研究課題/領域番号 |
21K06371
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
一條 裕之 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (40272190)
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研究分担者 |
中村 友也 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (70733343)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 外側手綱核 / Parvalbumin / 神経細胞 / 成熟 / 幼少期 / ストレス / 臨界期 / 幼少期ストレス / 不安 / うつ / パルブアルブミン陽性神経細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
LHbにおけるPV陽性神経細胞の機能を明らかにする為に(1)ジフテリア毒素受容体を利用した標的細胞ノックアウトによるPV陽性神経細胞除去と,光遺伝学的な可逆的操作によって,PV陽性神経細胞の活動性を減弱させ,モノアミン系のストレス反応性と個体の不安・うつ行動の発現に及ぼす効果を検討する.(2)幼少期のストレス負荷による不安・うつ様行動を発症した成体において,残存するPV陽性神経細胞を光遺伝学的に強制的に活動させ,不安・うつ行動のレスキュー効果を検討する.
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研究実績の概要 |
幼少期ストレスを繰り返して与えたマウスでは,成長後の外側手綱核(LHb)においてParvalbumin(PV)protein陽性神経細胞が少なく,ストレス刺激に対する反応性が高く,個体が不安・うつ様行動を呈する. 経験に依存したPV-protein陽性神経細胞数減少の機構を検討するために,PVプロモーターの活性に依存してEGFPを発現するPV-EGFPマウスの成体において,mRNA in-situ hybridization chain reaction (in-situ HCR) と免疫染色を行い, PV-mRNA, PV-protein, PV-EGFP の陽性細胞数と割合を比較した. LHbのPV-EGFP陽性細胞において、9.14±4.69%がPV-protein陽性であった.帯状皮質で26.98±17.19%,海馬で17.21±5.67%,扁桃体で10.94±2.52%であった.PV-protein陽性細胞の割合は脳部位間で有意に異なっていた.LHbのPV-protein陽性細胞の65.69±1.80%がPV-mRNA陽性であった.帯状皮質で31.72±3.44%,海馬で73.89±2.89%,扁桃体で20.52±2.50%で,部位に依存してPV-protein陽性細胞がmRNAを有する割合は有意に異なり,LHbのPV-protein陽性細胞は,有意に高い割合でPV-mRNAを有した. 結果は,神経細胞におけるPVの発現はダイナミックであり,PV-mRNAの転写,PV-proteinの翻訳,PV-proteinの維持が部位によって異なることを示した.LHbにおいて、PV-EGFP陽性細胞中のPV-protein陽性細胞率が低いことと、PV-protein陽性細胞中のPV-mRNA陽性細胞率が高いことは、LHbのPV発現が特にダイナミックであることを示唆する。LHbにおける幼少期ストレスに依存したPV-protein陽性細胞の減少は,PV-protein翻訳の減少または分解の増大に起因すると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PV-EGFP陽性細胞は,少なくとも1回のPV-cre発現によりEGFPが定常的に発現する細胞であり,その発現はPV-proteinそのものの発現と大きく異なり、決して同等ではない.先行研究を参考にして当初に計画していた方法;PV-creマウスにジフテリアトキシン受容体または光受容体を挿入して神経細胞を操作するという方法,はPV-proteinを有さない細胞を操作してしまうため,PV-protein陽性細胞の機能を検討する上で適切ではないことが判明した.PV-EGFP,PV-proteinとPV-mRNAの陽性細胞の比較によって,PV-creマウスを利用した先行研究の弱点と限界を示した.さらに、幼少期ストレスがPV-protein翻訳または分解に影響することを示唆した.
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今後の研究の推進方策 |
① 成熟に依存したPVの発現制御を知るために,幼若期のPV-EGFPマウスにおいて,PV-EGFP陽性細胞の出現時期,成熟段階依存的なPV-mRNA陽性細胞数とPV-protein陽性細胞数を計測し、PVプロモーターの活性化開始時期,PV-mRNA転写とPV-protein発現の様式の時間的変遷を記載する.これまでの研究で,生後10-20日がストレスによって外側手綱核のPV-protein陽性神経細胞数が変更されることがわかっているので、生後10, 16, 20, 35と60日のPV-EGFPマウスを利用し,PV陽性細胞の成熟過程を詳細に記載する.
② 成体PV-CreマウスのLHbに,Creに依存してEGFPを発現するウイルスを投与し,PV-EGFPとPV-proteinの双方が陽性の細胞(ダブルポジティブ)を確認する.この確認の後に,PV-CreマウスのLHbにCreに依存してジフテリア毒素あるいは,光遺伝学的受容体を発現するウイルスを投与し,PV-protein陽性神経細胞を操作して,機能を検討する. PV-EGFP陽性でPV-protein陰性となる細胞が存在する場合は,PV-protein陽性神経細胞の操作が困難であるので,機能操作実験を中止する.代替に幼少期ストレスがPV-EGFP,PV-protein,Pv-mRNAの陽性細胞率に及ぼす影響を検討し,LHbの成熟とPV発現のダイナミクスの研究としてまとめる.
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