜細胞モデル作成のための条件検討を行った。さらに、パンドリナ鞭毛を単離・除膜してその運動を再活性化させる実験を確立するための条件検討を行った。また、パンドリナの個体レベルの光反応行動として、これまでに定量した走光性に加え、光驚動反応行動の定量を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ボルボックス目全体に渡る種について、光刺激を与えたときの鞭毛の反応パターンと、個体のサイズと遊泳速度から算出されるレイノルズ数を求めることにより、多細胞化進化に伴うレイノルズ数増加に応じた鞭毛反応パターンの推移があることが見出された。一方、鞭毛軸糸レベルの運動性評価(細胞モデルもしくは単離軸糸の運動再活性化)は、生物種によって最適な実験条件が異なり、それを確定するまでに多くの時間を要することがわかってきた。多種間での比較が難しいと思われるため、中間的な形態を持つパンドリナを代表種として扱うこととした。
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今後の研究の推進方策 |
16細胞からなる中間種パンドリナを用いた鞭毛軸糸レベルの運動性解析を行う。また、別のアプローチとして、鞭毛に異常があるクラミドモナス変異体の光に対する反応を観察することで、多細胞種が示す反応パターンの原型になるものがないかを調べる予定である。
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