研究課題/領域番号 |
21K06354
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
饗庭 正寛 総合地球環境学研究所, 研究部, 特任助教 (80751990)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 生物多様性 / 機能形質 / 機械学習 / 機能的多様性 / 植物群集 |
研究開始時の研究の概要 |
植物の機能形質間の関係は、植物の機能・生活史の多様性の基盤であり、その解明は様々な環境問題とも深く関わる重要な課題である。しかし、形質間の関係が線形な相関関係に限定されると考える合理的な理由はないにもかかわらず、形質間の交互作用や非線形な関係を検証した例はほとんどない。本研究では世界最大の植物形質データベース TRYのデータを、機械学習法を用いて解析することで、これまでほとんど解析されてこなかった、植物の機能形質間関係における交互作用や非線形性の重要性を網羅的・定量的に検証する。
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研究実績の概要 |
前年度に特定した重要な形質間関係のPartial dependence plotによる可視化を行った。その結果、形質間関係にはしばしば非線形の関係が見られることが示された。例えば草丈/樹高が1m以上の種においては草丈/樹高と種子重量の間に正の相関が見られたが草丈/樹高1m未満の種においてはそのような傾向は見られなかった。またFriedman’s Hの算出により2つの形質間関係に対する他の形質の影響を検証した。その結果、今回対象とした形質間関係においては最大で形質間関係で説明されるばらつきの30%程度が他の形質の値に依存したものであることが示された。例えば、葉の重量あたりリン含量と葉の重量あたり炭素含量の関係は葉の重量あたり窒素含量に依存して異なっていた。次に形質予測モデルに系統情報を追加した。系統情報のみを説明変数とするモデルと系統情報と形質の両方を用いたモデルを比較すると両方を用いたモデルの予測性能が大幅に高く、近縁種間においても形質間関係が重要であることが示された。また形質のみを説明変数とするモデルと系統情報と形質の両方を用いたモデルを比較すると両方を用いたモデルの予測性能がやや高くなっており今回のモデルに含まれずかつ系統的に保存された形質の重要性もしくは系統と形質の交互作用の存在が示唆された。Friedman’s Hの算出により2つの形質間関係に対する系統の影響を検証すると一部の形質間関係ではばらつきの20%程度が系統に依存していた。例えば、草丈/樹高と葉のサイズの正の相関は裸子植物では見られなかった。これらの発見は、これまで単相関関係ばかりが注目されてきた形質間関係研究に大きなインパクトを与えるのみならず人為撹乱が形質間関係を介して生態系機能に与える影響の予測性向上や機能的多様性評価における形質選択のガイドラインの提示など、応用研究においても幅広い活用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度やり残したPartial dependence plotやFriedman’s Hの解析を行い、交互作用の重要性の定性的・定量的評価を完了することができた。さらに系統情報を盛り込んだ解析を行い、予測能力に対する系統の重要性の評価や形質間関係に対する系統の影響の評価に取り組み上述のように重要な成果を得ることができたため概ね予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
概ね予定通りに進んでおり、2023年度には形質間関係の次元数の解析を予定している。またこれまでの成果を洗練させ論文の執筆に取り組む。現在のところ、当初計画の大きな変更を必要とするような障害は生じていない。
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