研究課題/領域番号 |
21K06301
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
徳岡 徹 静岡大学, 理学部, 准教授 (90303792)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ツツジ目 / 生殖器官 / 解剖学 / 形質進化 / ツバキ科 / 被子植物 / 珠皮 / キク類 / 比較解剖学 / 進化 / 形質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、被子植物の大部分を占めるキク類(asterids)において、2珠皮性胚珠から1珠皮性胚珠への進化がどのような過程で起こったのかを明らかにする。キク類のツツジ目を研究対象とし、特に観察例の少ない広義サクラソウ科、アカテツ科、ペンタフィラ科について珠皮の形質を詳細に観察する。これらの結果から、1珠皮性胚珠への進化が、キク類全体の共有派生形質なのか、キク類の中で複数回平行進化によって派生したのかを明らかにする。同時に、内外珠皮の発生を詳しく観察することで、2珠皮性胚珠が発生学的にどのように起源したのかを明らかにし、キク類全体の形態の進化を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、被子植物の大部分を占めるキク類(asterids)において、2珠皮性胚珠から1珠皮性胚珠への進化がどのような過程で起こったのかを明らかにする。キク類のツツジ目を研究対象とし、前年から引き続き、ツバキ科に関する生殖器官の解剖学的形質進化を明らかにした。 ツバキ科に関する生殖器官の解剖学的研究は、これまでチャノキ連とタイワンツバキ連にのみ研究例があるが、ツバキ科の最初に分岐するナツツバキ連に関しての研究例はなかった。そこで、ナツツバキ連ナツツバキ属3種(ナツツバキ、ヒメシャラ、ヒコサンヒメシャラ)について観察を行った結果、2珠皮性胚珠で薄層珠心を持つことや、外珠皮が表皮由来の組織から発生することでツバキ科の他の2連と共通していることがわかった。一方で、胚嚢形成様式がタデ型であることがタイワンツバキ連と異なっており、内外珠皮に維管束が通らないことで他の2連と異なっていることがわかった。これらの変異のある解剖学的形質のツバキ科内における進化について議論を行うことができた。また、これらの結果を論文として発表する準備を行っている。 また、ツツジ目のハイノキ科(ハイノキ、クロバイほか)、サクラソウ科(ノジトラノオ、ツマトリソウほか)、カキノキ科(リュウキュウマメガキほか)、ペンタフィラ科(モッコク、ヒサカキほか)について継続して材料の入手を行った。生殖器官の解剖学的形質を明らかにするためには花の蕾から成熟した果実までの各成長段階の材料が必要なため、直接生育地に赴き継続して採集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、キク類のツツジ目を研究対象とし、キク類において1珠皮性胚珠が2珠皮性胚珠からどのように進化してきたのかを明らかにすることを目的としている。今年度に研究対象としているツバキ科については、これまでタイワンツバキ連とチャノキ連についてはその解剖学的形質については報告されてきたが、ナツツバキ連については全く報告がなかった。ナツツバキ連についての解剖学的形質について新たに明らかにすることで、ツバキ科およびツツジ目における解剖学的形質の進化について明らかにすることができた。 ナツツバキ連では胚嚢形成様式は被子植物に一般的に見られるタデ型の胚嚢形成であった。これはチャノキ連と共通しているが、タイワンツバキ連がもつネギ型の胚嚢形成様式とは異なっていた。タイワンツバキ連のネギ型の様式はタイワンツバキ連の共有派生形質であり、タデ型から派生したものであることが判明した。また、タイワンツバキ連には外種皮に、チャノキ連には内種皮にそれぞれ維管束が通っているが、ナツツバキ連では2枚の種皮に維管束は存在しない。ツバキ科に近縁なハイノキ科やエゴノキ科には維管束が無いことから、外種皮と内種皮のそれぞれに維管束が通るという形質状態はタイワンツバキ連とチャノキ連のそれぞれの共有派生形質であることが判明した。ナツツバキ連はタイワンツバキ連とチャノキ連と同様に2珠皮性胚珠をもっており、多くのツツジ目植物の持つ1珠皮性胚珠とは異なっていた。今年度までのツバキ科についての研究結果からは、ツツジ目における珠皮の枚数についての進化を明らかにすることができなかった。しかし、今後のハイノキ科、サクラソウ科、カキノキ科などの研究結果によって明らかにされることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も昨年度までの研究を継続して行っていく。昨年度までに、継続的に研究材料収集を行ってきた。既にハイノキ科、サクラソウ科、カキノキ科についての花の蕾から成熟した果実までの各成長段階を採集してきており、これらの材料を利用して生殖器官の解剖学的形質を明らかにしていく。生殖器官の解剖学的形質については50あまりの形質について、それぞれを観察して明らかにするが、特に、珠皮の数とその発生学的な由来について観察を行う。これまでに研究を行ってきたツツジ目で2珠皮性胚珠をもつツバキ科、エゴノキ科では、珠皮は表皮由来の組織から発生していた。これは2珠皮性胚珠から1珠皮性胚珠への進化は内珠皮と外珠皮の境界がカラザから珠孔方向へ上昇する、いわゆるintegumentary shiftingによるものであることを示唆している。既に材料入手しているサクラソウ科やカキノキ科では本年までに研究を行ってきたツバキ科と同様に、2珠皮性胚珠が報告されいるが、この2科について珠皮の枚数の報告例を増やし、2珠皮性胚珠が科内で保存されているのか否かについて確認を行う。また、その珠皮の発生学的な由来についても確認を行い、2珠皮性胚珠から1珠皮性胚珠への進化がどのような機構によって起こったのかについて明らかにする。 生殖器官の解剖学的形質の観察には主にパラフィン切片を用いてきた。パラフィン切片では効率的に切片が作製できる利点があるが、その作製段階で高温のパラフィンに浸漬することや、4μm以下の厚さでは作製できない問題があった。そのため樹脂切片を作成する必要があるが、効率的に切片の作製ができないという欠点がある。今後は用いる樹脂の選択や切片作製方法の改良などで効率よく切片を作製する方法も改良していく。
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