研究課題/領域番号 |
21K06366
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分45060:応用人類学関連
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
嶋田 誠 藤田医科大学, 医科学研究センター, 講師 (00528044)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ポリグルタミン病 / 人類進化 / hapSTR / Long-read sequence / Long PCR / 反復多型 / HiFi read / ポリグルタミン / ハプロタイプ / STR / 遺伝子頻度 / long-read sequencing / チンパンジー / 多様性 / HapSTR / 地理的分布 / 現代人類地域集団 |
研究開始時の研究の概要 |
人類では他の類人猿との分岐後、9つのグルタミン反復座位で反復数多型に多様性が増大し、その結果疾患リスクのある長いalleleを含むようになったと考えられる。グルタミン反復に反復数の多型がある場合は、脳・神経系の遺伝子に含まれていることが多いことから、本研究ではグルタミン反復多様性が集団内の個性多様化に寄与することで、大規模かつ高度な分業体制が人類で発達したと考えている。 本研究はグルタミン反復多型が、世界の諸集団にいかに分布しているのか、世界の23人類集団およびチンパンジーの約400個体にて、遺伝子型判定を行い、多様化を促した進化イベントと、リスクがありながらも多型が維持されている機構を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、グルタミン分子が連続して連なっているポリグルタミン(polyQ)構造を有するタンパク質9種類が神経変性疾患(トリプレット・リピート病、ポリグルタミン病、polyQ病)の原因になっていると同時に、polyQ反復数の多型が脳神経系の発達過程における個体差を生み出す源になっていると考えられることに焦点をあて、疾患リスクと集団存続における利益との間の関係を説明する仮説を報告者自らが構築し、その仮説の可能性を生物進化の観点から探ることを目的としたものである。 2023年度は、polyQが細胞内でタンパク質や核酸と結合する性質を持つ点に着目し、polyQ配列をもつタンパク質と、polyQに結合するタンパク質、それぞれのタンパク質間相互作用における情報を取りまとめた。特に、polyQ配列をもつハンチンチン・タンパク質(HTT)、およびスプライシング調節機能をもつPolyQ結合タンパク質PQBP1において、別々の反応経路によって、polyQ長の変異が神経突起長の変異を生み出す可能性を示し、論文として発表した。 また、polyQ反復数多型のみならず、その近傍領域中の一塩基多型(SNPs)を一連のhapSTR型として区別することで、従来進化速度が速すぎるために進化学的解析が適用できなかった反復数多型にかかる選択圧を算出することで、polyQ病のリスク・アリルが集団中に維持され続ける謎に迫ろうとしている。2023年度は工程を決定することを目的として、少数個体試料にて4つのhapSTR座位においてHiFi long read sequenceを実施した。 さらに、polyQ病れぞれにおいて、地域集団の発症率の違いが遺伝的背景によるものなのか、集計の違いによるものなのか、はっきりさせるため、脊髄小脳変性症1型SCA1の責任配列、ATXN1遺伝子中のCAG反復長のフラグメント解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロジェクト開始直後、サンプル収集や研究補助員募集の段階から、コロナ禍の影響で出ばなを挫かれたことによる遅れが残っていると感じていた。さらに、Long PCRの条件を試行錯誤の末決定した後、HiFi read sequenceを実施するにあたり、long PCR用プライマー配列の端に目印をつけるためのアダプタ配列を組み込み、さらに安定化のための修飾を施したプライマーを用いたlong PCRを実施したところ、通常のプライマーを用いた、これまでのPCRとは最適条件が異なることがあきらかになり、その対応に再度条件検討を行うことになった。その段階で、様々な予定と重なり、遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
本科研費事業により、少なくとも2つの座位ではHiFi read sequnceが10 kbの規模において、実施できることが明らかになった。 今回用いたlong-read amplicon-seqは新技術ゆえに、整理しておくべき、興味深く重要な課題を含んでおり、明確に整理することが望まれる。 例えば、長い領域をPCRした際には、PCRの様々な影響、例えば、十字構造形成部位でのtemplate-switchingによるキメラ増幅、部分伸長DNA断片の別鎖アニーリングによるPCR-mediated recombinationなどが、一般のPCRにおける塩基置換に加えて、観測されうる。今後、これらの頻度を定量的に報告したい。また、研究を進める中で明らかになってきた技術的制限の中(たとえば、同祖配列推定における組み換えの影響をはじめ、現在実施可能な調査座位数)において、集団ゲノム学的手法・理論を適用した仮説の検証可能性を検討する。 また、Fragment解析のほうは、これまで実施してきた実績から、比較的容易に座位数を増やすことが可能と見込まれる。そのため、先行研究で地域集団ごとの発症をめぐる疫学データに統一感の欠けるpolyQ病の責任座位を中心に優先順位を定めて実施したい。
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