| 研究課題/領域番号 |
21K06353
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| 研究種目 |
基盤研究(C)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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| 研究機関 | 神奈川大学 (2022-2024) 明治学院大学 (2021) |
研究代表者 |
安部 淳 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (70570076)
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| 研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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| キーワード | 性比調節 / 寄生バチ / Melittobia / 分散 / 協力行動 / 社会行動 / 性比 / 協力 / 血縁選択 / 弱い分散 / 包括的適応度 |
| 研究開始時の研究の概要 |
弱い分散が協力の進化に与える影響を、寄生バチMelittobiaの性比調節を対象に明らかにする。具体的には、(1)分散経験による条件依存的調節がどのようにもたらされ、その結果、立場の異なる個体間にどのような行動の調節を引き起こすのか、また、(2)分散性が弱い集団ほど協力行動を示す傾向があるのかについて実証的な証拠を提出して検証する。さらに、(3)これらから得られた実証的な知見を踏まえて数理モデルを構築し、現実の生物に即した新しい進化理論を発展させる。
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| 研究実績の概要 |
寄生バチMelittobiaの性比が、分散の効果を組み込んだ数理モデルの予測よりも雌に偏る要因のひとつとして、雌が資源である寄主を探索もしくは利用する際に、協力的に効率良く利用している可能性を検討した。性比の理論では、局所的資源増進(local resource enhancement)と呼ばれる効果である。 一般的に生物が資源を利用する際、他個体との競争を避けるため、他個体が利用している資源を避ける傾向がある。寄生バチでも、他個体が産卵している寄主を避けるのが一般的であるが、我々の野外データによると、Melittobia australicaの雌はむしろ同じ寄主に集中して産卵する傾向が確認された。 室内実験で、M. australicaの雌が既に寄生されている寄主と寄生されていない寄主のどちらを好むのか、選択実験を行ったところ、どちらかの寄主を有意に好む傾向は確認されなかった。しかし、既に寄生されている寄主に産卵した雌は、寄生されていない寄主に産卵した雌より、有意に多くの子を残していた。 別の実験で、ひとつの寄主に対し寄生する雌の数を1, 4, 8頭と変化させ、そこから羽化した子の数を測定した。その結果、越冬中の活動的でない寄主では、雌親数の増加とともに、雌親当りの羽化した子の数は減少したが、越冬前の活発な寄主では、雌親数が増えても雌親当りの子の数は減少しなかった。 寄生バチは、産卵前に寄主に麻酔を打つが、Melittobiaが活発な寄主に寄生する場合は、複数雌で寄生すると効率良く寄生を利用できると考えられる。この効果が他個体との資源をめぐる競争の効果を相殺、もしくは上回る場合があると考えられる。このような協力的な寄主利用の効果が、Melittobiaの性比をより雌に傾けている可能性が示唆された。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
3: やや遅れている
理由
Abe et al. (2021)では、野外環境において、Melittobiaの雌が分散せずに血縁の雌と産卵する場合は、常に雌に偏った性比で産み、分散して非血縁の雌と産卵する場合は、雄率を上げて産むことを明らかにした。本研究課題のひとつの目的は、室内実験により雌の分散に関わると考えられる要因を操作することにより、雌が分散経験によってどのような調節を行っているのか、具体的な機構を明らかにすることであった。 しかし、これまでのところ、室内環境では野外で分散を経験した雌のように、雄率を上げて産ませることを再現できていないのが現状である。実験室内で比較的長距離を移動した雌、寄主の巣からの分布の有無を想定して光条件を調節した雌、分散にともなうと考えられる他個体との接触頻度を調節した雌等を検討したが、性比の調節を再現できていない。しかし、実験室内で系統を維持するために飼育しているだけであっても、極稀に雄率が上がることがあるので、実験室で性比の調節を再現できる可能性はあると見込んでおり、今後も継続して検討していきたい。
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| 今後の研究の推進方策 |
「現在までの進捗状況」で書いたように、分散経験による性比調節の具体的な調節機構について検討する。 もうひとつの項目として、室内環境での性比が母親数の増加とともに増加せず、常に雌に偏ったまま一定である理由について検討する。理論モデルによると、分散せずに血縁者と産卵する雌は、分散した雌よりは雌に偏った性比で産むものの、母親数の増加に応じて雄率も上げるべきであると予測される。この隔たりの説明として、母親間で子の数に偏りが存在するため、理論で予測されるよりも母親数の効果が薄められている可能性が考えられる。 今後は、野外で採集されたサンプルをマイクロサテライト遺伝マーカーを用いて解析することにより、母親間の子の偏りの程度を明らかにする。理論面においても、共同研究者と共に、母親間で子の数に偏りがある場合の性比調節について、Abe et al. (2021)における分散の効果を組み込んだモデルを拡張させることを検討している。
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