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見過ごされてきた生活史形質:異翅亜目昆虫における卵塊・卵形状と親の保護の相関進化

研究課題

研究課題/領域番号 21K06335
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分45040:生態学および環境学関連
研究機関鳴門教育大学

研究代表者

工藤 慎一  鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (90284330)

研究分担者 吉澤 和徳  北海道大学, 農学研究院, 准教授 (10322843)
大庭 伸也  長崎大学, 教育学部, 准教授 (20638481)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワード親による子の保護 / 卵形 / 卵形状 / 生活史形質 / 系統種間比較
研究開始時の研究の概要

本研究は,生活史形質間に見いだされる進化的な相関パターンを説明する仮説を,異翅亜目昆虫を対象にした系統種間比較によって検証するものである。このグループは,多様な繁殖戦略(親の保護の有無,水生と陸生など)を持つ種を含む単系統群である。主要対象は,親の保護と卵塊や卵に関する形質である。特に卵の形状の適応進化は,近年になって急速に理解が進んでいるが,親の保護との関係はこれまで全く検討されたことがない。また,卵サイズの進化における議論で注目されてきた「水中産卵が親の保護と卵サイズに及ぼす効果」も検討する。大規模系統サンプリングと高精度の比較分析によって,信頼性の高い検証を目指している。

研究実績の概要

必要なデータが揃ったツノカメムシ科を用いて,アスペクト比に基づいた卵形の詳細な系統 種間比較分析を行った。その結果,昨年度までの解析で検出されていた「親による保護の進化に伴って卵のアスペクト比が高くなる」傾向に加えて,卵アスペクト比に対する「卵サイズ」と「親による保護」の交互作用が存在することが明らかになった。保護の有無にかかわらず卵サイズが増加するほど卵のアスペクト比は低くなるが,保護を行う種ではその傾向が強く,特に卵サイズが大きな種では保護を行わない種と同程度にまでアスペクト比は低下することが判明した。この交互作用を説明する仮説はふたつある。ひとつは「卵殻物質の制約」という一般的な仮説である(Church et al. 2019)。つまり,卵殻物質の制約によって体積・面積比を最小にする形,つまり球形に近づくという仮説。もうひとつは,「ツノカメムシ科に見られる卵資源投資量の負のアロメトリー」に基づく仮説である。ツノカメムシの大型種では,卵サイズは増すものの相対的に卵塊体積は低下し卵塊エリアも小さくなる。メスの体サイズに比べて卵塊エリアが小さくなることで卵の捕食リスクが低下し,卵のアスペクト比を増加させる選択が弱くなる可能性がある。これら新たな仮説の検討は,分析対象とする分類群を拡張する来年度の課題である。
さらに,卵形の種間変異を調査する過程で種内変異に関する新たな発見があった。メス親が体で卵塊を覆う姿勢で防衛する場合,卵塊周辺部に対する捕食リスクが高まるため,卵塊周辺部の卵が小型化している(Kudo 2001)。今年度エサキモンキツノカメムシで得られた結果は,この捕食リスクのクラッチ内変異が卵形変異にも影響することを強く示唆している。「クラッチ内の適応的卵形変異」は過去に研究例が存在しない新規テーマであり,来年度も継続して検討したい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ツノカメムシ科やキンカメムシ科の卵サンプルは予定通り収集が進み,卵形状の解析もアスペクト比に基づくものに関しては一定の結果が得られている。しかし,楕円フーリエ解析など卵形状の定量的解析には画像データが未だ不十分である。さらに,DNAサンプルの収集も十分ではなく,他の分類群と統合した系統推定を行う段階には至っていない。ツチカメムシ科やタイコウチ上科等の水生分類群では,昨年同様,DNAサンプルと卵サンプル共に収集が進まなかった。その結果,当初の予定よりも研究課題の進捗状況はやや遅れていると判断された。

今後の研究の推進方策

種毎の卵形のデータが不十分であるツチカメムシ科およびタイコウチ上科を中心に水生分類群を含めた幅広いサンプリングを行い,形質解析に必要な画像データを蓄積する必要がある。さらに,すべての分類群を統合した系統推定を行うため,各種のDNAサンプルを収集する必要がある。最近企画され進行中の「insectphylo.org」プロジェクト(Chesters et al. 2023)は,本研究が必要とする大規模系統の土台を提供するものと期待している。この系統をベースにした種間比較を行うことによって,親による子の保護と卵形の進化的相関の検出並びに両者の進化推移を明らかにし,相関進化仮説を包括的に検討する予定である。また,「クラッチ内卵形変異」という新たな研究テーマに関しても,十分なサンプルが期待できるツノカメムシ科の一部の種を用いて検討を進めていきたい。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Protective function of maternal care against egg predators in the shield bug Sastragala esakii (Hemiptera: Acanthosomatidae)2023

    • 著者名/発表者名
      Nishimura, K., S. Kudo & T. Hosokawa
    • 雑誌名

      Entomological Science

      巻: 26 号: 3

    • DOI

      10.1111/ens.12555

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Variation in life history traits among Acanthosoma and Sastragala species (Hemiptera: Acanthosomatidae)2023

    • 著者名/発表者名
      Kudo, S.
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Entomology (New Series)

      巻: 26 ページ: 115-119

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] ヒメツノカメムシにおける寄主植物間の繁殖形質変異2023

    • 著者名/発表者名
      正本大岳・工藤慎一
    • 学会等名
      昆虫学会第83回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] エサキモンキツノカメムシにおける卵塊内の位置に応じた卵形の可塑的変異2023

    • 著者名/発表者名
      正本大岳・立田晴記・工藤慎一
    • 学会等名
      日本動物行動学会第42回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] ツノカメムシ亜科における卵塗布物質の探索.2023

    • 著者名/発表者名
      渡辺穣・工藤慎一・吉澤和徳
    • 学会等名
      令和4年度北海道応用動物・昆虫研究発表会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ツノカメムシ科の卵形状:メス親による防衛行動と卵形状の進化的相関.2022

    • 著者名/発表者名
      工藤慎一・原野智広・沓掛展之・吉澤和徳
    • 学会等名
      日本昆虫学会第82回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] キンカメムシ科の卵形変異.2022

    • 著者名/発表者名
      正本大岳・工藤慎一
    • 学会等名
      日本昆虫学会第82回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] カメムシ類における親の卵塊防衛行動は細長い卵の進化を促したか?2022

    • 著者名/発表者名
      正本大岳・工藤慎一
    • 学会等名
      日本動物行動学会第41回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ツノカメムシ類のメス親の防衛行動は卵の変形を促すのか?2021

    • 著者名/発表者名
      工藤慎一・原野智広・沓掛展之・吉澤和徳
    • 学会等名
      日本動物行動学会第40回大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] タガメ(カメムシ目;コオイムシ科)の産卵場所選択2021

    • 著者名/発表者名
      大庭伸也・渡辺黎也
    • 学会等名
      日本昆虫学会第81回大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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