研究課題/領域番号 |
21K06297
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
光永 貴之 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 上級研究員 (50569506)
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研究分担者 |
長坂 幸吉 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 研究領域長 (50355137)
村上 理都子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 植物防疫研究部門, 上級研究員 (10414947)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | アブラバチ / 性配分戦略 / アブラムシ / 意思決定要因 / 進化生態学 / 寄生蜂 / 性決定様式 / 寄主認識 |
研究開始時の研究の概要 |
寄生蜂の産卵戦略において、産卵時の寄主の状態と雌蜂が産み分ける子の性の関係については古くから進化生態学的な命題である。しかし、現在まで寄主の状態に適応的に反応していることは知られているが、"どうやって"寄主の状態を判断しているのか、という至近要因についてはほとんど解明されていない。そこで、アブラムシ類に広く寄生するナケルクロアブラバチが"寄主に産卵管を刺した時に感じる硬さ"によって寄主の最終的な資源量を予測するという仮説を検証する。寄主の体表の硬さを計測し、これと次世代性比の回帰モデルの説明力を評価する。また、寄主の種間比較や体表面の硬さを変える操作実験により回帰モデルの妥当性を検証する。
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研究実績の概要 |
1)テクスチャーアナライザー(島津製作所製、EZ-SX 1N)を用いて5種類のアブラムシ種(ワタアブラムシ、モモアカアブラムシ、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、トウモロコシアブラムシ、マメアブラムシ、以下アブラムシを省略)の齢期ごとの体表面の硬さ(前胸背板、mN)を測定した。その結果、最小で1.93mN(ワタ、1齢幼虫)、最大で11.13mN(マメ、成虫)の範囲であることが明らかになった。成虫時のアブラムシの大きさはワタ、マメ、トウモロコシ、モモアカ、ジャガイモヒゲナガの順で大きくなるのに対して、硬さではワタ、トウモロコシ、モモアカ、ジャガイモヒゲナガ、マメの順で硬いことが示された。 2) 実験室内でナケルクロアブラバチ雌成虫に5種のアブラムシ成虫を与えて寄生させ、次世代虫が羽化するまで観察を行い、ナケルクロアブラバチの次世代性比を測定した。寄生は実体顕微鏡で観察し、寄生されたアブラムシがマミーとなるまでの死亡率が極めて低いことを追跡することで、産卵時性比が次世代虫の羽化までほぼ維持されていることを確認した。得られた結果についてアブラムシの体サイズを説明変数とした場合と、体表面の硬さを用いた場合でそれぞれロジスティック回帰モデルを作成した。データと回帰モデルの適合性を比較するためにそれぞれのモデルの残渣逸脱度について検定した結果、体表面の硬さを用いた場合の方が有意に小さくなった。このことから、体表面の硬さを説明変数としたモデルの方が、よりデータに対する説明力が高いことが明らかになった。 3) 農薬散布用展着剤(主成分パラフィン)をアブラムシの各齢期幼虫に塗布して、その後の成長率や成虫までの死亡率を測定した。その結果、展着剤のアブラムシに及ぼす影響はほぼ無視できることが明らかになった。また、展着剤の塗布により塗布前に比べてアブラムシの体表面の硬さが増すことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電気料金の高騰が続き、当研究所では夏季の節電対策が実施され、ほとんどの恒温室等の実験設備を停止せざるを得なかった。加えて植物及び昆虫の飼育を担当する実験補助員を応募したものの雇用までに大きな時間のロスが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
ナケルクロアブラバチの次世代性比がアブラムシの体表面の硬さによるものであるという観察結果を検証するために、引き続きアブラムシ類に展着剤を塗布することで体表面の硬さを変化させ、その後ハチに寄生させた場合の次世代性比を測定する。得られたデータについてロジスティック回帰モデルを作成し、その説明力が保たれていることを検証する。なお、本年度研究の遅延の原因となった夏季の電力不足および人手不足は本年度も続くと予想されるため、実験を秋季に集中して行えるように準備する。
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